緑色した流れ星

MHRウ教×ハ♀。夫婦。
待ち遠しかった約束の日に。

あと1週間、あと5日、3日、明後日、明日──幼子おさなごのように日々を指折り数え、畳の間の柱につけられた小さな和紙のこよみの前で、そわそわとした様子の娘。

普段は里の英雄『猛き炎』と呼ばれし強者ツワモノの背中だが、今だけは、数ヶ月前に夫になってくれた最愛の人との約束の日を待ち焦がれる乙女の背中となっていた。

澄んだ静かな星月夜ほしづきよ、入浴を終えて寝間着の浴衣に着替え、畳の間には夫婦布団。あとは、もう寝るだけ。

その前に暦を、正確には暦の中の明日につけられた赤い花丸を眺めては「えへへ」と幸せそうにはにかむのが、数カ月前からの娘の日課。

目を凝らせばまだ白い湯気が見える、そんな娘の後ろに、不意にゆらりと大きな人影が歩み寄る。

「ほーら、またそんなところで。湯冷めしちゃうよ」

桜色の半纏はんてんを広げながら歩を進め、それを娘の肩にふわりと掛けたのは、彼女の最愛の夫であり師であり、里の教官でもあるウツシ。今の彼もまた碧色へきしょくの浴衣姿で、柔らかに目を細めながら暦に目を向けた。

「ふふふっ、また見てたの? 明日のユクモ温泉の日帰り旅行、そんなに楽しみにしてくれてるんだね」
「えへへ、それはもう! 1ヶ月前からずっと楽しみにしてますっ! やっと、明日ですね!」
「そうだね! やっと明日なんだから、湯冷めして風邪引かないように、ね?」

にこやかなウツシに向けて申し訳なさそうに「はぁい」と比較的素直な応答をした娘の目線は、暦の次に、畳の間の片隅に向けられる。

明日の日帰り旅行のために夫婦が用意した、大きく膨らんだ革鞄かばんが2つ、仲睦まじそうに並んでいて。

……えへへ、こういうの本当に久しぶり。楽しみ」

笑顔も言葉も溢れさせ、半纏姿になった娘がウツシの方に振り返った。

「半纏、ありがとうございました! 明日早いですし、ちゃんと寝ます!」
「うんうん、いい子だね! 俺もずっと楽しみだったんだあ、一緒に寝ようね!」
「はいっ!」

顔を見合わせて笑い合い、そのまま一緒に布団の中に向かって、行灯の明かりを消して──月明かりと布団の中、手を繋いだまま、目を閉じて。

娘もウツシも、幸せに満ち溢れていた。多忙を極めている同士、夫婦水入らずで一緒にいられる時間をやっと作った明日という日。

その日が、始まるまでは。

@acadine