万丈
2026-02-17 22:52:27
2267文字
Public 小説
 

いつか来る別離(わかれ)の日に

【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
平和な時代のシヴァ様とインドラ様シリーズ。
天空界には「死」がないそうですが、生命活動が終わったら転生=個人はとお別れ…という考えで書いてます。結局寂しいものは寂しいのです。

前の話→気まぐれな神と、雷帝の献立
次の話→月光華と子守唄


あの夜、インドラが育ての親の死に涙を流してから、塔の最上階にはどこか今までとは違う、静かな空気が流れるようになった。

破壊神シヴァは相変わらず玉座から窓の外を眺めている。
だがその赤い瞳が映しているのは、ただの退屈な景色ではなかった。

彼は時折、傍らに控える唯一の臣下――インドラに視線を移す。
そして想像するのだ。
いつか必ず訪れるその日のことを。
この雷帝の命の灯火が、静かに消えゆくその瞬間を。

魂は転生する。
インドラはそう言った。

だが、この「インドラ」という個は失われる。
この灰色の瞳も、この黒い髪も、この自分だけに向けられる揺るぎない忠誠心も。
その全てが永遠に失われてしまうのだ。

そのどうしようもないほどの喪失感。
それをシヴァはあの日、インドラの涙を通して初めて学んだ。


その夜も二人は言葉少なに同じ空間にいた。
インドラが主君のために温かい茶を淹れている。

見慣れた背中。
当たり前の光景。
それがいつか失われる。
そう思った、その時だった。

……嫌だ」

シヴァの唇からぽつりとその言葉がこぼれ落ちた。

……?」

インドラが不思議そうにこちらを振り返る。

シヴァはその赤い瞳でインドラを真っ直ぐに見つめ返す。
そしてもう一度、はっきりと言った。

「そなたがいなくなるのは、嫌だ」

あまりに素直で、子供のような告白に、インドラは一瞬驚いたように目を見開いた。
そして次の瞬間にはどこまでも穏やかに、そして優しく微笑んだ。

彼は淹れたての茶をシヴァの前にそっと置いた。
そしてその御前に静かに跪く。

「シヴァ様」

その声はどこまでも静かで、しかし揺るぎなかった。

「いつか、この身が光となりて霧散しても……私の魂は決して貴方様のお側を離れはしません」

……本当か」

「はい」

彼は誓いを立てるように、その灰色の瞳で主君を見上げた。

「私は貴方様の唯一の臣下です。たとえどのような姿に生まれ変わろうとも、必ずや再び貴方様を見つけ出し、その御前へと馳せ参じましょう。……それが私の永遠の忠誠にございます」

真っ直ぐで、そしてどこまでも力強い誓いの言葉。
それを聞いたシヴァの赤い瞳が、ほんの少しだけ和らいだ。

彼は何も言わなかった。
ただ差し出された温かい茶をゆっくりと一口すするだけ。
その茶の味がいつもよりほんの少しだけ甘く感じられたのは、きっと気のせいではないだろう。

塔の中の二つの孤独な魂。
いつか必ず訪れる別離の運命を前に、彼らは今、永遠の約束を交わしたのだ。

その約束がどのような形で未来に果たされることになるのか。
それを知る者はまだ誰もいなかった。