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保科
2026-02-24 22:20:49
5378文字
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超かぐや姫!
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お家に帰りましょ
帰省する彩葉と、常々一言文句が言いたかったかぐやの話 いろかぐ
1
2
「
……
いーろーはぁ。どこ行くの」
さあそれではドアに手をかけて
――
と一息つきかけた瞬間、背後からノロノロ飛んできた眠たげな声に。私は、第一目標として掲げていた「かぐやに見つからず家を出る」が、失敗に終わったことを悟った。けれどその動揺をおくびにも出さず、即座に心を切り替える、
――
できる子よ、彩葉。やるのよ、彩葉。
できる限り穏当な顔で振り向いた私は、程よくニュートラルに見えることだろう。疑われる余地はない。
「あー
……
研究所、かな?」
「え〜、何それ、こーんな朝早くからぁ?やること終わったし暫く定時だ〜って言ってたのに?」
「いやそれがまだ残ってたんだ、うっかり。ごめん起こしちゃったよね、かぐやは寝てていいよ」
「ふーん
……
」
パジャマ姿のまま腕を組み、ムスッとしたようにこちらを睨むかぐやは何を疑っているんだろう。
なんとか部屋に戻ってもらおうと、私は愛想笑いを浮かべて、
「ちなみにリビングの書き置きならもう見たけど」
「
…………
」
――
小細工は無意味らしい。朝起きてから読んで貰うつもりだったそれをひらひらと振るかぐやに、おおよそ先の展開の予想がついた私は、歯切れ悪く口を開く。
「
……
なら、何?」
「
――
かぐやも連れてって!つまるところさぁ、彩葉の実家に行くんでしょ?もー絶対行きたい行かせてついてく!」
「言うと思ったよああもう
……
!」
だから黙って出ていこうとしたのに。午前5時半にまるで遠慮なく廊下に転がって「かぐやも!かぐやもいくー!!!」と駄々をこねるこれのどこが8000歳だってんだ。額を抑えてため息をつく私に、かぐやは寝そべりながら恨めしげな視線を送る。
「ねえねえねえ、なんだってかぐやを除け者にしようとするの!いいじゃんもう実質家族でしょー!?」
「
……
だって別に、いいでしょ、私の帰省とかさあ」
「よくなーい!京都行きたーい!」
「絶対目的そっちじゃん
……
」
こんなトラブルの塊みたいな女を、あの母と向き合わせるのは嫌な予感しかしなかった。佳境を迎えた仕事にかまけ、数年単位で帰省をサボっていたための、いい加減近況くらい顔見て知らせんしゃい、という先方の指示は御尤もだけれど。知らせる内容については一先ず絞っておきたかったのだ。だから、弾丸日帰りでさっさと済まそうとしたのだ、けど。
……
ままならない。
跳ね起きながらぶうぶう文句を言っていたかぐやは、私の反応の悪さに、あー、と首を傾げる。
「嘘冗談、旅行はまた今度でいいよー?
――
彩葉のお母さん会っときたいのが一番だし」
「
……
え?何か言った
――
」
妙に口調が静になったので、うっかり言葉を聞き飛ばしてしまった。気になって聞き返した時には、うるうると瞳を揺らすかぐやがずんずんと距離を詰めてくる。
「ねえ彩葉お願いお願いお願い!一生〜〜〜〜の、お願い!つれてってっ!」
「あんたの一生バカ重いんだからホイホイ使わないでくれる!?
……
だからぁ、」
「
――
ダメ?」
だから、そうやって切り札を切られたら。囁くおねだりと、縋るような眼差しの波状攻撃は、それはもう素晴らしく酒寄彩葉の心臓を抉った。ぐぅ、と喉を鳴らしながら、私はずるずる扉に背を付ける。
「いろはぁ
……
」
ああもうダメだいつまでたってもダメだ私は成長せんままだ。
「
…………
、
…………
。
……
行くとして、もう出ないと、なんだけど。
……
すぐ支度できるの?」
「!おけおけ、もちいける40秒は無理でも5分で行ける!かぐやにお任せよぉ!」
「そこまで
……
10分でいいよ。新幹線の席追加するから、まあそれまでに間に合わなかったら置いてく
――
」
間に合わ、のあたりでかぐやはイヤッハァ!とか叫びながら自室へと姿を消した。
……
何で起床数分でここまで元気になれるかね本当に。機械の体ってったって限度があろうに。
端末を取り出す最中。暗い画面に映る自分の口元が緩んでいることに気づく。そういえば、ずっと緊張しっぱなしだったかもしれない。
ああもう。深く息を吐いて、仕方ない、と思える幸福をかみしめる。
――
どうせいつかはって思ってたし、縮尺8000年でみたなら数ヶ月も数年も、誤差も誤差だ。
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