なえつき
2026-02-04 17:59:49
3761文字
Public 『ムシカゴ』
 

Dear Light

水樹蒼さん ( https://www.pixiv.net/users/68015841 ) が主催された、カラメルカラム同人アンソロロジー『クリプティック・シンドローム!』に寄稿させていただいた小説の再録になります。少部数ながらまだ在庫があるとのことなので、ご興味がある方は是非。とても良い本です。 ( https://royalrooibos.booth.pm/items/6492995 )

この度は、素敵な合同誌に参加させていただき、ありがとうございました!


■2009年4月12日

 ムシカゴで大掃除をしていたら、大学時代につけていた日記を見つけた。
 過去のページを軽い気持ちで開いて、あまりの羞恥心に、一瞬で後悔する羽目になった。
 いっそダストンに捨ててしまおうかとさえ思ったが……過去のヤバイ自分を払拭する思いで、最近の出来事でも書いてみようかと思い至った。
 しかし、何を書けばいいんだ……。何も書くことがないのではなくて、書くことが多すぎて、何から書けばいいのかがわからない。
 たとえば、昨年末にトリカゴで保護した三人の子どもが、一命を取り留めたこととか。
 リンさんが、率先して子どもたちの指導をしていることとか。(別に羨ましくなんかはない。断じて)
 とりわけその子どもの一人が、やたらとリンさんに懐いていることとか。
 しかも、何故かソイツがやたらとオレにマウントを取ってくることとか。
 対抗して、リンさんの後輩としてはオレのほうが先輩なんだぞ、などと威張っていたら、リンさんに殴られたこととか。
 ……なんでオレだけが殴られたんだ、クソッ。


「遅えぞクリス! 今日はスカベンジだろうが!」

 廊下の方から鋭い怒声が響いてくる。クリスは慌てて日記を仕舞い、急いで部屋を飛び出した。
 研究所の広間には、既に外出の準備を済ませた子どもたちと、リンが腕組みをして立っていた。

「とっととこい、置いてくぞ!」
「ちょ、待ってくださいよ……リンさん……!」

 先に外の安全確認を済ませていたのだろう、外へ繋がる扉の先で、Jが待っていた。
 リンの腕を引っ張って笑っている犬耳の少女。いたずらっぽい瞳を輝かせて走る猫耳の幼女。だらしない服装と眼鏡をした、兎耳の美少女。

 獣人の子どもたちは、外の世界へと歩いていく三人の背中をまぶしそうに見つめ、追いかけていった。


/おわり