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壊して、乞わして、涙雨
「お願い、わたしを壊して。……何もかもわからなくなるくらい……ぐちゃぐちゃにして」
「哥哥……」
祈願の声を聞き、単独で向かった謝憐。だが夜更けに帰ってきた彼は菩薺観の庭に佇み、雨に打たれるばかりで……
※簡体字版、新修版の内容を含みます
※創作設定あり
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鬼市、極楽坊。
月も星もない重たい空の下。見君川には済度を望み、あるいはただ彷徨うばかりの小鬼が、無数の星のように漂っている。耳を澄ませなければ彼らの声は聞き取れず、花城がひと睨みするだけで、彼らは一目散に逃げだすほどだ。いつもであれば目を向けることすらないが、花城は通り過ぎようとした足をぴたりと止めた。
「
……
」
なんてことのない、目を凝らさなければ気付かぬほどに儚く、小さな鬼火だった。自分がここにいる理由を
――
自分が既に現世を去っていることすら理解していない、幼い魂だ。自分のゆくべき先もわからず、ふらふらと彷徨うその光を、花城はさりげなく指先で弾いた。
「
……
いずれ家族のもとへ還りたいなら、お前の居場所はここじゃない。
……
戻れ」
鬼王が口にした“
家人
かぞく
”という言葉は、ことさら優しく響いた。
うまれたばかりの鬼火は、それを理解したのか、そうではないのか。応えるように一度だけゆらりと揺らぎ、やがて川の向こうへと流れていった。
――
鬼王は人々の願いに見向きもしない。
祈りの声に耳を傾けない。
彼が
そう
・・
するのはただひとり、愛する神のためにだけだ。
気まぐれに動かした指先は、それが彼のひとの願いだったから。ただ、それだけのこと。
すぐに見えなくなった鬼火のゆく先を一瞥し、花城は再び歩き出した。口元に、かすかな笑みを湛えて。
(殿下。
……
あなたは確かに、あなたの信徒を救ったんだよ)
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