第1話【宣戦布告】4/7(月)

黒薔薇のトリカゴ第1章。





……その頃3-3の教室前では、二人の女性教師が困り果てていた。

「またやってるわね相馬そうまくん。あの無鉄砲さ、一年生の頃から変わらない」

はぁ、と呆れたように微笑むのは皐月さつきなえ。日本史担当だ。温厚で面倒見が良く、アクティブで開放的な性格は生徒教師問わず厚く慕われている。

「わ、私、上手くやっていけるのでしょう、か……?」

皐月のそばで小動物のように縮み上がり、自信なさそうに目をきょろきょろとさまよわせているのは、雨野あめのこずえ。古典担当。教師歴二年で、今年天稟高校へ転任してきた。
彼女は(不運にも)3-3組の新しい担任として任命された。

皐月と一緒に教室の中をドアのガラス越しに覗く。
入ってすぐの場所で二人の男子が睨み合っている。どちらも教師陣の手を焼かせる問題児だ。相馬れんは校長室にしょっちゅう呼び出されているし、空木うつぎ朔叶さくとは呼び出しを受けることは無いが取っ付きにくい性格をしており扱いづらい。そんな彼らの扱いを唯一心得ている教師は皐月だけだった。
しかし皐月が受け持つクラスは3-1。比較的落ち着いたクラスである。どう考えても雨野と担任を交換した方がいいが、すでに決まったものは変えられなかった。

「でもね、どちらも根は悪い子じゃないのよ」

苦し紛れな気休めにもならない言葉に雨野はすでに泣きそうだった。この風景を見せられた上でその言葉は信用ならない。
一年後、いや一週間後にはこの学校から姿を消しているかもしれない。そんな予感だけが心の中で強く主張していた。