ここ
2025-12-30 15:20:20
18061文字
Public 小説
 

【リバリン】告白🔞

<2025.8.19初出>
リンクの告白から始まるリバ(←)リン。

【⚠️18歳以上のみ閲覧可】

 突然だが、リーバルはリンクに告白された。
 そしてリーバルはそれを振った。ことになっている、たぶん。

 というのも、リンクの告白がリーバルに「好きだ」と伝えるだけだったのだ。普段スカした顔をしているリンクがリーバルに思いを寄せていたこと、そしてその気持ちを伝えてきたこと自体にリーバルは驚きつつも悪い気はしなかった。悪い気はしなかったが、リーバルは反応に窮した。その先の、だから恋人になりたいのだとか具体的な言葉がない。好きだからなんなの。そんな気持ちだけを伝えられて、どうしろっていうの。そう、リーバルは思ったことをそのまま伝えた。だってそうだろう、リーバルのことが好きだと言うならリーバルがこんな告白を受けて「ありがとう。気持ちを教えてくれて嬉しいよ。これからもよろしくね」なんて当たり障りのない反応を返すことなどないとわかっているだろう。こんな時でも言葉が足りないリンクに苛立ったのもある。
 そんな捻くれた性格に直結した態度をとりながらも、先述の通りリーバルはリンクの告白を受けて悪い気はしていなかった。何ならちょっと、いや結構嬉しかったので、表面では突き放した態度をとりながらも内心浮かれていた。リンクが言葉の少なさを詫びてリーバルと恋人になりたいのだと縋るのなら、受け入れてやってもいいと思っていた。

「ごめん。ただ、伝えたかっただけなんだ」
「は?」
 照れ隠しも大いにありながら常の饒舌さで捲し立てたリーバルに、リンクがこれまた常の言葉少なさで返した言葉はリーバルの予想とは異なるものだった。リンクの顔はいつも通りの無表情で、一瞬言葉の意味を掴み損ねる。あれ、コイツ振られたと思ってる? とリーバルが気づいた時にはもう、リンクはリーバルにくるりと背を向けて去っていくところだった。リーバルの翼を持ってすれば、徒歩で遠ざかっていくリンクに追いつくことは難なくできる。しかしリーバルはそれをしなかった。
「なんだい、ちょっと言葉を返されたくらいでアッサリ引いちゃってさぁ……!」
 ちょっと浮かれて言いすぎてしまったかもしれないが、リンクに対してリーバルの当たりが少し強めなのはいつものことというか、形式美みたいなものなのに。それを真に受けて簡単に引き下がるなんて、きみの気持ちってその程度だったの。そんな風に胸の内に色々と思うところはあったが、ここで逆にリーバルがリンクに追い縋るなんてことはリーバルのプライド的にできるわけもない。リーバルに振られ(たと思い込んでい)ても顔色ひとつ変えないリンクの様子にもモヤモヤさせられた。なんで、僕がリンクにこんなに感情を振り回されなければならないんだ。
 そうは思ったものの、リンクの「気持ちを伝えたかっただけ」という発言こそ言葉の綾で、リンクだってあともう一歩を踏み出す勇気がなかっただけかもしれない。そんな風に考えたリーバルは、それからしばらくの間リンクがリーバルに再告白しやすいようにさりげなく二人きりの時間などを作ってみたりしたのだが、そんな展開にはならなかった。いつ見てもリンクは告白の前も後も普段と変わらない、何を考えているのかわからない無表情で淡々と自身の責務に向かい合っている。リーバルがリンクを観察しているからだろうか、何度か視線がパチリと合うこともあったが、リンクはリーバルを見てもただ目をそばめるだけで何の行動にも移さなかった。
 じっと観察していると、リンクだって常にまったくの無表情ではないということがわかった。気心知れた相手だとか、小さな子供、美味しい料理などの前ではフッと表情が緩むことがある。しかし、それがリーバルに向けられることはない。リーバルのことを好きだと言ったのに、その柔らかな表情をリーバルに向けないリンクが気に食わないし、そんな風に思ってしまう自分自身も気に食わない。
「何だったんだよ、あれ」
 突然の告白から数週間経った頃には考えるのもバカらしくなり、リーバルはそれ以上リンクのことを目で追うのをやめた。





 リーバルがとある噂を聞いたのは、厄災に対する備えを進める合間を縫ってリトの村へと里帰りをしている時だった。
「リト族を買うハイリア人?」
 数人の精鋭のリトの戦士に弓の稽古をつけた休憩中、木の実のジュースで喉を潤わせていたリーバルが眉根を寄せる。嫌な噂だった。とある馬宿に、時たま一晩を共にする相手を買い求めるハイリア人が現れるらしい。フードを深く被っているからはっきりとは顔はわからないが、金髪で小柄なハイリア人の男だという。旅の空で人肌が恋しくなること自体は珍しくもない。問題は、そのハイリア人の相手の選び方だった。フードから覗く口元だけ見てもそのハイリア人の容姿はそこそこ整っているようで、金もいらないからと一晩の相手に名乗りをあげる者はいたらしい。しかし、ハイリア人はその誘いを断った。相手はリト族の男でないとダメだと言う。しかも、リトの村には住んでいない、各地を放浪している旅人のリト族でないと。
「何それ」
 リト族は他種族と比べて圧倒的に数が少ない。その上で村に定住していない旅の者となるとそれなりに珍しい。珍しいが、まったくいないわけではない。ハイリア人はそんな旅人のリト族を見つけると声をかけ、金銭交渉の後に連れ立って馬宿の外の林の奥に消えていくのだという。馬宿のそばの林の中には、小さな小屋があった。個室になっていない馬宿で行為に及ぶわけにはいかないので、たいていの馬宿の付近にはそういう目的の小屋が設置されているのだ。
「誰かそいつを実際に見たことあるやつはいるの?」
「いや村の中では誰も……。なんせ相手は旅のリト族で、そのハイリア人と一緒に消えてしまうので。噂をしていたのも馬宿に居合わせた他種族の奴らなんです」
「ふぅん……
 どう考えても売買春としか思えないが、合意の上で行われているのであれば別に問題ではないのかもしれない。とはいえ、リト族にまつわるこんな噂が広がるのも良くない気分だった。リト族が性に奔放だと思われるのも癪だし、足のつきにくい旅人のリト族を選り好んでいるということ自体に、何かしら後ろめたい事情が隠れていそうに思える。それに、金髪のハイリア人が別にアイツしかいないわけではないが、『金髪で小柄なハイリア人の男』と聞くとどうしてもあの案山子のような男の姿が連想され、何となく嫌な予感がする。
「ちょっと調べようか。協力してくれる?」
「はい、もちろん! ありがとうございます!」
 噂話を持ってきたこのリトの戦士たちは、リーバルの申し出にほっとした表情を見せた。やはり、自分らの知らぬところで広がるリト族にまつわる噂に座りの悪い思いをしていたのだろう。
(だからこれはリトの同胞たちのためであって、僕の私情によるものではないからね!)
 誰に対してと言うわけでもなく胸の中で言い訳めいたことを宣言する。リーバルは脳裏にチラつく姿を追いやって、作戦についてリトの戦士たちと相談し始めたのだった。