華子
2025-06-15 22:34:29
8385文字
Public ラキスケ宿センセ(宿夢)
 

(全年齢)ラキスケ補助監督と宿センセイ#3(宿夢)

3話目。
みんな生存・ハッピー謎時空の呪術高専が舞台。
ラキスケ体質の補助監督員🌸ちゃんが、
宿儺先生をトラブルに巻き込みながらなんやかんやありつつ関係を築いていく話(予定)そのうちR18にもなる(予定)


────ご飯が先?お風呂が先?それとも……
なんとなく言ってみたくなったセリフを言いかけていると、心底呆れたような表情を見せた宿儺先生がくるりと背を向けた。


「たわけ、風呂が先だ。行ってくる。」

「あっ、待ってください!私も行きます!」

言われてみれば任務後であちこち汚れているし、まずはお風呂で一日の汚れと疲れを綺麗さっぱり洗い流した方が良いだろう。


「女湯が右手側、女湯は右側、女湯みぎ

化粧落としにシャンプー、スキンケアセットなど、風呂に行く支度をしていたらば、やはり待ってはくれない宿儺先生に置いて行かれたので、後から温泉に入る私は、うっかり男湯へ乱入しないよう細心の注意を払って女湯へと向かった。


藍染の大きな暖簾に『女』と大きく書かれているのを指差し確認し、脱衣所へ入る。藍染では色ですぐさま判別が難しいから避けてもらいたかったなぁ、と心の中で小さな苦情を言いつつ暖簾をくぐると、本当に誰一人として利用客が居ないようで、脱衣所のロッカーは誰も居ない事を知らせる鍵が全てに刺さっていて、服を脱ぐ場所が選び放題だ。

うきうきと服を脱ぎ散らかし、洗い場でささっと体を洗い、温泉に首まですっぽり深く沈むと、水圧で体の中から絞り出された空気と共に声が出る。


「っあ゙〜〜〜、きもちぃ〜」


極楽とはよく言ったものだ。
疲れた体が温かなお湯に包まれ、ふわふわとした心地良さと多幸感で充たされる。

自身の車の運転に不安は無かったのだが、初めて運転する道で、しかも細い山道で、道路脇は崖というか山の一部で雑木林で……。自分一人ならまだしも、数少ない特級術師に何かあったら自分では責任を負いきれない、と神経を擦り減らしながら運転に超集中して。今日は特に疲れ切ってしまった。

切れた緊張の糸をそのままに、温泉の中で脱力してゆらゆらと体を伸ばして漂わせる。


(昨日のラッキースケベから、急に人生が濃くなったなぁ……。)


特級術師・宿儺先生のあれやこれやを思い返しながら温泉を充分堪能した後は、浴衣に着替えて部屋へともどった。

たっぷり長湯した気持ち良さから、上機嫌な私が部屋のその戸を開けた瞬間。美味しそうなご飯の匂いが、鼻腔と空っぽの胃に直撃する。
なかでも、牛肉の脂の焼ける匂いが鮮烈に香り、一気に空腹感が襲いかかってきた。

慌てて部屋の中へと入って中の様子を確認すると、口いっぱいに頬張りながら、おひつから追加のご飯をよそっている宿儺先生と目が合う。


「なっ!!!!!宿儺先生!なんで待ってくれてないんですか!?」

…………遅い。」

「いやっ、だからって!うわっ、おいしそ!」


低いテーブルの上には所狭しと料理が置かれ、三人前以上の量があるように見える。
固形燃料を使用する小さな肉焼き用のプレートに、季節の野菜を使った小鉢、お刺身、肉、汁物、煮物……品数も量も多くてなんとも贅沢だ。いや、この豪華さは宿儺先生の自腹ご飯なのでは

想像以上の煌びやかな食卓に気後れし、泳ぎまくりな視線を落ち着かせるために、宿儺先生に視線を向ける。
彼は大盛りごはん片手に、大きな手で器用に箸を美しく使い、料理を摘んでは口へと運んでゆく。その所作があまりにも綺麗で優雅なので、宿儺先生って実は貴族かなんかなのか?と思いながら、ぼんやりと見つめた。

食べる姿に見惚れそうになりつつ、それよりもなによりも、温泉上がりに宿儺先生も浴衣へと着替えており、食事姿だけでなくその浴衣姿にも視線が釘付けになってしまう。

……ゆかた、そうだ、浴衣をいくつか買い取って服の予備にしよう。私ってば天才かも。」

ぼんやりとしたまま、独り言が無意識に口を衝いて出る。

温泉上がりで暑いせいか、宿儺先生は浴衣の前を大きくはだけさせいて、雄っぱいが弾け出そうだ。
これは、もう少し私が横に移動したら宿儺先生のちく……
「視線が煩い。早く座って食え。」

「っは!?すみません!!何もやましいこと考えてません!!!」


宿儺先生は一瞬だけ視線をこちらへ送って注意し、またすぐさまご飯へ戻る。
恥ずかしくなった私は、いそいそと彼の向かい側の座布団へ座ると、私も豪勢な夕ご飯を頂くことにした。

────が、しかし。
米を椀に盛ろうと、宿儺先生の近くにあるおひつを見ると、もうそこには雀の涙程度の米しか残っていないではないか。


……待って、宿儺先生!?私のお米は?!」

「そこらの粒でも摘んで食え。」

「えっ?!さっきまでおひつにご飯いっぱいありましたよね?!」

「そうだな。」

「えっ!?え?まさか食べたんですか?ぜんぶ??」

「そうだな。」

「っえーーーー!!!?!」

「煩い。黙って他のものを食え。」

「ごはん、田舎のお米……、私楽しみに

手のひらの椀に寂しく盛られた米を覗き込み、大口で食べればひと口で終わってしまうようなその量を、箸で小さく一口分にした。


……いただき、ます。」


納得は出来ないが、今あるものを楽しむしかない。
しょんぼりとした気分で、真っ白くツヤツヤに輝く小さな粒たちを口へ運ぶと、口に入れた瞬間、温かな米から立ち上った良い香りが鼻に抜けた。

奥歯へ運ばれた米をゆっくり嚙み潰すと、口いっぱいに優しい甘みが広がって、じゅわりと唾液が溢れ出てくるので、再び噛み締め咀嚼する。

まだ米しか食べていないが、今日の疲れでカラカラになった心のナニカが、スポンジが水を吸い上げるが如く、急速に充たされてゆく感じがした。


「〜〜〜〜〜おいひぃ。」


ぽろりと、ひとりごとがこぼれてからは欲の赴くままに箸を動かして、空腹を満たしてゆく。
基本の和食、お刺身に、自分で焼く上品なお肉どれも一等に美味しくて、勢いよく無言で食べ進め、腹八分目くらいになったところで、ようやく見られている視線に気付いた。

視線の彼は頬杖をつきながら、どこか満足そうな顔をして片側の口角を上げており、次第にその唇がゆっくりと開く。


「旨いか?」

「はい!ものすごく!」


……では、朝は米を分けてやろう。」

「っえ?!良いんですか!!!」


やったぁ!なんて喜んだのは一瞬で、はたと冷静に考え動きが止まる。



「いやいやいや!それ普通ですからね!?」

……ばれたか。」



宿儺先生が白い歯をむき出して、喉の奥でくつくつと笑う。
こんな笑い方もするんだなと少し驚きつつ、心臓のどこかが大きく跳ねて鼓動が速くなる。

大きな体躯、開いた胸元、弾けそうな雄っぱい、常に漂う引き寄せられるような色気……


ぼんやりと見つめていたらば、宿儺先生が深く息を吸い、一呼吸置いて私の注意を引き付ける。


……それと。」

「?」


真っ直ぐ視線を合わせ、子どもにでも言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「今日はやむを得ず同室だが、襲うなよ?トラブルは御免だ。」


「ばっ!?、だっ……!誰が!!」


動揺しまくって勢いよく机に手をつくと、空になった小鉢達がカチャリと音を立てた。

そんな私を見た宿儺先生は、馬鹿にするように息を吐いて嗤い、席を立つ。
そして、『湯に浸かってくる』と言ったきり、宿儺先生はもう数時間戻らないので、仕方なく寝る支度をして、敷かれた布団も部屋の中で、できる限り離した場所に設置した。


ゆっくりと支度したのにまだ戻らないので、これまた仕方なく布団に潜り込む。



……おやすみなさい。」


1人で居るには広すぎる部屋の中で、ぽつり呟く。
辺りは一瞬でまた広い静寂に包まれ、目蓋をゆっくり閉じたらば、1日の疲れがどっと重くのしかかってきて、布団に沈み込むような錯覚を感じた……と思っていたら、あっという間に私は眠りの淵に落ち込んでいたのだった。