【シャアム】Road Trip!

シャア×アムロ。現パロ。ふたりで運転して旅行に行く話の詰め合わせ。今後もっと増やしたい。シャアムwebオンリーにて書かせてもらいました。


2.


 シャアは赤い彗星と呼ばれている。
 隣で真っ赤なレクサスを走らせる男は機嫌がいいようだ。緩やかに口の端を上げてハンドルを握っている。今にも鼻歌を歌い出しそうな顔をして。何かいいことでもあったのだろうか。面倒だから聞かないが。
 快晴の下、走行する車がまばらな高速道路を走っている。左側にはしばらく高くて薄い膜のようなコンクリートの壁が景色を遮っていた。強い海風を遮っているのだ。
 ついさっきSAで買ったコーヒーを啜ると、シャアがちらりとこちらを見た。サングラス越しの瞳は何か言いたそうだ。
「言いたいことがあるなら言え」
「随分と暇そうだと思ってな」
「まあ……景色は変わらないし、一本道だしナビの必要はないし、隣のヤツは不気味だし」
 心外だったのか男は再度こちらを見た。前を見ろ。
「失礼な男だ」
「君と出かけるのを喜んでいるのだよ。なんともいじらしいではないか」
 すらすらと本音か嘘か分からないことをシャアはのたまった。
「自分で言うヤツがいるか」
 失笑するしかない。
「寝てないだけありがたいと思え」
 我ながら傲慢だと思う。人に運転させておいてよく言う。俺がシャアの立場だったとしたら……いや、運転そのものが楽しいから相手が寝ていようが起きていようが問題じゃなかったな。同じく運転が好きなシャアも同じだろう。
「そうだな、君が寝ていたら寂しいな」
……気色悪い」
 くっ、とシャアは喉を鳴らした。
 予想通りの返答だったのだろう。お喋りなこの男は言葉遊びが好きだ。俺が寝ていたらこういった暇潰しができないから、退屈だろう。
「海だ……!」
 壁が終わり景色が拓けると、初夏の海が美しく輝いていた。波が浜辺に緩く覆い被さって、引きずる。
 海は好きだ。
 意識が海に引かれる。
 たまらずサイドガラスを下ろすと薄まった潮風が勢い良く髪を嬲った。まだ涼しい風は心地良さでもって肌を撫でていく。
「君は薄情だな」
「何?」
 振り向くとシャアは前を向きながら口を引き結んでいた。男の金髪も同じく風で揉まれ、陽の光を反射して海と違った輝きを見せる。女は放っておかないだろう。
「私との会話より海に執心するとは」
 ふざけているのか、この男は。
 今回は冗談だと分かる。
「海に勝つ気でいるのか?」
 鼻を鳴らして馬鹿にすると、不機嫌な男から次のSAの名物であるソフトクリームの説明をくどくどとされた。だからなんだ。食べたいなら気の済むまで食べればいいだろう。
「察しの悪い男だ」
 そう言ってシャアは呆れたが、この男の言いたいことが分からなかった。言いたいことがあるなら、はっきりと言えばいい。この男は外見だけだ。女が今の台詞を聞いたら百年の恋も醒めるだろう。