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kumazaregoto
2026-01-28 00:42:59
9006文字
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鴻雁北
彩貴と禰津おじさんの出会いの巻
ちょっとGあり
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「ああ、やだねぇ。兄上の執念深さには困ったものだよ」
僕もここで終わりかな、と
由玄
よしはる
は溜息を溢す。思い返せば短くもない人生であったが、国主にもなれず、武士として誉も無いものであった。
名を馳せることを目的としていた訳ではない。武芸の達人になりたい訳でもない。
ただ、己に出来るとしたら。心残りがあるとするならば。
(一国の主になって、この愛する国を、乱世の先まで残していきたかったなぁ)
それはもう無理なんだけどさ、と自嘲げに笑って目の前まで迫る追手の姿を見据える。
その刃にはまだ鮮血が滴っている。由玄を逃した臣下たちは、彼らの錆となってしまったのだろう。
(すまないね、皆。僕はここまでみたいだ)
腰に下げていた鞘に手を掛け、由玄の右手が刀を抜く。迫り来る追手は複数。由玄が見ただけでも五人はいた。もっといるのだろう。入り組んだ森を、得物を携えたまま颯爽と駆け抜けてくる姿は音も立てず不気味にさえ映る。
(さあて、どこまでやれるかねぇ)
鋒は僅かに揺れ、忍の姿を捉える。刀を振り上げ一歩踏み込む。風よりも速く、忍の苦無が彼の眉間を目指して飛ぶ。
鮮血が、飛び散る。
薄暗い森の中で舞う赤色は、それはそれはとても皮肉なほど鮮やかで美しく、そして悍ましい。鉄の臭いが程なくその場を支配し、由玄の鼻にも届いた。
(あれ、)
その血は、由玄のものではなかった。
由玄に苦無を投げた忍の腕が宙を舞い、程なくその頭だけがぬるりと堕ちていく。ごとりと音を立てたそれから頭巾が外れて、ようやくその面持ちが露わになった。
驚愕を浮かべた瞳は何処も捉えていないが、鏡の様に仲間の惨状を映す。同じ頭巾を被った忍もまた、肩口から腹に掛けて一文字に血を噴き出している。
僅かな時で、己を追い詰めていた忍が二人も呆気なく血の海に沈んでいくのを、由玄はただ呆然と眺めていた。
「これは
……
」
宙を見上げる。追手の刃は、その先にいた新手へと既に向けられていた。由玄の命を先延ばしにした張本人を、漸くその目に映すことが出来た。
樹上で靡く襤褸布は土に塗れ、風に煽られ垣間見える着物は継接ぎだらけ。黒い髪は無造作に後ろで一つに纏められているものの、長い前髪は顔を覆って面持ちは見えない。
落武者狩りや野盗の類か、しかし手に持つ刀は赤が滴るものの銀色が眩しい程に輝いて見えた。
何しろ由玄が驚いたのは、その刀の構えだ。
(野盗なんてものじゃあ、ないね)
黒い髪が靡く。その下から覗いた双眸は、鮮血よりも赤かった。
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