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pinopipi
2026-04-02 08:09:53
11919文字
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ハッピー・ハッピー・ホワイトデー
大遅刻ホワイトデー2026/ヌヴィフリ/バレンタインの話の続き/本気を出した水龍が全力でフ様を囲い込む話
1
2
3
4
「
……………………
は?」
思わず呆けた声が出た。自宅の賃貸契約の解除ーーーつまり、今のフリーナには帰る家がない、ということ。
…
そういえば先程、"外国に行こうと思った"と言っていたな
……
。まさか、既に出国の準備まで済ませていたとは
……
。彼女の行動力に唖然としながらも、置き去りにされたままのトランクケースとホワイトデーの贈り物を抱え、私も扉の前へと移動した。
「
…
残念ながら、賃貸契約を即日行なうことは不可能だ。法律上、解約後に再度同じ物件を契約する場合であっても、必要書類をまた一から揃え、審査を受ける必要がある。書類の発行は最短でも2〜3日、そして、審査期間も含めると、入居可能となるまで10日程は掛かることが予測される。」
「ううっ
…
そうだよね
……
」
フリーナは分かりやすく肩を落とした。それはもう、可哀想な程に。
「
…
ゆえに提案なのだが、新たな住居が決まるまでの間、かつて君が使用していた部屋ーーー最上階のスイートルームに滞在しては如何だろうか。現在も家具等はそのまま残してある。無論、清掃も行き届いている。立地的にも君の仕事場からそう遠くないため、仮住まいとしては好条件だろう。職員への説明は後ほど私の方で行なうので安心して欲しい。さぁ、フリーナ殿、手を。」
スイートルームへと移動すべく、エスコートの所作で手を差し出す。
しかし、彼女は抵抗の意を示した。
「だっ、だめだよ
…
!あの部屋は民の血税で管理されているだろう!?一般人の僕なんかが使わせて貰うことはできないよ
…
!」
首を横に振り、頑なに拒否をするフリーナ。
…
確かにその言い分は理解できる。だが正確には、現在の彼女はただの一般人ではなく、"準公人"として国の保護下にある。それに退位から数年経った現在でも彼女は多くの民から変わらず神の様に畏敬を集め愛されているのだから、あの部屋を一時的に使用するくらい何ら問題は無いと判断したのだが
………
この様子だと、どう説得しようと容易には頷いてくれないだろう。ならば私が無理に勧めることは出来ない。
では、フリーナをどこに住まわせるべきか。安全面だけは譲れない。大切な恋人に何かあっては困る。ゆえにセキュリティが高く、私がすぐに駆け付けることの出来る場所が良い。ーーーともなれば、答えはひとつしかない。
「ふむ
………
では、私の部屋に来なさい。管理費用は私個人の月々の給金から天引きしたモラで賄っているため、君が気にする税関連の問題は無い。必要最低限の家具しか置いていないため君の部屋と比較すると快適さは劣るだろうが、普通に生活をする分には困らないだろう。もし不満があれば家具を新調したり、君好みのレイアウトに変えて貰っても構わない。私は特に拘りが無いので、自由に過ごすと良い。」
「へ
………
?」
フリーナは目を丸くして動きを止めた。私の提案が予想外だったのか、彼女は完全に思考が停止している様子だった。何度か名を呼んでみたが全く応答がない。
…
大丈夫だろうか。
だが、今はかえって都合が良い。彼女に再び拒まれてしまう前に、私は彼女の手を引き執務室を後にし、リフトへと乗り込む。そしてあっという間に自室前まで辿り着くと、さも当然のように彼女を招き入れた。
ひとまず適当な場所へ荷物を置いた後、窓際に設置してある2人掛けのソファーへ彼女を座らせる。紅茶を淹れティーカップを差し出すと、彼女は律儀に「ありがとう」と礼を述べてから紅茶に口を付けた。
「ーーーーって!僕はまだ君の部屋で世話になることを決めたわけじゃないからな!?」
刹那、フリーナは我に返り、大きく声を上げた。彼女にしては遅過ぎる突っ込みである。
「そう慌てるな。私達は恋人同士なのだ。いずれは生活を共にするのだから、多少その時期が早まったところで何ら問題はないだろう。」
「なっ
…
!?」
フリーナは口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになり、慌てて飲み込んだが盛大に咽せた。私はカップから溢れそうになっている紅茶を彼女の手から回収してテーブルへと置き、咽せ込む彼女の背中を優しく摩る。そうしてようやく呼吸を落ち着かせた彼女は、恐る恐るといった様子で此方へと視線を寄越した。
「ちょ、ちょっと待って
…
?僕
…
今すごく混乱してる。いずれ生活を共にする、って
…
?」
「?先程君は、"これからずっと一緒にいて欲しい"と私に願ってくれただろう?無論、私も君と同じ気持ちであり、それは婚姻を見据えた言葉であると解釈していたのだが
………
違ったのか?」
そう問いかけると、フリーナの目は大きく見開かれ、顔が真っ赤に染まっていった。
「こっ
……
こん、いん、って
………
え、結婚!?ぼっ
…
僕たちがかいっ?!」
「そうだ。
…
まさか、私は浮かれるあまり思考を飛躍させ過ぎていたのだろうか?もし齟齬があるのなら教えて欲しい。君は私とどうなりたいと考えている?」
「ぇえっ
…
そっ
…
それは
…………
僕ももし結婚するなら絶対にキミとがいいな、って思っているけれども
………
」
ああ、良かった。フリーナも私との未来を望んでくれている。己の解釈が間違っていなかったことに安堵した。
「ありがとう、フリーナ。私も君以外を伴侶に迎えるつもりは無い。
…
では、暫く私の部屋に滞在するということで良いな?」
「う、うん
………
って、え?!今っ
…
僕の名前っ
……
!」
フリーナは驚きの声を上げた。そこで私は、ついうっかり彼女の許可なく呼び捨てをしてしまったことに気付いた。いけない
…
気が緩み過ぎているようだ。
「すまない。敬称を付けずに名を呼ぶのは不快だっただろうか。」
本人の前で名を呼び捨てにしたのは初めてだ。晴れて恋人になれたのだから、2人きりの時くらい許されるのではと思ったが
…
違ったのだろうか。
「そ、そんなことはないよっ
…
!ただ、慣れないというか
……
その。照れる、よ
………
」
フリーナは両手で自らの顔を覆い隠す。細い指の隙間から潤んだ色違いの青が覗き、私は思わず喉を鳴らした。
彼女の手首を掴み、出来るだけ優しく顔を隠す手を退けさせる。それから彼女の耳元へそっと唇を寄せた。
「
…
フリーナ、」
「ひゃっ
…
!ちょ、ヌヴィっ
…
?」
「フリーナ」
「待ってっ
…
耳元で喋らないでっ
…
!」
名を呼びながら軽く耳へ口付けると、フリーナは顔も耳も真っ赤にして身を捩らせた。少しでも距離を取ろうと必死に私の身体を押し返そうとしているが、全く力が入っていない。
「ふっ
…
可愛い。」
「かっ
…
かわっ
…
!?」
「ああ、君は可愛いな。愛している、フリーナ。今すぐ婚姻届を出して君を伴侶に迎えたい。」
「〜〜〜〜〜っばか!浮かれ過ぎだよっ
…
!まだ恋人になったばかりなんだから、
…
せめて季節を一周するまでは待って欲しい
…
!」
「承知した。では、1年後に入籍しよう。」
「さ、最短じゃないか!?えっと
…
えぇっと
…
この国の国家元首、最高審判官の伴侶はやっぱりもっとよく考えてから決めた方が良いんじゃないかい
…
?!相手の身分とか、
…
じ、寿命とか色々さぁ
……
」
フリーナは自身なさげに目を伏せ、俯いた。
先程、結婚するなら私とが良いと言っていたというのに、一体どういうことだろうか。
思わず眉を顰める。
ーーーーどうやら"私の気持ち"をまだご理解いただけていないらしい。ならば、分かるまで説明するしかない。彼女が懸念しているのは、身分ーーーつまり政治的なしがらみや世論、そして寿命差のことか。
フリーナ、ともう一度彼女の名を呼ぶ。その声は先程とは異なり、甘さなど一滴もなく。"顔を上げろ"と命ずるかのような強い語気で。突然自室が法廷のような空気に変わる。フリーナはそれに驚いたのか、反射的に顔を上げ、色違いの青を揺らした。
「最高審判官の伴侶に相応しいのは、元水神である君しかいない。考えるまでもないだろう。国家元首だからといって、相手の身分も高ければ良いというものではない。そもそも、貴族など派閥に属する者は公正公平を重んずる私の立場的に対象外であり、どれかひとつの家門との結び付きを強固にすべきではない。一方で君は爵位を持たずどの派閥にも属していないため、伴侶として相応しい。ああ
…
強いて言うならば、過去の君は水神派の筆頭であったな。だが、私は水神に招待され、水神より最高審判官の身分を与えられた。そんな私が元水神である君への愛を公言しても何も不自然な点は無いだろう。それに私達が隣に並び立つことは民にとって日常の光景であり、むしろ世間的に私達はパートナーという印象を強く持たれている。私達が既に恋仲なのでは?と思っている民も多く存在するのだ。ゆえに堂々としていれば全く問題無い。寿命に関しては今後君とよく話し合う必要があるが、古龍の大権でどうとでもなるので心配は無用だ。そもそも私は君以外を伴侶に迎えるつもりは無いので、もし異を唱える者が現れた場合は私自ら説明し、全て説き伏せてみせよう。」
「ワ、ワァ
………
」
「正論というか、パワープレイすぎる
…
キミってたまにそういうとこあるよね」ーーーーフリーナはそう呟いた後、真っ赤な顔を隠すように私の胸元へ顔を埋め、そして何も言わなくなった。
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