名古屋世界会議35と新刊の話など

2025/9/28(日)コミックライブin名古屋 アフターサマー2025【いい国つくろう名古屋世界会議35】


*冷凍あんこ本

冷凍あんこ(アイスとデン)の話は一度は書いてみたく、あと旅行後のアイスランド舞台リベンジをしたかったのです。以前書いたパフィンの話(『ドラマツルギー』)は旅行前の作品で、色々想像違いがたくさん出てきたので。ちょっと恥ずかしい。
冒頭は5月のイベント前に書き出しており、元々の構想は30pくらいの突発本(5月に3冊出した後の4冊目)の予定でしたが間に合わず(そりゃそうだ)。あらためてプロットを書き出し、以前から書きかけだったり構想だけあったりした「デンとアイスがアンデルセン童話を初めて読む話」「キール条約後に二人きりで過ごしている話」を交える形で現代の話を書く、という構成になりました。シリアスな過去編を書くとき、歴史や文化等の考証を入れたくなって(トンデモギャグ設定にすれば楽になるんですが)、調べ物がおっくうでほったらかしにしていたので、この機会じゃないとまた数年単位で予定が伸びるか書かないなと感じたので。
歴史書は毎度『北欧史』上下を下地にしていますが、この本は事象を並列して書いているのと、用語が微妙に他の翻訳と異なるのでややこしい。客観的でいいとは思うんですが。おかげで途中で年表を自作する作業が入りました。このごろ真面目にデンマーク教科書の翻訳書が欲しい。お高いのでまだ手を出せていない。
書いている途中で『ドラマツルギー』と同世界観ということにしたので(強引)、色々設定を共有しています。パフィンがぽんと人間になって見せるところとか。住居の位置設定など一部設定は変更してある。

本作は私が思う冷凍あんこ詰め合わせセットみたいな。「強大だったはずの庇護者の凋落」「ふたりっきりの世界」「国と個人の狭間で哀しみに寄り添いたいと揺れていながら、誰かを挟んだ関係で結びつきが薄いので、一歩踏み込むことが一生できないふたり」あたりが入っている。
あと無意識にアイスがべたべたに甘やかされているし甘えるのが当然な末っ子。デンには気軽に腕を組んでほしい。そんでやってもらえないノルがずぞぞぞぞと怖い気配しょってほしい。
ほぼ確実にいるであろうグリーン(とフェローも?)についてはどうしても組み込めなかったのですが、たぶんデン的には家族だけどやっぱり引きこもって出てこないタイプと思われ。

アイス君ち首都にレコード店が何軒もあったので、レコードを聴くアイス君、というネタをどうしてもねじこみたかったのですが、どんな曲を聴くのかまったく思いつかず、クラシックにするとデンのトラウマ時代に被るので流れには合わず……。なんの曲聴くんだろ……教えてほしい。
(某世界的歌手は政府関係者と思われるアイスのことむしろあんまりすきじゃなさそうなんだよな……インタビューの発言的に……)(イギはシェイクスピア作品が好きだと思うが肝心のシェイクスピアは女王嫌いなのでめちゃくちゃいやがりそう、そんな感じ)

チェス場面はWSでも収録された話のネタ。ノル君ちの人が10年以上トップでした(現在は印さんちの人がトップだったはず)。私は詰めチェス2手でも苦戦するくらい苦手である。たしか詰めチェス3手を参考にしたと思います。

人魚姫初出について
『Eventyr fortalte for Børn Hefte』
第1巻は1835年5月8日。親指姫と人魚姫は3巻で、7月のコペンハーゲンポスト紙「ニュースポスト」時点で3巻最終巻発売から数か月後、とある。
読み上げたのは同じ本に発表の「火口箱」。
出典→http://hca.gilead.org.il/


あと歴史の話でも。
歴史は好きでよく読みますが、厳密な考察でなくここではキャラクター設定の補足用に。

1835年。対外的な戦争がないと思われる時期。1813年に国家破綻してノルウェーももぎとられ25年かけて回復(と、本にはある)。歴史が長いことで有名なチボリ公園は1843年開園で、ある種のパンとサーカス。内政に力が入っていた。一方で、アイスランドでは議会アルシングが強制停止中(1800~1843)。憲法や交易にメスが入るのはもう少し後で、現実にはちょっとした緊迫状態と思われる。この年「童話の国」ことデンマークの象徴であるアンデルセン童話が発表。
デンはまだ風邪気味で本調子ではない……絶好調というものはもう来ないが(すでに北欧の覇者からは転げ落ち、21世紀現代はスウェーデンとノルウェーがGDPを支える)。
で、アイスは表向き人質。必ず参加していたアルシングがないのでアイスも年単位で滞在。デンは敗戦で身に染みて手放さざるをえないいつかを考え始め、勝手に勉強を教えている。上司はそれをまだ知らない。
アンデルセンの名が売れたのは作中でも言及の詩集『即興詩人』(1935)で、童話発表の直前。アイスはサガを素で読める(言語体系的にもまだいけるらしい)くらいなので詩集が好きそうなので、流行りの詩集ならデンも買ってくるんじゃないかしら。
実際のデンマークが植民地に行った教育策についてはかなり予後が悪く、グリーンランド等でいまも争点になっています。アイスランドのユールキャットはじめとした民話も禁止令が出たことがある(アイスはあんまり云うこと聞かなかったようだが……)。

1864年(デンマークがプロイセンやオーストリアに大敗北した後)、このときデンマークは有力な領地である南部の代わりにアイスランドを差し出そうとする(否決)。内実がよくわからないのですが、争点となったシュレースヴィヒ=ホルシュタイン地域は本国に隣接しデンマーク人が多い地域であり、穀物などの生産地であることを考えると、肥沃な地は手放したくなく、すでに民族が異なり反抗的で名産も少ないアイスランドはどうでもよかったのではないかと。
……というのを踏まえて、国の化身同士では身内の甘さで可愛がっていたアイスを手放す案を出したことを、アイスは知っていたかどうかで反応は変わるのですが、本作ではデンは「アイスに教えていない、教えるつもりもないので笑ってごまかしている」のです。アイスも云えないことくらいあるのは知っているので聞かない。勘違いはしてるけど。それでしばらくした後に、「僕を売却するつもりだったって、ほんとう?」とアイスがなんでもないふうに訊いて、デンはドキッとするんだ。
あとこのとき、デンマークが大敗北することは軍事力の差などから決まっていて、それでもなおノルウェーがデンマークに加勢する案を議会で論じ、あまりにも「手遅れ」ゆえに断念した、というのも。国の化身たるノルが議会で弁舌を奮い、俺一人でも助けに行ってやる!と息巻くのを周りの人々が必死に反対して抑えたんだろうなあ……という様子が目に浮かびます。連合中色々あっても、嬉しいことも恨みたいこともひっくるめて、ノル自身はデンは大事な親友で失いたくはないと思っているという……(こういう内心あるからこの後デンがたった三時間で降伏したことには腹いせに殴ったりするといい)。
シュレースヴィヒ=ホルシュタインの歴史あたり読んでいると、デンとギル、実は仲超悪いんでは……という気が否めない。

アイスとノルの真ん中バースデーにあたる12月1日(原作の背景が冬なので確定)、実のところアイスランドがデンマークとの同君連合王国に昇格した日(1918年)でもある。なおこの時期、フィンの誕生日(12月6日)も近いが、だいたいスーとノルは某賞の授賞式で忙しく、フィンもサンタ業修羅場に入る模様。どうやって集まったんですか。
1906年のノルの独立について、唐突に日露戦争(1904年)が出てくる。だいぶスーさんをビビらせた模様。このへんのスーさんの外交政策の舵取りの困難さ、これだけで一本書けそうな勢いである。
アイスランドの独立までの交渉、そもそも国内で揉めすぎである(そして独立後も外交問題について国内で揉める)。アイス君実は毎回考えること云うこと違っててめんどくさいんでは。子供っぽい。