【シャアム】Road Trip!

シャア×アムロ。現パロ。ふたりで運転して旅行に行く話の詰め合わせ。今後もっと増やしたい。シャアムwebオンリーにて書かせてもらいました。

1.


「次は?」
「ふたつ目の信号を左だ」
「ん」
 アムロは小さく頷いてバックミラー、サイドミラーに目をやった。後続車はいない。ウィンカーを出して車線変更し、赤信号で車を止めた。青になれば左折。平日の昼下がり、この田舎道には車はほとんど見かけない。
 彼の運転する車は白のステップワゴンだ。
 後部座席やトランクは、ずぼらな彼の工具や用途の分からない部品が散らばっている。何度か整理整頓を促したり、私が片付けようとしたが素気なく断られた。彼曰く、置き場所には秩序があるらしい。ここまでエントロピーが低くてそれはないだろう。
「ガムちょーだい」
「もうない」
「は? さっき買っただろ」
 ゴミ袋に捨てたガムの茶色い包み紙。甘いコーヒー味のガムで、口寂しかった私は満足するまで食べてしまっていた。甘い物は嫌いではない。
 アムロは怒るかと思ったが、大きく息を吐いて呆れていた。少しだけ笑みを浮かべた彼の顔は穏やかで思わず見惚れた。
「あなたが気に入ったんならいい」
 信号が青に変わり、パーキングからサードへギアを滑らかに上げて、道幅が狭い国道に入っていく。
 今日の宿泊宿は山間の隠れ家と呼ばれている宿だ。私が車を出す気でいたが、「あなたの車は山向きじゃないだろ」と目を輝かせたアムロが車を出すことになった。
 日が傾き始めている。早めに目的地に到着しないと、真っ暗になるだろう。電灯はない。
「ナビだとそこを右だそうだ」
 細い坂道に滑落防止用のささやかなガードレールが添えられていた。アムロは目を一瞬瞠ってから本当かよ、とハンドルを握り締めた。右の道を見ると鬱蒼とした茂みで道の先がまるで分からない。道が続いているのか途切れているのか、それともそこまで到達できないのか。
「まあ、駄目だったら引き返せばいいしな」
 先程とはうって変わり、声を弾ませている。ウインカーを出して右にハンドルを切った。その顔は悪ガキのように無鉄砲で無邪気で、勇敢だった。元来の彼はそうであったかもしれない。己が無くしたものかもしれないそれはひどく眩しかった。
 見ていられなくてカップホルダーに転がる飴玉の化石に視線を逃がした。
「バックする時は私が変わってもいい」
「嫌だよ、俺がする」
 勇敢な彼は今にも崩れそうな橋をゆっくりと渡り始める。