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ぴかぶ
2025-12-31 23:16:41
9734文字
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思いがけずも、ハッピー・エバー・アフター!
『3の倍数でバカになりながら100まで数えないと出られない部屋』に閉じ込められる事件から日々は過ぎ……騎士と海賊は新たな年を迎えようとしていた。
これは、あるパーバソの愛の証明の物語である。
にぎやかな新年の初笑い
やるか!?伝説の聖槍ギャグ
お蔵出しの秘策で笑いの頂点へ!
たっぷり魅せます二人の愛
むてきのコンビ、 パーバソ見参!
【番組詳細】
初笑い!円卓かくし芸NO.1決定戦 ▽今夜、カルデアに伝説が生まれる▽異色の初タッグ!騎士パーシヴァル×海賊バーソロミューのパーバソが参戦▽「彼らならできる」魔術師マーリンが太鼓判を押す、驚愕の演目とは?▽準備期間はわずか一週間。体当たりで挑む二人の秘策が炸裂する!▽沈黙を守る王の瞳に映るのは、笑いか、それとも困惑か…?驚きの結末を見逃すな!(正月特番風)
ーーーーーーーーーーーー
※かっこいいパーバソはいません
※第5回プロット交換会(夜の部)で書いた『不本意ながら、ノット・ソー・バッド』の続編のようなもの
※このお話は全年齢向です
1
2
3
「バート、折り入って話があります」
パーシヴァルが神妙な面持ちでそう切り出したとき、私は穏やかな日常の終わりを予感した。
「貸し部屋を手配しているので、今から私と一緒に来ていただけるだろうか?」
改まった口調、伏せられた顔は彼の思惑を読ませない。しかし私はつとめて穏やかな笑みを浮かべてそれに応える。
「いいとも。でも、君が部屋を借りるなんて珍しいね。どちらかの部屋では難しい話なのかい?」
少しだけ視線を泳がし、パーシヴァルがこくりと頷く。
「
……
ええ」
「そうか」
私の予想ではこの後に待ち受けているのは別れ話だ。
パーシヴァルと恋仲になって半年。恋人ごっこで終わらせるつもりで始めた関係は、思いの外、長く続いている。もともと好ましい男だとは思っていた。彼の熱烈な愛を受け、絆された。その結果、別れを切り出すこともなく、今もひそやかな恋を育んでいる。
しかし最近になって、パーシヴァルは難しい顔で一人思案に暮れることが増えた。急用が出来たと言って、二人の茶会のさなかに席を外すことも。そして気のせいでなければ、円卓の面々から鋭い視線を向けられることも幾度かあった。
円卓の騎士と海賊では釣り合わない。戴く星の数も違う。混沌・悪の男など、騎士には相応しくない相手だ。早いうちに別れたほうがいい。きっと、私達の関係を察した心優しき彼らはパーシヴァルにそのような助言をしたのだろう。
まもなく、今年が終わる。関係を精算するならば新しい年を迎える前が望ましい
……
。
パーシヴァルと貸部屋を訪れると、ドアの前にベディヴィエールが立っていた。緊張感漂う面持ちでこちらを見つめ、お待ちしておりましたと頭を下げた。その姿に、私の予感はますます現実味を帯び始める。
「ベディヴィエール卿、バーソロミューを連れてきたよ。円卓の代表として、話し合いに同席してほしい」
これはもう、決定的だ。私達の行く末は円卓会議にかけられた、そしてその結末を彼が伝えに来たとみて間違いない。
……
そろそろ潮時か。
さようなら、パーシヴァル。やはり私達、付き合うべきじゃなかったんだ。もちろん、君とは遊びだったとも。最初に言っただろう。恋人ごっこならばお付き合いすると。そうとも、遊びだった。おもいのほか居心地がよくて、別れを切り出す機会を逸していただけでね。だから。
……
ドアを押し開くパーシヴァルの手を見つめながら、この後、口にすべき言葉を考える。伊達男はきれいな別れを心得ているものだ。あと腐れないよう別れを切り出すシミュレーションはかつて幾度もしたはずなのに、何故かうまく声にできる気がしない。あぶくのように脳裏に浮かんで消える言葉はどれも、本心と乖離した薄っぺらい嘘ばかり。
しかし、ミーティングにも使われる部屋のテーブルセットに着席するなり、切り出されたのは想像とは異なる言葉だった。
「バート、私達が恋仲になって半年が経つ。そろそろ次のステップに進みたい」
「
……
は。次、とは?」
「あなたは、しばらく様子を見ようと言った。いつ終わるともしれない関係ゆえ無闇に周知すべきではないと。その時はあなたの意見に納得したよ。でも
……
幸いなことに、今もあなたとの関係は続いている。明言をせずとも、私達が恋仲であると薄々気づいているサーヴァント達もいる様子だ。だからそろそろ、私達の関係を皆に打ち明ける頃合いだと思うんだ」
「別れ話じゃ
……
なかったのか?」
パーシヴァルはとたんに険しい目つきになる。
「別れる? 何故?」
「最近の君は深刻な顔で考え事をしていることが多いし、今日は円卓の騎士ベディヴィエールの立ち会いまであるじゃないか」
「そのようなこと、考えるはずもない! 私が別れを切り出すと、あなたは本気で思ったのですか?」
「バーソロミュー殿。誤解を招くようなことをして申し訳ありません。そのようなことは、けしてないと断言します。今日、私が同席しているのは、円卓を代表してお二人にご提案があるからです」
す、とベディヴィエールが壁のプロジェクターに映像を映し出した。
「まずは、こちらの資料をご覧ください」
彼のプレゼンによる提案内容は、こうだ。
年末年始、円卓は揃って王に謁見する。そのタイミングで二人の関係を報告してはどうか。パーシヴァルからの相談を受け、執事として王や円卓のスケジュールを知る彼が組んだ年始のプランである。
「しかし、円卓の集まりなんだろう? 親族の年中行事に部外者が混ざるのはいかがなものだろう。挨拶なら、年始の落ち着いた頃合いを見て伺わせてもらうよ」
例年、彼らがどのような年越しを過ごしているのか、私は知らない。もともと全く異なるコミュニティに属しているのだ。夏休暇での出会いがなければ、恋仲になるどころか、きっとカルデアですれ違っても話すことすらなかっただろう。
「大丈夫だ、バート。あなたは私にとってもはや他人ではない。皆に紹介したい、大切な人だから」
「いずれ挨拶をされるのであれば、皆が揃っているときがよろしいかと。周りをして人の心がわからないと言わしめる王ですが、その時期であればいつもよりフラットです。年始こそが、より和やかな雰囲気の中で言葉を交わせる最適な時期。今なら準備のための猶予もあり、私としても協力しやすい。そう思い、こうしてご提案をさせていただいたというわけです」
「そう。円卓の騎士は“ブリテン新春かくし芸大会”と称して、何かしらの芸事を披露することになっているんだ。一年を有意義に過ごした証左としてね。その大会に出席したタイミングでの報告は、ある意味、もっとも理に叶っていると思」
「は? ちょ、な、何だって? ブリテン、新春かくし芸大会?」
「ええ、“ブリテン新春かくし芸大会”です」
穏やかな笑みを向けてベディヴィエール。はてしなくマスターの国の正月文化を思わせる言葉だが、冗談や私の聞き間違いではないらしい。
しかし初耳である。私が海賊連中と過ごしていた年末年始、円卓界隈でそんな催しが開かれていたなんて。
「かくし芸大会という名を冠していますが、皆の一年間の成果を見せる催しなのです。きっと、バーソロミュー殿に私達のことを知っていただく絶好の機会となりましょう」
真面目な彼の言葉は全面的に信用できる。
「でも、やはり気が引けるよ。どんな芸事が披露されるのかは知らないが、それは王のため、一年かけて磨き上げられたものだろう?」
「違うよ、バート。私達も披露するんだ」
「なん、だって?」
「この一年で私が磨け上げたものは、あなたとの愛だ。私はそれを
……
皆に披露したい」
実にパーシヴァル卿らしいお考えですね、と柔らかく微笑むベディヴィエール。いや、感動的な雰囲気を醸されても、私には全くわけがわからないのだが。
「愛を披露するって、何?」
「夫婦漫才だよ、バート」
「めおとまんざい」
「いつか見た、マスターのお笑いDVDコレクションにあっただろう。あれだよ」
「私も聖杯から知識を得ております。夫婦の息の合ったボケとツッコミ。流れるようなテンポに熟練の技を要するという高等芸能。身近なスキル持ちの方を挙げると、ジークフリート殿とクリームヒルト殿あたりでしょうか。新春かくし芸大会において、お二人の愛を示されるのにもっともふさわしい出し物ですね。実は、すでに円卓全員に許可を得ております。心置きなくご披露いただければと」
「
……
円卓は、揃いも揃って鬼畜なのか?」
「いえ。厳密な調査を重ね、お二人なら出来ると見込んだ上での発言です」
「調査?」
そこでふと思い当たる。時折感じていた、円卓の男達からの品定めするような視線は、事前調査の一環だったのかもしれない。
「エドワード・ティーチ殿との海賊あるあるコントは息もぴったりで、毎年とても好評だとか。噂を耳にした王もひそかに興味を示しておられました。そんなバーソロミュー殿であれば、漫才もきっとお出来になる。何より、芸事に明るい魔術師マーリンからの推薦がありました。これはとても稀有なことなのです」
「マーリン
……
!」
花の魔術師、マーリン。その名前を聞いた瞬間、ひどい動悸に襲われる。胸を抑えながら、掠れ声で問う。
「マ、マーリンも、来るのかい?」
「ええ。例年、彼が司会を務めていますから」
「
……
そう」
「千里眼を持つ彼は、古今東西、新旧問わず、たくさんの芸能を見てきた人物です。その彼が『あの二人なら出来る』と力強く言い切るくらいですから、心配することはありません。どうか、自信をお持ちになってください」
安心させるような口調と、優しい眼差し。
違うんだ、ベディヴィエール。私が動揺しているのは、そこじゃない。いや、アウェーな状況で漫才を披露することも、もちろん大きな気がかりではあるが。
「
……
マ
……
リ
……
見て
……
」
マーリン。かつて私達が巻き込まれた、“カルデア出られない部屋企画”の主催の一人。彼は、あの日、部屋で起きたことの一部始終を知っている
……
。
「あなたとなら、私はなんだって出来るよ。バート」
決意の面持ちで、パーシヴァルが頷く。
正気かい、パーシヴァル。私達のアレコレを知る男が、またしても私達にバカになれと促しているんだぞ。しかも今回は、ブリテンを代表する王や円卓の目の前で。
「どんな羞恥プレイだよ、まったく」
「やはり嫌、だろうか」
「嫌とかじゃなくて
……
ああ、もう」
しかし一度経験したことならば、二度目も同じ。
それに今回は周囲の了承を得て、準備期間まで設けられているというのだ。あの部屋を経た私達が、今更、何を躊躇うことがある。
私は息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
「
……
やってやろうじゃないか!」
新春かくし芸大会まで、あと一週間。
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