もん
2025-12-07 22:45:08
5482文字
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経年劣化

VOIDのHO4秘匿内容あり



「なぁ、レオってなんでいつも手袋してるんだ?」

くおにそう問われたとき、何故か咄嗟に言葉を並べることができずに、少しの間が空いた。

表面温度、いえ、体温が、冷たいので」

「そんなこと気にしてたのか?俺は別に、そんなの気にしないけど」

そう言って私の手を取ったくおは不思議そうに首を傾げて、別にそんな冷たくないじゃん、なんて言うものだから、言葉に詰まる。
こういうとき、どうすればいいのか、いまいちわからない。

何故、そんなことが気になるんですか?」

「え、いや、うーん。いつも着けてるから、なんかあんのかなって。でもレオ、俺たちから触られるのも、俺たちに触るのも、ヤなわけじゃないだろ?だから、なんでかなって」

……皆には、できる限り秘密にできます?」

そう問いかけるとくおは嬉しそうに目を輝かせて、すぐに表情を取り繕って当然だろと頷いた。何故、そんなに嬉しそうなのだろうか。疑問に思いながら、諦めて手袋を取る。

「関節部分が、人形のような球体関節になっていて、人間みがないので、見えないようにしているんです。それに、ちゃんと冷たいですよ」

そう言いながら、くおの頰に手を当てると、くおは突然の冷たい感触に驚いたのか、悲鳴をあげて飛び上がる。
ほらねと思いながらくおの頰から離そうとする私の手を、くおの小さい手に取られる。

「へぇ〜、レオの手ってこうなってたのか。初めて見た。もっと見せてくれよ」

この部屋に私とくおしかいないせいか、いつもよりも素直なくおにそう言われると、大人しく従う以外できない。そもそも、私は彼等のお願いは全て叶えてあげたいし、何も否定したくはないから、勝敗なんて最初から決まりきっている。何が面白いのか、両手で私の手を抱えてまじまじと観察するくおに、この人間みのない手を気味悪がられないか、不安だった。

「レオの手、キレイだな。何で隠してんだ?もったいないオバケでてこないか?」

当然のような顔をして、私の手を綺麗だと宣うくおを見て、呆気に取られた。くおの瞳や表情をいくら観察しても、素で言っているとしかわからずに困惑する。

「あ、てか、なんかインク?滲んでね?なんだこれ」

「あぁ、もう滲んでしまっていたんですね。まぁ、書いてもらってすぐに手袋をつけてしまいましたし、手袋の裏地に移ってしまってるかもしれません」

「書いてあ!もしかしてお揃いの数字か!?消えちゃったのか!?俺たちとお揃いなのに!?」

途端に騒がしくなったくおに、若干の申し訳なさも抱きながら弁明する。

「まぁ、私の素材との相性が良くなかったのか、インクがうまく定着しない状態で手袋を着けてしまったので、仕方ないです」

「俺たちが頼んだらレオは書いてくれるじゃん。レオが頼んでもココロは書いてくれるだろ」

「いえ、また書き直して貰ったところで、同じことの繰り返しでしょうし、私の手にインクは長く残ってくれないみたいですから」

「レオは、俺たちとのお揃い、嬉しくねーの?」

そう不安げに問うくおを見て、しまったと焦る。そんなの、嬉しいに決まってる。慌ててくおを慰めようと手袋を戻すのも忘れたまま、膝をついてくおの頭を抱き寄せる。

「嬉しいですよ。とても。だからこそ、記録に残しています。ここに、数字があったことを、記録の中に刻みます。なので、例えインクが消えても、私の手の甲には数字がちゃんと刻まれていたことを、くおも忘れないでくださると、もっと嬉しいです」

ん。わかった。ぜったい、忘れてやんねーから、レオも忘れんなよ」

「はい。もちろん」

微笑んで頷くと、おずおずとくおの手が私の首に回ってくる。縋るように私を抱きしめながら、微かな声でくおが何かを呟いた。

……今日のことも、俺のことも、忘れんなよ。レオ」

「くお?」

「なんでもねー。あ、そうだ」

何かを思いついたような顔をするくおに首を傾げていると、未だに手袋をつけ忘れたままの人形のような手を取られる。

何をするのかと眺めていれば、くおを何かを企んでるなのような悪戯げな笑みを浮かべた後、インクが滲んでいたほうの手の甲に口付けた。

「え、ちょ、汚いですよ。インク、口に含んでませんよね?」

「汚くねーし!」

拗ねたようにそっぽを向くくおの耳が赤く染まっているのが見えて、何をそんなに照れているのだろうと疑問に思っていたら、そんな疑問が見抜かれたのか、口をつんと尖らせたくおに怒られてしまった。どうやら、何か反応を間違えてしまったらしい。