最近、フリンズの姿を見ない。
あの出来事から、避けられているようで。
…あの様子だと、俺の気持ちに気づいたのだろう。
でも、フリンズも顔を真っ赤にしていた。
もしかして、という淡い期待と、避けられてるという事実からフラれるかもしれない、という考えを何度も過らせている。
そんな状態で仕事をしてたら、手がつかなくなってきて。
「いい加減告白してきなよ」
アルベドにそう言われて、強制的に非番にさせられた。
────────
何もしていないときに、あの時の出来事が脳裏に浮かぶ。
子供のように照れていて、熱が籠った瞳で、僕を見ていた。
まるで、僕の事を好きだ、そう態度で伝えてきて。
ファルカさんが、僕の事を好きかもしれない。
違う、違う、違う! 告白された訳ではない!
なんで、今も動揺しているんだ!
幸いな事に仕事をしていれば忘れられるため、ワイルドハントに八つ当たりと言う名の討伐を繰り返す。
ナンジャタウンの物資の買い出しもイルーガに任せ、極力ファルカに会わないようにしていた。
たくさん仕事をしていたら、ニキータから働きすぎと注意を受けた。今日は強制的に非番にさせられた。
…ファルカが、ここに来るかもしれない。
だが、ちゃんと作戦も考えてきた。極力ランプの中に籠り、イルーガが物資を届けに来たときだけ出ればいい。
さすがのファルカも、留守中に地下の個室に来ないだろう。
「フリンズさん、物資のお届けに来ました!」
イルーガの声だ。安心して扉を開ける。
荷物を抱えたイルーガとファルカがいた。
思わず扉を閉めたいが、イルーガのいる手前、そんなことはできない。
「最近、物資の量が多くて、ファルカ大団長が手伝ってくださったんです!」
「お、俺も非番でな」
「
………アリガトウゴザイマス」
言葉が固くなってしまったが、なんとか表情を取り繕い、お礼を伝える。
物資を仕舞い、イルーガは帰った。残されたのは、僕とファルカで。
「
………」
「
………」
顔も合わせず、無言になる。なにもしていないのに、顔が熱くなる。
「
………その、少し歩かないか?」
そう言うファルカも顔が真っ赤だった。
──────
夜明かしの墓にある砂浜を歩く。
静かなここでは、二人の砂浜を歩く音も響き渡る。
「
………あのな、その
………」
耳まで真っ赤にして、言葉を紡ごうとしている。
…これは、告白されるのでは?
咄嗟に身体は逃げの姿勢に入る。
走りだした僕に気付き、ファルカが追いかける。
風元素の神の瞳を授かった人から逃げ切れる訳もなく、すぐに腕を掴まれる。
「す、好きだ!!!」
こくはく、された。
「フリンズの美人な所も、かわいいところも、所作が綺麗なところも、酒が好きなところも、子供が好きなところも好きだ!!!」
夜明かしの墓に響き渡るくらいの大声で、僕に告白し、好きな所をいっぱい話す。
あまりの恥ずかしさに、あたまが、パンクする。
脳ミソが沸騰するかもしれない、そんなタイミングで
「フリンズさーん、すみません、報告書受け取りを忘れてましたー!」
イルーガの大きな声が響く。
思わず、二人とも身体が固まる。
この状態をイルーガに見られる訳にはいかない!
今までに見たことない速度で手を振りほどき、自室に籠る。
「あれ、フリンズさんは?
…ってファルカさん大丈夫ですか? 耳まで真っ赤ですよ」
「えっ、あっ、いやっ」
「はやくナンジャタウンに戻られてはいかがですか?
この時期はよく冷えますし」
「
………そうだな」
やけに落ち込んだ声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
イルーガのお陰で助かったが、なんとかして顔を覚ますために、桶に水をはり、顔を洗う。
『す、好きだ!!!』
…こくはく、された。
再び熱くなった顔を急いで覚ますため、桶の中に顔を突っ込んだ。
その日は、珍しく報告書を真面目に取り組むフリンズだった。
──────
それからというものの、ファルカと会えなくなった。
ワイルドハントが活性化し、討伐に追われ忙しくなった。
ファルカも、西風騎士団で大がかりな調査が入ったと聞いた。
…こくはく、された。
一人でいるときに、ファルカの告白を思いだし、水に顔を突っ込むようになった。
告白を受けたからには返事をしなければならない。
ファルカの事を考えると、わからなくなるのだ。
何も考えられなくなる。
決して、好きという訳ではない。絶対に。
ヒーシ島にワイルドハントが発生したと連絡を受け、討伐に向かう。
手際よくワイルドハントを討伐し、帰ろうとした時に、ファルカの姿が見えた。
思わず身体が強ばるが、ファルカの隣にはラウマがいた。
「
………」
ファルカは男らしい身体に、宝石よりも美しい瞳を持ち、大団長にふさわしい実力を持っている。
そんな男には、ラウマのような美女がぴったりで。
時おりファルカが笑っていた。ラウマも微笑んでいる。
…誰から見ても、お似合いな美男美女の図で。
『す、好きだ!!!』
こくはくしてくれたのに、どうして。
暗い感情が渦巻く。
動いた方がいいのに、足が棒のようになり動けなくなる。
「フリンズ、大丈夫か?」
気がついたら、ファルカが目の前にいた。
ラウマの姿を探すと、先ほどの場所にいた。
目線が合うと、会釈して去っていった。
「熱はないな、脈も大丈夫そうだな、顔色は
…さっき見たときより大丈夫そうだ」
ファルカは僕の体調を心配してくれた。
先ほどの暗い感情が消えている
…?
疑問に思うがそれどころではなかった。
ファルカが、目の前にいる。
「体調、大丈夫か?」
「
………ええ」
「その、もし大丈夫なら、そこで話さないか」
「
………」
無言で頷く。
ファルカに手を繋がれて、歩く。
何度も逃げたからだろう。今は逃げる気力がないけど。
繋がれた手が熱い。大きくて、熱くて、硬い手。
手袋の内側で汗をかく。
手汗に気付かれないか心配していたが、ファルカの手も汗をかいていた。
前を歩くファルカを見ると、耳まで真っ赤になっていた。
人気のない砂浜に着く。
ファルカは僕の両手をつかむ。
ファルカは真っ赤になりながら、視線を合わせて言った。
「できたら、告白の返事を、聞かせてほしい」
こくはくの、へんじ。
僕は、恋などしていない、はずだ。
だから断らないといけない、そのはずなのに。
「
…わからないです」
視線に耐えきれなくなり、顔を伏せながら答える。
ファルカから息を飲む音が聞こえる。
でも、ほんとうにわからないのだ。
「あなたのことを考えると、心臓がドキドキして落ち着かなくなります。顔が熱くなるんです。なんなんですか、これ
…」
そう伝えると、ファルカの優しい声で名前を呼ばれる。
ファルカの顔を見ると、真っ赤になりながらも嬉しそうに、蕩けるような笑顔で。
「俺も同じだ。恋ってもんはそういうもんなんだ」
「
…これが、恋なんですね」
ファルカは僕の両手を握る。互いの手汗で、手袋が滑る。
僕の目を見つめながら、真剣な表情をで言った。
「フリンズ、好きだ。返事を聞かせてくれ」
「
………………はい」
消え入るような小声だったが、ファルカには届いたようだ。
強く、抱き締められる。
ファルカの熱、身体の厚み、匂い、全てがダイレクトに伝わってくる。
脳が、沸騰する。
「おい、フリンズ? っフリンズ!!」
ファルカの声を聞きながら、僕の意識は暗闇に落ちた。
──────
フリンズが恥ずかしさのあまり、知恵熱をだし、ダウンした。
それを知ったアルベドは、似た者同士でお似合いだが、カップルに爆弾を投げたくなる気持ちを初めて理解した。
前途多難な恋が始まり、大団長からの下らない相談をされるであろう未来にため息を吐いた。
妖精は騎士の扱いに手を焼く④ | Privatter+
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