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保科
2026-03-17 17:59:54
7275文字
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超かぐや姫!
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忠犬オタ公、会議の音頭を取る
10年後のライブに向けての会議の話 オタ公がヤチヨのお友達だったら?の巻 うわ!捏造しかない!
2ページ目を追加しました ヤチヨのお友達してるオタ公の幻覚
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忠犬オタ公、その日運命に出会う
忠犬オタ公を名乗るライバー何某には、ライバー生としての転機が2つある。
一つは誰もが同じ、生まれた日
――
デビューをした日。友人のゲームに実況をつけて遊んでいた所、それを勝手にツクヨミ内の動画共有サイトにあげられて、あれよあれよという間にひとかどの配信者になった。才能の有無でいえばきっと素人に毛が生えた程度でも、『あった』方で。企業に所属していない自分を同じように個人で活動してる面々が重宝してくれて、小規模なコラボに呼ばれたり、はたまたレースゲームの実況をさせてもらったりして、そのチャンスをものにすることで、ちょっとずつ知名度が上がっていた。
そして、もう一つの転機。
そうして、少しずつ名が知れ始めた頃合いで、
『
――
やっほ〜☆貴女が忠犬オタ公さん
……
かな?』
「うぇ」
人気のないカフェでイミテーションのパフェを齧る私の目の前に、この世界の女神が舞い降りた時だろう。
ツクヨミの管理人、AIトップライバーの肩書を持つ少女は。呆けたままスプーンを取り落とす私を見て、楽しそうに口元を袖で覆った。
『すみませーん!ヤッチョの分もお願いします!おんなじの!』
「え、あ、え
……
え!?」
あれよあれよとテーブルの向かいに座られ、あれよあれよという間にNPCの店員に注文を通された。そもそもこれだけの至近距離で彼女を見るのも初めてだ。
まるで普段の配信と変わらない天真爛漫さに圧倒される私を見ながら、ヤチヨはいやあ探したよ〜、と、まるで気にした素振りもなく頬杖をつく。
『ツクヨミの位置情報精度って案外まだ外周は鈍いんだよねえ。近辺のお店総当たり!お陰でFUSHIも私もヘロヘロだよ〜』
よよよ、とわざとらしく泣き崩れるヤチヨの肩の上、よく見ればウミウシのFUSHI
――
ツクヨミのマスコットだ
――
がぐったりしている。
どうやら、探し回らせた、というのはジョークの類ではないらしい。私なんかを。ヤチヨが。
「ええ
……
っと、それは、なんかすんません
……
?」
『ううん、謝らないで?つい愚痴っちゃったけど、オタ公は悪くないからね。
まだまだ改善の余地があるって話で
……
あ!
そもそもだけど時間あるかな?今って誰かと待ち合わせ?』
矢継ぎ早に言葉が重ねられる。その、ずいずいとくる気安さに飲まれるように、あ、いえ、と私の口も滑り出す。
「きょ
……
今日は一人で、ブログの記事でも書こうと思ってたので。用事は、特には」
『ブログ!!!
ブログっていいよねえ。いろんな人の色んな日記を手軽に読めちゃうの革命だよ〜。廃れてきてるのが残念なくらい。
あ、オタ公のブログね、ヤチヨも読んでるよ〜。本当に色んなライバーのことよく見てる!』
「うえええ
……
!?」
わあ!と目を煌めかせる姿もだけれど、何よりその言葉に驚いてしまう。AI、ブログとか読むんだ
……
!?
『ヤッチョの可処分時間にも限りあり、さりとて倍速視聴は言語道断
……
!という葛藤との折衷案として、大変お助かりおおだこ助かり、なのです』
「それは
……
えっと、その
……
光栄です
……
?」
照れくさくて、思わず何もない机を見てしまう。ライバー好きはもともと趣味で、大人になった今もやめられないままでいるだけだ。大っぴらに自分が更新していることも話していない現状、褒められる、という経験には少々弱い。それが、まさしくファンであるヤチヨご本人からとなれば。
『うんうん、良きかな良きかな。
今後ともツクヨミをご贔屓にね。
――
そして!そんな貴女にお願いが?』
「
……
え?」
何やら雲行きが変わったことに、思わず顔を上げる。そうすれば、いつの間にか届いていたらしいパフェに口をつけながら。ヤチヨはえっとねえ、と頬に指を当て、
『公式番組って、興味ある?』
「
―――
」
スプーンはとうとう床まで落ちた。
『ツクヨミもサービス開始からそこそこ経ったしねえ。そろそろ運営としてももうちょっとライバーの皆の情報を総合的に提供したいと思ってるんだ』
普段の配信よりも幾分落ち着いた様子のヤチヨは、そんなことをつらつらと続ける。
もう仮想の食事を楽しむどころではない私は、呆然とその言葉に聞き入るしかない。
『頻度とか時間とかはまだ未定。週2で30分くらいかな〜、ま、要相談?
あ、勿論しっかり報酬も出るよ〜。オタ公にはMCをお願いしたくて
……
。
………
聞いてる?』
「
……
これ、その、ドッキリではなく?」
『ノンノン、違いますとも!』
現実味がなさすぎる言葉の数々に、まず選んだのは逃避だった。
すわAIの暴走か、はたまた詐欺かと怯えた視線を向ける私に、器用にスプーンを回していたヤチヨはあちゃあ、と困った顔をする。
『
……
こーれーは、ヤッチョが来たのが良くなかったかな?』
『
……
ま、信憑性には欠けるんじゃないか
……
?』
『うーん、まあそうだよねえ、AIライバーって自我ないっぽいし〜
……
』
ぐったりしたままのFUSHIの茶々に、えーん、とエモートの涙をこぼしながら。
ヤチヨは他人事のように、そんなとぼけたことを口にして。
『
――
ま、口頭の説明はここまでにして。詳細はDMに送っておくからさ。よければ検討してくれたまへ〜』
ぴこん、と通知音が聞こえる。友達登録してないはずのヤチヨから
――
いや、最初から登録されてる公式から通知が来ている。であれば、え、これ、本当なの
……
?
「あ、
……
りがとうございます。
……
えと、本当だったとして。なんで私
……
?」
動揺のまま、ずっと気になっていた事を問いかける。ん?と不思議そうな顔のヤチヨが小首をかしげる。
『説明した通りだよ?貴女のブログの熱量をみて、貴女こそが相応しいと思ったのです』
「そんな、理由で」
『そう、そんな理由
……
それだけの理由。
だって、折角ならさ。心の中がたくさんの好きで溢れてる人に、おっきな声で大好きって
――
伝えてもらいたくない?』
ね、と。
その一瞬。指を立ててはにかむ、目の前の管理者が。誰でもない、ただの女の子に見えた気がした、のだ。
「
―――
」
『なーんてね。ま、これは全部私の理想論ですからに。というわけで、色よい返事、期待して
――
』
「
――
私に」
ん、と。言葉を遮られたヤチヨが視線を上げる。
「そんな大役、出来ると、思う?」
『
――
そりゃあもう。出来るっ!』
ぱちり、指が鳴らされる。
びっくりするくらい調子が良くて、信じられないくらいあっけらかんとしてて、普段の神秘性の欠片も、AIらしい説得力も、何の保証もないのに
――
ああ、貴女が言ってくれるなら、出来るのかもな、と無条件に思えてしまった、私の負けだったのだろう。
私が何を選んだのかは、推して知るべしだ。
かくして二度の転機を迎え、今の私は此処にある。
――
ツクヨミの収録スタジオ、本日の登壇者は自分を含め二名。
「
――
オタ公、おっつかれ〜!」
「はぁーいどもども。ヤチヨも来てくれてありがとね、っと!」
ハイタッチで配信終了を労う私達。すっかり板についた番組配信も、今となっては手慣れたものだ。
ヤチヨカップの中間発表も終わり、イベントもいよいよ後半戦。視聴率も目に見えてうなぎ登りで、企画の注目度がよく分かる。ヤチヨがコラボライブをするという物珍しさも相まって、企画は大フィーバーを起こしていた。こっちも情報収集に情報発信にと大忙しだ。
ふんふふん、と、投影を切って真っ白なスタジオをくるくる回るヤチヨは何時になく上機嫌
――
というか、ここ数週間、具体的にはヤチヨカップが始まってから、彼女は妙に浮かれている。
明るく振る舞う割にフラットな彼女にしては、それはなんとも珍しい。AIとして処理しているデータに変調があったのか、
――
それとも。私は、一つツバを飲み込むと、口を開く。
「ねー。ちょっと聞きたいんだけど、ヤチヨってさ」
「ほいさ?」
「本当に、AIなの?」
沈黙が下りる。笑みを固めたヤチヨが、ゆるゆると首を傾げた。
「
――
おおっと?突然の問いだね〜、それはもしや、人とは、AIとは
……
という、哲学ですかな
……
?」
「いーや、字面通りよ。
やっぱ、違う気がするんだよね
……
」
理由を聞かれたら勘としか言いようがない。精巧なAIの出力結果を見抜けるなんて自惚れは、現代社会の発展に伴いとうに捨てているけれど。それでも
――
出会ったときからずっと抱き続けていた違和感は、今、ピークに達している。
じっと見つめる視線の先。回るのをやめて、薄く微笑んだヤチヨは、そうだねえ、と静かに呟く。その底しれない響きに、背筋が震えた。
「深淵を覗き込むものは、又、深淵に覗かれる
――
覗いたことを、無かったことにもできるけれど」
「
―――
」
漂う剣呑な雰囲気に身構える私を、光のない瞳で見据えた後。目を伏せると、ヤチヨは、ふ、と息を吐いて。まあいっか、とあっけらかんと笑う。
「その通りでーす。大正解!
あ、これ、神々のみんなには内緒ね?オタ公だけへの特別開示なのだ」
……
軽すぎる。思わず額を抑える。
「
……………………
そうだとすると、かなりめに他の問題が浮上するけど?」
「いえいえ〜?生命倫理には反してないから安心して欲しいな。
ヤチヨはAIではないけど、さりとて人間でもないから。オタ公が心配したり不安になることは何もないよ?」
なんだそりゃ。意味を掴めない言葉の数々にやっぱり煙に巻かれたのか、と思えど、ヤチヨは微笑んだままだ
――
微笑んでいる。私を見たまま。それは、真剣な時の彼女の振る舞いだ。
広大なVR世界の管理人。摩訶不思議な技能を使い、尋常ならざる経営を成功させた稀人が、その作者だとまことしやかに言われていて。
でも、AIでないのなら。
――
なら、目の前にいるのは?人ならざる、尋常ならざる、
――
……
それは、口にすることすら荒唐無稽だ。
「
……
マージ?」
「うふふ。ヤッチョのただ一つの嘘を見抜くなんてやりますなあ。さすがはオタ公、ライバーオタクぅ!」
重ねられた、ただ一つ、という言葉にもなにやら引っかかりは覚えつつも
――
やけに楽しそうにはしゃぐヤチヨの言葉に。おっと、流石に一箇所訂正だ。
「いやいや、それは違うっしょ。私が気づいたのは、私がヤチヨの友人だからだよ?
こんなに魅力的な友達のこと、ずーっと見てたら不思議に思うって」
「
―――
」
きょとん、と目を丸くしたヤチヨが、みるみるうちに破顔して
――
こちらに歓声をあげながら飛び込む一瞬、その顔が、出会ったときに見た女の子の顔であり、また、今推してる新進気鋭のとあるライバーちゃんにソックリに思えたのが、なんとも不思議な心地だった。
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