雨の花

【邪神の弁当屋さん】お弁当の日で謹慎処分中実りと死の神のところに噛みつきリンゴちゃんが遊びに行く話。


身の上話、とまではいかないが似たような境遇に親近感を抱いたのかサティは事あるごとにレイニーのもとに訪れ院での出来事を話にやってきた。
「(……懐かれている。いや、気を使わせているが正しいか)」
別れ際のお約束になりつつある抱擁。
未だに家族のように抱きしめるのがこれで合っているのか分からない。だが、回数が増えるにつれマシになっている――かもしれないと言い聞かせている現状に目を細めた。添えるだけだった腕を小さくて幼い背中に回した手でごわつきが無くなって指通りの良くなった髪を撫でつける。
家族を失った悲しみに寄り添うサティの手に宿る感情は、そっくりそのまま彼に返ってくる。まさに鏡合わせの思い遣りに溢れた慰めにレイニーは日に日に抱きしめる時間を伸ばした。それをサティが言葉にして望んだわけではない。が、毎度別れ際に後ろ髪を引かれている面貌を見送ればいくら察しが悪くても分かる。

「また来るっ」
日が暮れても院に返って来ないサティを心配して迎えに来たライラックの隣を歩き手を振るサティにレイニーも軽く手を振り返す。サティの隣を歩いているライラックの旦那の顔がやれやれ色に染まっているが、それも何処か嬉しそうに見えた。二人の背中が見えなくなるまで見送ったレイニーは家に入り玄関先に飾られた淡い桃色の花を眩しいものを見るかのように眺め、緩やかな花びらの輪郭を指で撫ぜ微笑み。
「(これ帰ってきたダリアが見たらウキウキで新しい花瓶買ってきそう)」
胸中独り言ちた。
花の色や形に合わせ増えた花瓶の数は晴れて次で両手になる。
サティが持ってくる花を実はダリアも楽しみにしている、とこっそり伝えようかと思ったが結局見送った。もとい伝えなくてもとっくにバレていそうな気がしなくもない。
くすっと笑ったレイニーは、可愛らしい桃色の客人に就寝の挨拶を掛け玄関を後にした。