【プロローグ】4/7(月)

黒薔薇のトリカゴの始まり。





僕は幼い頃、泣き虫だった。
悲しいときや嬉しいとき、心が少しでも揺さぶられるとすぐ涙が出た。一度涙が出るとそこからなかなか止められなかった。
親に心配をかけたくなくて、いつも人が来ない場所でひっそり感情が落ち着くのを待つ。
――それでも一人だけ、僕を見つけてくれる子がいた。

「さく、泣いてるの?」

背中を丸めてひぐひぐ嗚咽を漏らして泣いている僕を、黒くて長い髪の女の子――幼馴染のふみちゃんがそっと抱きしめてくれた。ぽんぽんと心地よい手つきで背中や頭を撫でてくれる。

「よしよし、大丈夫だからね」

同い年とは思えないほど優しく温かい声音は、子守唄のように心に染み渡る。
触れ合った身体から伝わるぽかぽかした体温に頬が緩むのを感じた。
次第に涙も嗚咽も止まり、小刻みに震え続けていた肩の動きも落ち着く。自力ではどうにもできなかったのに。まるで魔法みたいだ。

「ふみちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」

素直に感謝するとふみちゃんは優しく微笑んでくれた。その後も涙が完全に止まっても、僕たちはしばらく抱きしめ合っていた。
何年経っても大切な、幼い頃の記憶。