呪里
2025-12-05 18:37:16
10791文字
Public Code_Abyss 小話
 

〈思い出を紡いで〉

魔島姉妹と零の過去の日のお話(+現代ちょっと)


 「………遅いな、ボス」

 朧を含めたAbyssの幹部達は、月に一度行う会議の為に、会議室に集まっていた。

 しかし、会議を始めるにはあと一人、ボスであるゼロがまだ来ていなかった。

 「ボスからなんか連絡きとるか?」

 「いいえ?なぁんにも」

 『………

 荊からの問いに柩は答え、類はブンブンと首を横に振った。

 「いつもなら何かしら連絡あるんだけどな

 もしかしたら危険な目にあっているのではないかと、四人は不安になっていた。
 
 「電話かけてみる」

 そう朧が呟き、スマホを手に取る。

 すると

 ガチャ

 会議室のドアが開いた音がした。

 四人が一斉に振り向くと、そこにはゼロが立っていた。

 「ボス!」

 「………遅くなってごめん」

 ゼロは顔を下に向けながら小さく呟いた。

 「ボス、心配したのよ?」

 「せや。遅くなるなら、メールでも電話でもせなあかんよ?」

 「うん……

 柩と荊が声をかけるが、ゼロの表情は暗く、ずっと下を向いたままだった。

 「ボス?」

 朧はゼロの前まで歩き、しゃがみこんでそっとゼロの右手に触れた。

 「なにか、あったのですか?」

 「………

 ゼロは朧と目を合わせ、じっと見つめた。

 「貴女にそのような暗いお顔は似合いませんよ。お困り事があるのでしたら、遠慮せずに俺達を頼ってはくれませんか?」

 朧は微笑みながら、ゼロに語りかける。

 「……会議に遅れた事、怒ってる?」

 「いいえ?俺達は怒ってなんかいませんよ。ただボスになにかあったのではないかと心配で」

 「そっか……

 ゼロは少し考え込み、全員と視線を合わせるように顔を上げた。

 「じゃあ……一個助けてほしい」

 「はい、なんなりとお申し付けください」

 貴女からの願いを断るはずがないと、四人はゼロに向けて微笑んだ。






























――――――――――――――――――――

 「これは……

 「随分とボロボロやなぁ

 会議室の机の上には、所々布が破れ、中から綿があふれ出ている年季のはいっためんだこのぬいぐるみが置かれていた。

 「ボス何をどうしてこんなになっちゃったの?」

 柩が不思議そうに問いかけると、ゼロは眉を下げながら答えた。

 「外いい感じに晴れてたから、天日干てんぴぼししようとしてベランダに出した瞬間カラスにやられた」

 不服そうに口を尖らせてるゼロをなだめるように、荊はゼロの頭をよしよしと撫でる。

 「そら災難やったなぁ」

 「それ捨てたくないからさ、類とか柩なら直せるかなって思って」

 類が破れた箇所に触れて、直せるかどうかを確認してみる。

 『うん。これくらいなら出来るよ』

 「ほんと?」

 『ほんとほんと。ただ、道具はあるけど中に入れる綿がちょっと足りないかも』

 類がスカートのポケットから小さいケースを取り出すと、中には針と糸が入っていた。

 「随分準備がいいんだな」

 朧が呟くと、柩が自慢げに答えた。

 「そりゃあ、いつ誰の服がほつれたり破れたりするか分からないからね?備えあればなんとやらよ♩」

 「なんで柩がドヤ顔なんだよ……

 やれやれと少し呆れた顔の朧の横で、類はいそいそと準備を始めていた。

 「えと、綿を用意すればいいんだよね」

 『うん。ボスの好きな材質のやつで大丈夫だよ』

 「わかった」

 ゼロは机に手を乗せると、両手から溢れてしまう程の量の綿を創りだした。

 「元々入ってたの多分こんな感じの感触だと思うんだけど足りる?」

 「えぇ、充分足りるわね」

 「よかった。じゃあ、会議が終わった後に縫ってもらってもいい?」
 
 ゼロがそう伝えると、幹部四人は互いに目を合わせ、フッと笑った。

 「いいえ、今やっちゃいましょうよ。ねぇ類?」

 柩が問いかけると、類は笑顔で頷いた。

 「えっでも会議は?」

 「会議なんて、やろうと思えばいつでもできますよ」

 「せや。それよりも、今の俺らにはボスと、こっちの方が大事や」

 幹部達から予想外の言葉を受け、ゼロは少し戸惑ってしまう。

 「みんな会議の為に時間開けてくれたのに、これのために潰すのはちょっと気が引けるっていうか

 再び下を向いてしまうゼロを見て、朧はある事を思いつく。

 「でしたら……このぬいぐるみの事を教えていただけませんか?」

 「えっ?」

 困惑するゼロに、微笑みながら朧は続けて話す。

 「先程、ボスは捨てたくないとおっしゃっていましたよね」

 「うん。言った」

 「こちらのぬいぐるみ、ただめんだこだからという理由で捨てたくないと言った訳ではなさそうなので。よければ、直している間、ぬいぐるみとボスのお話をお聞きしたくて」

 「あら、いいわね。私も気になるわ」

 「俺も。ええかなぁ、ボス?」

 四人から期待の視線を向けられ、ゼロは一瞬考え込んだ。

 「ん。まぁ、みんなが聞きたいなら、話してもいいよ」

 「ほんま?」

 「うん。でも、つまんないかもよ?」

 「そんな事言わないでちょうだい?ボスのお話でつまらないと思った事ないんだから」

 柩ににこやかに返答をされると、ゼロは少しほっとしたような表情になった。

 「そっか。じゃあ、これの事とか、少し昔の話をするね」

 ゼロは小さく深呼吸をすると、ぬいぐるみに視線を向けて話し出した。

















 「それね、先生に初めて買ってもらったやつなんだ」