なえつき
2026-02-04 17:59:49
3761文字
Public 『ムシカゴ』
 

Dear Light

水樹蒼さん ( https://www.pixiv.net/users/68015841 ) が主催された、カラメルカラム同人アンソロロジー『クリプティック・シンドローム!』に寄稿させていただいた小説の再録になります。少部数ながらまだ在庫があるとのことなので、ご興味がある方は是非。とても良い本です。 ( https://royalrooibos.booth.pm/items/6492995 )

この度は、素敵な合同誌に参加させていただき、ありがとうございました!


「これは……

 一行が辿り着いたのは、実験場のような場所だった。巨大なフラスコのような容器が並んでおり、中には緑色の粘液と、重症を負ったのだろう、顔色の悪い人間が浮かんでいた。ほとんどの人間は既に事切れていた。しかし、運良く生きていた三人の子どもを発見した。ナーシャが難しい顔をする。今すぐに治療を施さなければ危険な状態だった。

「おい、ナーシャ。こいつらどうする?」
……保護する。ムシカゴに連れて行けば、もしかしたら助けられるかもしれないから」

 長年の付き合いで彼女の頑固さを理解していたリンは、自分の頭をクシャクシャとかき、ため息を吐いく。そうして、ムシカゴに戻る決意を固めた。
 子どもたちを保護するべく、緑色の粘液に触れた、そんなときだった。

――っ! リンさん!」
「な――

 ボロボロの格好を着た剣士が、突然目の前に現れ、リンに向けて剣を振りかぶる。
 五感に優れたクリスでさえ察知できない、優れた暗殺者のような気配の消し方に、リンはとっさに反応できない。
 クリスがその不意打ちに気づけたのは全くの偶然だった。リンに向けられた攻撃をかばう。重い一撃。体勢が崩れたクリスに向けて、ふたたび剣が振り下ろされる。剣がクリスの目前にまで迫り、死を覚悟する、その寸前。

――構うな! 行け、クリス!」

 リンの声にとっさに従い、クリスは一気に敵の懐へ踏み込む。正気とは思えない自殺行為に、剣士はクリスの行動に内心で驚愕しつつ、剣を振り下ろし――――その両手から、剣がはじけ飛んだ。
 Jの構えた拳銃から放たれた弾丸が、剣士の両手を貫いたのだ。無防備となった剣士の頭部めがけ、クリスは思いっきり蹴りを放つ。
 人体実験により常人離れした脚力を前に、武器を失った剣士には防ぎようがなく、剣士の頭部は木っ端微塵に粉砕された。
 剣士の頭を砕く、その刹那。花のような、甘ったるい匂いが、クリスの鼻腔をくすぐった。クリスはそこでようやく、甘い匂いの正体に気がついた。

〝そうか、これは――――酒の匂いか〟