2025-11-04 01:21:56
4878文字
Public 二次創作:全般
 

行き先を決める話:モルテとおでかけ編

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26345340#2 ←これの冒頭シーンと同じシチュエーションで、過去作の登場人物たちとモルテの絡みを書いてみました。雰囲気の違いを楽しもう!

・当作品は、UTAU音源キャラクター『凶街モルテ』の二次創作作品です。キャラクター設定に一個人の解釈や捏造が多数含まれます。
・異性および同性間での恋愛・性愛を想起させる要素を含みますが、直接的な表現は含みません。
・過去作のスピンオフ要素を含みますが、重大なネタバレはありません。


指輪を渡そうとした人間の場合

「ほら、あの店なんてどうだ?」
「社長がパワハラ野郎だから避けたい」
「じゃああっちのファミレス……
「バイトしてた時期に社員にいじめられたからちょっと……
「えーじゃああっちの」
「某団体とずぶなんで敷居も跨ぎたくないな……
「逆にそういう情報よく知ってるな……
 モルテは骸骨並みにげっそりしていた。

 口を引き結んでいた人間は、項垂れるモルテに声をかけた。
……ほら、自分はこんなだからさ……モルテの行きたいところを優先しなよ。正直……面倒でしょ?」
 眉間に皺を寄せたまま目を伏せる。
「は?」
 すると、モルテはバッと顔を上げた。その顔は少しだけ不機嫌そうで、口の端をへの字に曲げていた。
「お前なぁ、面倒かどうかは俺が決める……いや、面倒でも嫌とは限らねぇんだわ」
 モルテはわずかに言葉を選びながらも、思いを口にする。
「言ったろ?いつも俺が好き勝手してるから、たまにはお前が好きな店とか場所に行きたいって。……まぁ、俺が提案するよりお前が選べって話だったけどな」
 人間は、少しだけ言葉に詰まる。
 太陽が沈んでいき、秋の空が冷たさを増す。ロータリーを車が通るたびに一瞬だけ生暖かい空気になるが、すぐに空気の冷たさが戻ってくる。
 人間の身体が震えて縮こまった。
……自分に、好きなものなんてない。安心するかどうかが全てだ。……そういう意味では、一番安心するのは——
 その先を言おうとして、喉が詰まる。呼吸だけがひゅうひゅう口から出て、言葉になんてできなかった。
……とりあえず、駅ビル入らない?」
 人間の案に、モルテは文句言わずに頷いた。

***

 それなりの数の人が、商業施設の中を楽しそうに歩き回っている。その賑やかさに紛れ、気ままに歩くモルテの骨の手がぷらぷらと揺れている。
 人間はそれに手を伸ばしかけて——止めた。
……
 陽気な店内BGMも、前を歩くモルテの背中も遠く感じる。
(もしも、ずっとモルテといられたら、ちゃんと生きようと思えるのかな)
 モルテの手袋に包まれた左手。その下を想像する。華美なものでなくていいから、共に人生を歩む証をその指に……なんて、自分らしくもない。既存の制度に従属して酔うなんて、色ボケもいいところだ。
 本当に、馬鹿みたいだ。
 モルテは人喰い亡霊だが、妙に人間味がある。でも、それは決して彼が善人という意味ではない。モルテの振る舞いに苛立ったり、色々な『違い』を痛感するときもある。
 それなのに。それでも。
 モルテの隣にいると、少しだけ息がしやすくなるのだ。