こꯓレ)ろ🌟🦄🌈🌟
2026-01-19 00:06:30
11357文字
Public ハイチャ♀
 

おもしれー男とデキ婚した話

ハイチャ♀のデキ婚の話のチャ視点。



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 異変に気づいたのは二ヶ月ほど経ってからだ。
 激務で年に一回あるかどうかのどぎつい生理不順だから妊娠することはまずないだろうと思ってアフターピルを飲まなかったらまんまと妊娠してしまい、吐き気と眠気に耐えながら妊娠検査薬を片手に自宅アパートのトイレで頭を抱えることになった。
 おろさないとなぁ。おろすべきだよなぁ。ありえないよなぁ。迷惑だよなぁ。と思いながらもセックスした時のハインラインが頭をよぎる。
 抱きしめてやった時、頭を撫でてやった時に嬉しそうにへにゃっと微笑んでいた顔が思い浮かんでしまいどうしても踏ん切りがつかなくて困ってしまった。
 相手は寝ぼけて押し倒したワンナイト相手に避妊を怠るようなクズなのだがそんなクズが好きで憎めない自分も自分だ。生でいいよ。とか中に出して。とか言った気もする。
 それに何より好きな人との間に授かった子を堕胎したくない。なら、何と言われても産むしかないな! と決めた。
 もちろん結婚なんて全く念頭に無く、何も言わずに産んであとで子どもを取られたらイヤだから事前に協議すべきだと判断した。
 折しもミレニアムに乗艦する機会があり、空き時間に部屋を訪ねれば事足りる。
 妊娠したことを告げたところ、思った通り良い顔をしないどころか迷惑がられた。もちろん織り込み済みの反応だったので傷付くこともない。
 子どもに関しては認知を求めるつもりもなければ絶対に迷惑をかけないようにすると法的に手続きしたいと申し出た。
 するとなぜか態度が一変。機嫌が良くなったかと思えば超上から目線な最悪最低の条件を並べ立てた挙句に「都合がいいから責任くらい取る」というクソプロポーズをしてきた。
 あまりにも酷すぎて人の心とか無いのかな。無いんだろうなぁ、この天才様は。と、怒るどころか一周回っておもしれー男に思えてきた。よく今まで誰にも刺されなかったな、と呆れ半分感心もした。
 とにかく、シングルマザーの身で軍人は続けられないし、辞めたらどうせ暇になるだろうから試しに結婚してみてもいいかもしれないと思って結婚の条件を飲んだところ、まさかの三日後にプラント移住を決めてこられて焦った。
 そこはせめて中立コロニーとかにしろよな! と思ったけどこの技術大尉、全く人の意見を聞かずに全部決めてくるから反対する隙も無かった。
 天才は天才だから判断に迷いが無い。自分の信じる道を突き進んでいく。
 その迷いのなさは危うくもあったが嫌いじゃないので、「あーなるほど、こーゆータイプね。ハイハイ100%理解」とか言いながらプラントに移住すべく準備や手続きに奔走することになった。こちとら妊婦だぞ。労われよ!
 フラガ大佐やラミアス艦長、ノイマンには突然の結婚と妊娠、そして退役とプラント移住について散々心配されたが、ヤバそうだったら離婚して帰ってくれば良いのだから「大丈夫です! 心配しないで!」と笑って旅立った。
 何せチャンドラの手には最初からすぐ出せる離婚届が握られてたので精神的なお守りとしてこれ以上心強いことはない。

 プラント移住後はハインラインの自宅が想像を絶する豪邸であったり、コネ就職させてもらった設計局でほぼトップの偉い人だったり、コーディネイターの中でも思ったよりハイソサエティに属していたりということを知って戸惑う。これらは妊娠、結婚後に知る情報ではない。
 ハインラインの社会的地位を把握するにつれ、結婚相手がナチュラルで良かったのか?恋愛自由だから恋人はいるだろうけど、普通にコーディネイターと結婚した方がよくないか? と不安にもなる。
 戸惑いつつも日々の生活をこなしていたら子どもが無事産まれ、約束通り遺伝子検査をされ、ハインラインの子どもであることが確定した。尤も、チャンドラは大学生の時の彼氏と別れてからセックスは六年以上ぶりにハインラインとしたきりだったので調べるべくも無いのだが。ともかく、納得してくれたようなのでよかった。
 チャンドラは出産で疲れてぐったりしていたものの、気付けばハインラインが家にいる時間が増え、毎日どうでもいいことで話しかけてくるし、睡眠不足で眠り込んでいるといつの間にか食事の準備や掃除をしてリビングに居たりなどして、家事を担ってくれたりする。
 事前の取り決めで育児全般はチャンドラがすることになっていたし、お互いの生活に干渉しないことになっていたので意外な行動だった。
 また、子どもにも興味があるようで、子ども部屋を兼ねているチャンドラの寝室にこっそり入り込んで端末でせっせと寝顔の写真を撮ったり、リビングで遊ばせているとチラチラ見てきたりなどする。
 トイレや風呂の時にちょっと赤ちゃん見ててくれる?と頼むと「ふん、仕方ないな。まぁ今は暇だから別に構わないが?」などと口では嫌々やってる風に言いつつも嬉々として赤ちゃんを抱っこしにくるあたりツンデレにしか見えなくて、相変わらずおもしれー男である。
 子どもの首が座った頃にはほぼ毎日「今日はリモート勤務にした!」と言い張り、ずっと家に居てろくに仕事をしないでずっと子どもに構って絵本を読んだりしている。ミルク作りやおむつ変えの手際もやたら良い。
 「リモート勤務は「今日も」だろ?」と喉まで出かかって飲み込む毎日だ。
 会議や会合などで出勤する必要がある日は不機嫌で、子どもを抱きしめて「はぁー行きたくない。会議なんてリモートで出来るのに」などとぶつくさと文句を言っている。
 そんなわけでほぼ毎日ずっと家にいて、外に居るはずの恋人とは会ってない様子だ。
 ナチュラルが産んだ子でもやっぱ自分の子だとかわいいのか、良いパパなんだが?と思いながら暮らしていた。

 子どもが生まれてしばらく経って、ほぼ日課となっているノイマンとの通信で子どもの可愛さやハインライン大尉が結構可愛いところあってギャップがヤバいという話を聞いてもらっていたら、話の中でハインライン大尉とのお互いの呼び方がいまだに「技術大尉」と「中尉」のままであることを指摘されて、「ずっと気になってたけどそれはおかしくないか? もしかしてケンカでもしてるのか?」と詰められて返答に困る。
 いつでも離婚可能な契約結婚で実質的な夫婦の営みも全く無いのでそこをつっこまれるとヤバい。
 ラミアス艦長もフラガ大佐もノイマンも、チャンドラが幸せな結婚をして軍を辞めてプラントに来たと思い込んでくれていたので何となくハインラインの評判が悪くなることは避けたいな、と思った。
 なんだかんだ言っても好きだし。子煩悩なとこあるし、パパとしては悪くない。
 自分もプラントで一人で外出できない点以外はまあまあ不自由なく暮らせている。能動的にハインラインとの結婚生活を持続させたいと思って一歩を踏み出すことにした。
 そんなわけで早速その晩、提案してみた。
「いつまでも階級呼びってのもおかしな話でしょ。自分は退役してるから中尉ですらないし、そっちも設計局に戻ってんだからどっちかって言うと博士でしょ? 他人が聞いたら変に思われるかもしれないしよかったら名前で呼び合いたいんだけどどうっすか?」
 フランクなノリだったし、不自然な事は言ってないのだがハインラインは真顔で黙り込んでしまった。
 やっぱ契約結婚の相手に名前呼ばれるのイヤだったかな〜? と不安になりつつ「アルバート」と呼んでみたらみるみる真っ赤になった。
 おま、それ茹でたエビじゃん。と言いそうになったが言うと拗れそうな予感がしたので黙った。笑いを堪えるのに表情筋が攣りそうだ。
 が、流石にそんな様子を見て理解した。ハインライン大尉はチャンドラが名前を呼んだだけで真っ赤になって照れるのだ。
 こいつ、二つ年上だったよな。三十一歳だっけ? 三十一歳の男が名前呼んだだけで? 可愛くね?
 なんだか楽しくなってきた。
「なあ、アルバート、ダリダって呼んでみてくんない?」
 軽いノリを意識してさらっと言ってみたらそれ以上真っ赤になれるんだ。と思うくらい首まで真っ赤になってしばらく口をはくはくさせたあとちっっっっっさい声で「ダリダ」と呼んだので「いや声ちっさ!」とつっこんでしまった。
 反応がとにかく面白いので何回か練習で呼び合ってみて、名前呼びに変えようという同意が得られる。ハインラインは頬を赤らめてぽやぽやしている。目も潤んでるし、とりあえず涙拭けよ。
 ともかく、名前呼びに変えたくらいで感極まっているハインラインを見るにつけ、薄々気づいていたがこいつやっぱ自分のこと好きになってるな。と確信した。
 子どもはプラントでは本来差別を受けるはずのハーフコーディネイターであるにも関わらず溺愛しているし、なんだかんだで家事育児に熱心で、チャンドラにも配慮して暮らしている。外で自由に恋愛して良い契約なのに女の影も一切ない。
 チャンドラもハインラインしか話し相手が居ないから家に居てくれるのが嬉しくて手の込んだご飯を作ったり、甘やかして欲しそうな感じに甘やかしてきた自覚はある。
 団欒時のちょっとした会話の中で折々に察せられるハインラインの幼少期や両親との関係、生い立ちから家族の愛情に飢えているのでは? と推察もできた。
 それとなく聞き出した限り、ハインラインには過去に婚約者は居たが能動的に作った恋人は居たことがなく、かろうじて童貞じゃなかった程度の女性経験しか無かった。
 裕福で教育環境は最高だったものの、家族との触れ合いや思い出などは無く、レジャー目的の旅行の経験もない。親子共々お互い無関心のネグレクト一歩手前みたいなものだったようだ。少なくとも、チャンドラが子どもに接するような家族の距離感では無かった。
 チャンドラが思うごく当たり前の家族の距離感を、ハインラインは心地よいと感じているのだろう。