雨の花

【邪神の弁当屋さん】お弁当の日で謹慎処分中実りと死の神のところに噛みつきリンゴちゃんが遊びに行く話。

院の暮らしは慣れてしまえばこっちのもの。
ひとつ屋根の下。自分と同じく身寄りのない幅広い年齢層の子供たちとの共同生活は、時たま起こる衝突と仲直りを経て気の置けない仲間を増やしてくれる。
何だかんだそこまで悪くない暮らしだが、皆よりも早起きしなければならない朝当番には毎度寝ぼけまなこをこすり起きていた。習慣化した身に沁み込んだ動きでベッドを整え、軋む床板の上を忍び歩きで進み薄暗い寝室を抜け出す。
……ねむい」
調理場に行く道すがら等間隔で設けられている窓から差し込む朝日のタイルに落とした視線が何かに呼ばれるように窓の外に引き寄せられた。

四季の彩りを感じさせる花壇の中、和気あいあい咲き誇る花々の鮮やかさに目を瞠る。
しとしと夜遅く降った雨がまばゆい朝日を吸い込んで光るしずくが空に輝く星に見えた。

淡い天色の花びらから滴る流れ星を行く先を無言で眺め追い嵌め込みの窓に手を伸ばす。ひやり冷たいのも気にもせず、不規則に揺らめくガラスに映る自分の姿に重ねるように額を押し付けた。
実際に触れているわけでも届いているわけでもない。ガラス越しに花を撫でる指先から奏でられる無色透明な音色は奏者以外の耳に届かない。
――ティ」
調理場の方向から微かに聞こえる自分を呼ぶ声にハッとした。遅刻する焦燥感が顔に滲む。
その内賑やかになる静寂がまだまだ現役な朝方の廊下でサティは遅れた分を取り戻すため調理場に駆け足で向かった。