集う光に虹の記憶を

MHRウ教×ハ♀。相思相愛。
ウ視点。

愛弟子の手を引いてどこかへ連れて行くウ教。
2025年クリスマスネタ。

澄んだ寒空さむぞらには、明媚な無数の凍星いてぼしがよく見えた。庭のように見知った里の周辺でも、とても新鮮な気持ちになれるほど絶佳ぜっかだ。

冬らしい、冷たく引き締まって乾燥した空気が漂う夜道で、こんなに心躍るのはいつぶりだろうか。
そんなことを思わず考えながら、俺は愛しいキミの手を引いて、軽やかに駆けていた。

「こっちこっち! おいで、愛弟子!」
「ふふふっ……もう、ウツシ教官! どこまで行くんですかっ」
「聖なる夜にふさわしい、とっておきの秘境さ!」

俺の言葉を聞いたキミが、寒さによる白息しらいき混じりに小さく笑う。少しばかり気障きざなことを言ってしまったかなと、鎖帷子くさりかたびらで覆われた俺の口元にも笑みがこぼれた。

今夜は聖なる夜。西洋の言葉を借りれば『クリスマス』という特別な日だ。そんな日だからこそ、愛するキミと行きたい場所。

大社跡との境界、竹林の道中をキミの手を引いて駆け続けるこの時間さえ、愛おしい。
俺が育てたのだが、気付けば強者ツワモノに成長したものだと実感できる手の感触。けれど──俺の手が包んでしまえば、キミの手は昔と同じように可愛くて、柔らかく、温かい。 

手の温もりに幸せを噛み締めていると、不意に竹林の景色が開けた。目的地に到着だ。夜の偵察任務の際に、偶然見つけることができた場所。
ぽっかり開けた、小さな広場のようなその場所の中央には、微かな星光だけの仄暗ほのくらさの中でも感じられるほどの存在感を放つ、太い幹の大きなモミの木が、どっしりとそびえ立っている。

「あの、ウツシ教官? ここは……

俺に手を引かれながら、興味津々に周囲を見回すキミの姿は、本当にとても可愛い。
キミの質問に、俺はあえて「ふふふっ」と笑うだけに留めた。この場所を、この場所に二人きりだという事実を、キミの目と心でたくさん実感して欲しかったから。

キミの興味は最初は空間全体に配られ、最終的には、やはり大きなモミの木に向けられた。
モミの木の全景を捉えられるような距離を考え、その正面で、俺はキミと共に足を止めた。

「さあ、着いたよ愛弟子!」
「ここが、とっておきの秘境……ですか?」
「うんっ! ふふ……もう少ししたら、秘境たる由縁ゆえんが分かるよ! ここに座って、あのモミの木を見ながら一緒に待とう!」
「むー、分かりました。何だろうなぁ……

先に俺がその場所に座り込むと、キミは不思議そうにしながらも、けれど素直に、大きなモミの木の前──俺の隣に、座ってくれた。

周囲の人気ひとけの無さも影響して、胸がとても甘く震える。同時に、星明りとはとても儚く幻想的で、懸命に健気に輝いているものなのだと再認識できた。完全に見えないわけでもない、安穏とした暗闇を与えてくれる。

俺もキミもハンターなので夜目よめが利くのもあり、心地良い仄暗さの中でもモミの木はもちろん、お互いの表情もよく見えた。キミの可愛いお鼻が少しだけ赤くなっているような気がする。

「愛弟子、寒くない? 寒冷群島ほどではないにしても、少し冷えてきたよね」
「そうですね、時間も時間ですし……っ、くしゅんっ」
「ああ、ほら! 大丈夫かい?」

小動物のようなくしゃみとは、まさに今のキミの、この感じ・・・・だろう。ちゃんと両手で口元を覆っていたキミは、軽くお鼻をすすりながら「大丈夫です」と答えてくれた。
そんな愛しいキミへの愛しさと不安、何より心配が入り交じる感情に複雑に胸を高鳴らせながら、俺は機を得たようにキミの肩へと片手を伸ばす。

「愛弟子、遠慮しないでもっとこっちに……俺の傍においでよ。俺、体温高い方だからさ」
「えっ! で、でも……あっ……!」

躊躇ためらうことなく俺はキミの肩に片手を添えると、少しだけ力を込め、ぐいっと自分の胸元に抱き寄せた。
慌てたように言葉を切って、照れたように顔を伏せたキミの頬が、お鼻より赤くなっていたのが見えた気がする。
あまりにも愛おしくて、俺の目尻は冬の寒さの中でもとろけ落ちた。

……ね? どう? 愛弟子。俺、温かいでしょ?」
……は、い。すごく……
「良かった。じゃあ、この間に……
「えっ?」

冷たい冬の外気に晒されて冷たくなっていたキミの肩に、手の平から温もりを分けながら、俺は「んふふっ」と小さく笑う。

笑いながら、空いていた片手を腰裏の小さな革鞄かばんにそっと差し入れた。中にあった小箱の形を指先で確かめてから、俺はそれを手の平に乗せ、ぱちぱちと不思議そうなまばたきを繰り返していた可愛いキミの前に差し出す。

「じゃーん! はい、愛弟子! メリークリスマス!」
……えっ!?」

真ん丸に見開かれたキミの目が、俺の顔と俺の手の平の上の小箱を交互に見つめる。その様子はずっと見つめていたくなるほど、愛くるしくてたまらない。

「あ、あの……ウツシ教官、これは……
「俺からの気持ち。大好きなキミへのクリスマスプレゼントだよ、愛弟子。いつもありがとう。良かったら、受け取ってくれるかい?」
「え……ええ……!? う、嬉し過ぎます……!こちらこそ、本当にありがとうございます……! ありがとう……ございます……!」

感極まったように繰り返しながら、キミは両手で、俺の差し出した小箱を受け取ってくれた。
夜空のような瑠璃紺色るりこんいろの箱に、天の川のような白銀の組紐が結ばれたそれを、キミはとても幸せそうに見つめてくれて──やがて、俺の方に顔を向けてくれた。

……あ、あの、ウツシ教官! わたしも、家にあるんです! あなたへのクリスマスの贈り物!」
「えっ、そうなの!?」

まさか、こんな形で俺が驚かされるとは思わなかった。キミの肩を抱き寄せる幸せと重なって、俺の表情に至福の笑みが宿る。

「ふふふっ、それは、嬉しいなあ……! ありがとう、忙しいのにわざわざ用意してくれて」
「もう、それは私こそですってば。ただ、ごめんなさい、今ここにはなくて……!」 

申し訳なさそうに目を伏せたキミの頭を、キミがクリスマスプレゼント受け取ってくれたおかげで空いた片手で、優しく撫でる。
今ここに用意できていない理由は、俺が誰よりよく分かってる。当たり前だ。採取依頼から帰って来たばかりのキミの手を引いて、ここへ来てもらったのだから。

「気にしなくて大丈夫だよ、愛弟子。ごめんね? 俺が無理に引っぱって、来てもらっちゃったから……
「そ、それは全然、良いんです! あんな風に連れて来てもらえたの、何だか新鮮で……嬉しかったですし……!」
「えっ?」
「い、いえ! 何でも! 何にせよ後で、その、水車小屋に来てもらえませんか?」

照れたような様子のキミの瞳の中には、微かに不安が揺れている。
一刻も早くキミの中からそれを取り払いたくて、キミには笑っていてほしくて、俺はすぐに「うん!」と、大きく頷いた。

「ありがとう、愛弟子! じゃあ、後でお邪魔させてもらうね? ふふふっ、一緒に帰ろう!」
「はいっ! えへへ、この後の楽しみも増えました!」

最愛のキミの笑顔が幸せそうに、ようやく、先ほど両手で受け取ってくれた、俺からの聖夜の贈り物に向けられる。

「箱もすっごく可愛いですね! この大きさは……何だろう……!? 開けて見ても良いですか?」
「もちろん! よ、喜んでもらえるといいんだけど……!」

少し緊張して、せわしない音に胸を高鳴らせながら、俺はキミの指が楽しげに箱に結ばれた、白銀の組紐を解いていく様を見届ける。
瑠璃紺色の小箱の蓋が、キミの手によってゆっくりと開けられて──キミの瞳に、七色なないろの光が灯った。

@acadine