ろころころ
2026-03-11 02:54:10
8020文字
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とかげりょな②

かっこいいトカゲはいません
言うほどリョナってない

拠点を突き止められるとは思っていなかった。


メフィストに拠点を突き止められ襲撃されたあの夜から、ファウストは各地に拠点を置くようにしていた。どちらにせよメフィストに比べて人員が少ないのだから、戦力を集中させようとも勝てないのだ。真っ向から戦うだけ無駄というものだ。
それならば、各地に拠点を置き撹乱させた方が良い。それはリグの下した判断であったが、誰も反対の声を上げなかったので、彼らもまた納得していたのだろう。

何が原因だったのかはわからない。
ただ問題なのは、奴らの矛先が自分では無く部下に向いたことだった。

自分ならば耐えれたかもしれない痛み。
でも、彼らは違う。

「まずは───爪でも剥がしてやろうか?」
「い、痛い!痛い痛い痛い!!い゙っっあああああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

先程までは"日常"だった空間に、悲痛な悲鳴が響き渡る。否、この世界に残ると決めたその時から、日常なんて存在しなかったのだ。

何故忘れていた?なぜ気づかなかった?
覚悟の上で、その身を投げ出したのでは無いのか?

「た……た、すけて……ボス……!」
……………

己の決断は、彼らの命の行く先を決めるのだと。忘れてはならなかった。

………彼を離してください。なんの情報も出てきませんよ」
「情報?ああ」

悪魔は床に杭を打ちつけるかのように、そのナイフを男の手の甲に突き刺した。
悲鳴が上がる。

「んなもの、拠点ここを落とした時点で無価値も同然だ」
………はぁ?じゃあなんで、」
「お前の顔が歪むのを拝むためさ、ファウスト!」

悪魔は狂ったように笑った。
ああそうだ、自分もあんな風に笑っていた。彼らの同胞を殺して、その時に笑っていた。

──────ザシアンさん、貴方の言うことはきっと正しかった。

己の決断の責任は果たしてきたつもりだが、それに対しても後悔なんてしたことがなかった。でもきっとそれは違う。責任を果たせるくらいの報復しかなかっただけ。

その思考も、再び悲鳴によって遮られる。
悪魔は男の顔の皮膚にナイフを食い込ませると、捲れた箇所からビリビリと皮を剥ぎ取った。

悲鳴はやがて途切れ途切れになり、ひゅうひゅうと聞き苦しい呼吸音に変わる。痙攣していた身体からは力が抜け、痛みに藻掻く様子も見せなくなっていった。

リグは、その様をぼんやりと見ていた。
ああ思い出した。あの時、両親はどんな風に死んだっけ?覚えていない。リグに狙撃を教えてくれた彼も、両親の目を掻い潜ってこっそりとお菓子をくれた彼女も。
──────全員が目の前で死んでいく様を、リグはこうやって見ていたのだ。

「ほう?意外だな、見捨てるのか」
…………今更なんですよ。一度目も二度目も三度目も……全部お前達に目の前で嬲り殺された!」

そしてその度、自分は彼らを捨てた!
悪魔は興味が失せたと言わんばかりに、男を投げ捨てると、リグの腹部に刃物を突き立てた。
強烈な痛みも、ぐちゃぐちゃと聞こえる嫌な音も、今はもう何も気にならなかった。


ああやっぱり。無理なんですよ、ザシアンさん。
貴方は英雄になれたけど、私にはなれない。

──────でもきっと、物語としては正しい形なのだ。