河童の皿箱
2025-12-18 08:51:54
5371文字
Public 遊戯王:短め(2025年度)
 

真空管より

真空管から救出されたブルノがP.U.N.K.に預けられるだけ



 皆が寝静まる頃。屋根裏の神々は眠ることもない。片や、兎を連れた幽鬼。片や、呪われし雷神。寝の番を頼まれているわけでもないが、棲みついて以降、自主的にこの家を守っている。いつも通り、酒でも取りに行こうかと雷神が立ち上がれば、幽鬼が指をさす。
 とつんと閉まる玄関と、外に出た能楽師。はて、どこへ行くつもりだろう、隠れてすすいと追ってみれば、外の稽古場には、傷だらけの鎧を着込んだ男がひとり。あぁ、あれかと。見慣れた姿にふたりはひっこんで、屋根裏部屋に戻っていった。

 さて、そんな鎧の男のもとへ向かった能楽師。闇にまぎれる、けれど山のような巨体は、適当な腰掛にずんと座り込み、顔も見えぬ兜の口元が動いた。「また来たのか」、と。「それは、こっちも同じ」と返せば、鎧の男は黙り込んだ。
 「ねえ、会いに行かないの?」。その隣にちょこんと座って、巨体を見上げれば、けれど黙り込んだままで。「ブルノ、あなたの仲間でしょ」。さらに問いかけを続ければ、巨体は肩を落とした。「そうだ。だが、今更だろ」。長い長い沈黙の末に吐き出した、諦めのようななにか。能楽師はそれを聞いて何を言うでもなく、空を見上げた。
 月のない夜。世界を跨げば、違う空。ざあと冷たい風が吹けば、能楽師はふと、「そうだ」と風の知らせを呟く。
 「あのね。他の真空管からも、あなたのような人が見つかり始めてるんだって。十字鎧の、ヒトと獣人」。そんな言葉に、鎧の男は再び目を向けた。「誰が見つかった?」。その問いに、能楽師は目をつぶった。「セアミンは、詳しいことを知らない。どこまでいっても、どこまでもいく、神風の噂。それに、あなたがいちばん知ってる。あなたが、いちばん近くの人」、と。鎧の男は額を押さえた。「それもそうだ」、と。
 「それに、セアミンはブルノを気に入った。このまま合わないなら、ブルノは貰っちゃうかも」。なんて微笑めば、けれど鎧の男は胸ぐらを掴もうとして、躊躇し、そしてやめる。「言うならもっと面白い冗談にしろ」、と。「真に受けた?」。覗き込めば、「黙れガキ」と目を逸らして、膝に肘を載せ、顔を覆う。「どのみち、執着してんのは俺なんだ。あの頃に戻れるかもなんてバカバカしい夢を、少しでも信じようとしてんのが、心底馬鹿げてる」。
 「あなたは呼びかけに応えてくれる。それは確か」。「ブルノが俺を呼んだならきっと俺は、その時も答えちまうんだろうな」。すうと、深く息を吸って、深く、深く、ため息を吐く。じっと黙って、じっとこらえて、けれど、言葉を吐き出した。「ただひたすら突っ走ってるだけで良いなら、それがいちばん楽だ。気に食わないやつをぶった切って、いらねぇ雑魚を切り捨てて、どのみち、俺たちはひとつにまとまるなんてできねぇよ」。そんな言葉に、能楽師は首をかしげては、けれど誰に言ったわけでもないのだろうと、沈黙する。

 そうしているうちに、体が冷えてくる。能楽師は立ち上がり、「じゃあね」と。立ち去る小さな背中を、ただじっと見つめては、鎧の男は苦悩した。

「俺たちの結束とやらは、結束じゃねぇ。ただ行き場を失った暴れ者が、同じ名前を掲げて暴れまわってただけだ。それを今になってどうしろってんだ。こういうことは、あいつの方がずっと