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保科
2025-09-21 19:16:29
4146文字
Public
スタレ
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警官とデザイナーとにゃんこ
警官のサフェル!!!!(発作)
オンパロスイラストIF、
https://privatter.me/page/68b98e2699977
←これと似た感じの世界観の話です
「おや?アグライアさんじゃないかい。サフェルとは別れて来たのかね」
馴染みのダイナーのドアを開けたアグライアに、開口一番、店主からそんな言葉が投げかけられる。その質問の意図が分からず、アグライアはぱちくりと瞬いた。
「いえ、今日はまだ彼女とは会っていませんが
……
何故そのように?」
「そうかい?いや、先ほど買い出しの途中で、路地近くに立つサフェルを見掛けたんだがね。
『アグライア、元気してた?』と親しげに口にしていたものだから、てっきり。
たしかにあんたの姿は見なかったね」
「
―――
」
アグライアは眉をひそめる。当然、彼女はここに来るまでの間サフェルと会っていたはずもなく、デザインのコンペに出席したその足で立ち寄ったのだ。
久しぶりに空いた夕方の時間、1分1秒も惜しいと足早にやって来たアグライアには、兎にも角にも寝耳に水だ。
「マスター、それは
――
」
アグライアが追求を試みようと口を開いた矢先、カランカランと音を立て扉が開く。
「いやあ外あっついね〜。
マスター!コーラ1つ
……
ってあれ?ライアもう来てんの?
早いねぇ。いいな〜、デザイナーさんってばさ」
「
……
セファリア」
「どーも。あなたの街のセファリアですよーっと。
……
え、何?二人して。どうかした?」
手にした警察帽で顔をあおぎながら店内に入って来たサフェルは、向けられる2人の視線に首を傾げた。その疑問に答えることはなく、店主は首を振る。
「いや何
……
きっと俺の聞き間違いさ。すまないアグライアさん、引き止めてしまって。今日もコーヒーでいいかね」
「ええ、はい。勿論です」
「えーなに。内緒話?あたしも混ぜてよ」
着込んだ制服の神妙さに反して、彼女の態度はひょうひょうとしたものだ
――
そのギャップこそ、彼女が市民に慕われる要因だろう、とアグライアは冷静に分析しつつ。
跳ねるようにいつもの席に腰掛け、手招きする彼女の誘いに乗って、アグライアは向かいに座る。
「いえ、大したことではありません。
その、店主が、町中で私の名を呼ぶ貴女を目にしたとのことで
……
」
「
――
ふうん?何々、そんなにあたしに名前呼んでほしかったの〜?」
「私の願望ではありません。店主が目にした、です」
にまあ、と深く笑うサフェルの顔から逃れるように強く言い含めれば、ハイハイと軽くあしらわれる
――
アグライアがため息をつくのに、サフェルは楽しげにからから笑った。
「ごめんって。
でも別にあたし、ライアのこと探したりとかしてないけどね。迷子でもないんだしさ」
「
……
そうでしょうね。そもそも、突然路地に向けて私の名を呼ぶなど脈絡がありませんし」
「そうそう。何かの聞き間違いなんじゃない?というか、今日の午後なんて本当何もなくて暇でさあ
――
」
肩を竦めたサフェルの口が、一瞬不自然に途切れる。そのまま、窓の外に視線をスライドしつつ、その口元を押さえる。まるで、気づいた事を押さえこむかのように。
「
…………
」
「セファリア?」
「
……
ん?いえいえ?何でもありませーん」
ピンとたった獣耳は警戒を示している。それに反してにゃは、と愛嬌たっぷりに笑うサフェルの顔に、ああこれは何か隠してるな
――
と察したアグライアは、探るように目を細めた。
アグライアと小一時間ほど他愛ない会話を交わした後、サフェルは彼女を残してダイナーを後にする。
本日見回りをする予定の店はまだいくつかあるものの、時間には余裕がある
――
というかこの時間を捻出するためにサフェルはそれはそれは苦労しているのだ、そうでなければ困る。
「
……
っとっと」
どの順序で巡ろうかと思案しつつ、角を曲がって
――
にゃあ、という鳴き声に足を止める。
「おー。やっほー、さっきぶりだねあんた達。元気?」
「にゃー」
民家の入り口でくつろいでいた、色とりどりの毛並みの猫たちが、サフェルの呼びかけに応じるようにやってくる。一匹は足元に擦り寄り、一匹はサフェルの肩に乗る。「あ、こら、擽ったいって
……
!」
ふは、と笑うサフェルの頭上の耳も、気がよさそうにゆらゆられる。
「こら、『トリスビアス』も、『キャストリス』も、あんまりやんちゃしちゃダメだかんね」
その首根っこを捕まえて、近くの塀に乗せつつ。サフェルは付けた名前
――
その毛並みや色合いに準えた、友人たちの名前を口にする。
仕事の空き時間に路地の猫たちを気まぐれで構っていたら、懐かれたために苦心の末つけた名前だったが
――
後から気づいた点、この猫たち、性格も名前に何となく似ているのだ。
足元で丸まって擦り寄る黒い毛並みの『キャストリス』は、物静かな彼女らしく穏やかだが、ここぞというところで誰よりもよく動く。
塀の上、誇らしげににゃうにゃう鳴いている白い毛並みの『トリスビアス』は、バラバラな彼女達三人を思わせるように非常に気まぐれで、自由だ。
そして
――
「みゃう!」
「わっ、と。
――
こら、『アグライア』、いきなりはダメだっての!」
正面、不意を突くように飛び込んで来た、金の毛並みの『アグライア』を慌てて抱きとめる。咎めるサフェルに、何が悪いのですか、といいだけに一鳴きした『アグライア』は、サフェルの頬を舐めた。
『アグライア』。気高く、おいそれと人に懐かない
……
と思わせて、その実、一度心を開いた相手にはどこまでも懐っこく、不遜極まりない。
――
そんなところが憎めない。
つまるところ、先ほどアグライアと店主に勘違いされたのは、この猫にかまっていたため、だったわけだが。
「もー。あんたのせいで、危うくあたし、町中でライアのこと連呼する奴だと思われかけたよ。
やっぱ名付け間違えたかなぁ
……
?」
「みゃ〜」
ぐるぐる、喉を鳴らして甘えてくる『アグライア』に、まああんたに愚痴っても仕方ないかあ、とサフェルは喉元を撫でてやる。そうすれば、頬を擦り寄せるのだからもうサフェルは堪らない。ならばもう、仕方ないのだ。
「そうだよね、『アグライア』は可愛いねえ。う〜可愛い可愛い。
あーあ、いいなあ、あんたらは自由で。
……
あたしも猫になりたいもんだ
……
」
「
――
それは困りますね。貴女に猫になられてしまうと、私は誰とコーヒーを共にすればよいのでしょう」
「
―――
」
予想だにしない返答に呼吸ごと固まったサフェルの元から、『トリスビアス』と『キャストリス』が近くの茂みへと逃げていく。
彼女達のように動けないサフェルが、ぎこちなく、恐る恐る振り向けば。
そこには、笑みを浮かべたアグライアが立っている
――
何故。
「
………
あ、んた、なんで居るの」
「タクシーの帰路の途中で、見慣れた背中があったので気になりまして、つい」
見れば、そう遠くない距離にタクシーが寄せられて止まっている。
その言は確からしい。確からしい、が、一番肝心なのはそこではない。
「
……
、
……
いつから?」
「『さっきぶりだね』と、猫たちに挨拶している所からでしょうか」
「それ最初からじゃん
……
!」
サフェルは頭を抱えたい心地だった
――
この状況をどう説明するべきか。いや、恐らく察されては居るだろうし、態々説明したとて、『彼女の名前』を呼びながら可愛いと連呼していた事実は変わらない。
あーうー、と顔を赤くしたり青くしたり忙しいサフェルに、アグライアは声を掛ける
――
より早く、彼女の手から猫をつまみあげる。
「あ、ちょっと
――
」
首根っこをつかまれた『アグライア』と、アグライアが、サフェルの目の前で対峙する。突然発生したミラーマッチにサフェルは声を上げるが、一人と一匹には届いていないようだ。
「うるるるる
……
」
全身の毛を逆立て唸りを上げる『アグライア』に、アグライアは恐ろしいほど冷めた目を向ける。半端な人間ならば逃げ出しかねないほどの圧を、野良猫へと一心に注ぎながら。
「
――
『アグライア』。
生憎ですが、その名も、向けられる愛情も全て私のものです。
貴女には渡しませんよ」
「しゃーっ!」
体を捩った『アグライア』が、掴まれた手から離れた瞬間
――
爪が一閃。
ふーっと毛を逆立てたまま、『アグライア』もまた茂みへと姿を消した。無言で見送るアグライアの頬から、赤い血が一筋滲んだ。
「
……………
」
「ちょ、ライア!?ほっぺ!血ィ出てるって!」
「成る程。
好敵手
ライバル
――
というわけですね
……
」
「言っとる場合か!」
腰のポーチから携帯している絆創膏を慌てて取り出すサフェルに、セファリア、とアグライアは呼びかける。
「何!今忙しいってば」
「
――
私には、可愛いとは、言ってくれないのですか」
「
―――
」
ど。
――
絆創膏を捲るサフェルの心臓が、歪なリズムで跳ねた。
「
――
あー可愛い可愛いアグライア様はこの街で一番可愛い素敵なお方!
はい、これでいい!?」
「
……
違います。あの猫にはもっとこう
……
もっと愛情を込めた声で
……
」
「すねてないで早くほっぺにこれ貼ってって!」
口をとがらせるアグライアに、頬を赤くしたサフェルが絆創膏を差し出す
――
が、アグライアは受け取らず。
「貼ったら、きちんと可愛いと言ってくれるのですか」
「なんっ
……
ええ
……
。
……
何、嫉妬してるの
……
?」
「
……
『アグライア』は、あのように、貴女に甘やかされた記憶はありませんので」
「
―――
」
猫と人間の扱いが同等になるわけないじゃん!?と内心で叫んだとて、目の前のアグライアからは逃れられない。ケガを負わされふくれたアグライアの上目遣いという、前代未聞の状況に、サフェルのキャパシティはもう限界だった。
動悸を逃がすように深く深くため息をつくと、サフェルは手渡しをあきらめた絆創膏を、少し雑にその頬に貼り付ける。
そうして、彼女の目をけして見ないように、絆創膏の網目を数えながら。
「
………………
そ、ういう、ちょっとめんどくさいところは、可愛い、と、思う
………………
ケド
……………
」
沈黙が下りる。
「
…………………
セファリア」
「何」
どうとでもなれ、と自棄っぱちのサフェルに、アグライアはす、と俯くと。
「
………
恥ずかしくなってきました」
「
―――
」
あんたが言わせたんでしょーが!
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