呪里
2025-09-25 21:42:18
3455文字
Public Code_Abyss 本編
 

episode:4 第一幕 〈不穏な空気〉




 時は進み、お昼休みになった。

 憐は狂牙と共に、学校の屋上で昼食をとっていた。

 「そうだっ。吠舞羅ちゃん、狂ちゃんに会いにきた?」

 卵焼きを食べながら、憐は狂牙に問いかける。

 「それがさ、帰国してすぐ来ると思ってたんだけど、まだ会えてねぇんだよ」

 「えっそうなの?」

 予想外の答えに、憐は小さく驚いた声をだす。

 「なんでも、すぐに調べなきゃいけねぇ案件があるらしくてさ。メールでだけど、俺にも手伝ってほしいってさっき送られてきた」

 狂牙からスマホの画面を見せてもらうと

 『久しぶりにお前の手を借りたい。詳しい事は後で話す』

 そう簡潔に書かれたメッセージがあった。

 「この、手を借りたい事って、何だろうね?」

 不思議そうに首を傾げる憐。

 狂牙は少し間を置き、憐の質問に答えるべく口を開いた。

 「きっと『ミカガミサマ』の件だ」

 「えっ『ミカガミサマ』?」

 「そう。憐も名前くらいは聞いたことあるだろ?」

 「うん……



 『ミカガミサマ』

 それは、二ヶ月程前から語られ始めた、とある噂。

 丑三つ時、一面の雲に覆われた夜空に向かい、日本古来のまじない〈狐の窓〉を行う。

 指と指の間に作られた隙間を覗き込み、こう呪文を唱える。

 ミカガミサマ ミカガミサマ

 我ガ願イ 聞キ入レタマエ

 異界ノ扉ヲ 開キタマエ

 すると、どこからか『奴』は姿を現し、願いを叶えてくれるらしい。



 「……でも、それってただの噂でしょ?吠舞羅ちゃんが動くようなレベルのものじゃないと思うけど」

 自身のスマホで情報を集めながら、憐は再び首を傾げた。

 「俺も最初はそう思ってた。でも、どうやらコレは、噂の範疇はんしゅうを超えちまってるらしい」

 「どういうこと?」

 「奴の『ミカガミサマ』の叶える願いは全て、〈人を消す〉願いなんだと」

 狂牙の言葉に、先程まで明るかった憐の表情がこわばった。

 「人を……消す?」

憐の手からスマホが落ちる。

 「じゃあ最近行方不明の人が多いって、ニュースでやってたのも?」

 「ほぼ確定だろうな」

 狂牙は憐から視線をらす。

 「今の俺が考えてる事が正しかったら、きっと兄貴は『ミカガミサマ』の情報を欲しがってる」
 
 「

 憐は黙って狂牙の言葉を聞いている。

 「噂は一人、また一人と繋がって、消える奴が増えてってる。兄貴のとこだけじゃない。飛華さんの所もたぶん、姐さんの所も動くと思う」

 「……お姉ちゃん」

 落としたスマホを拾い上げ、憐は悲しげな表情を浮かべた。

 「まぁ、あくまでまだ仮説の段階だから、そんな顔するなって」

 狂牙は憐の頬にそっと手を添える。

 「兄貴からまだ他に連絡ねぇから、俺らは待つしかねぇよ。な?」

 「うん