羽矢海
2025-09-20 20:04:20
2585文字
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向こう側への扉

あなたの目の前には、1冊の本がある。



……い、お〜い、……お〜い!」

あなたはハッとして目が覚めた。寝起きで頭が痛む。あなたは頭を抱えた。

「ねぇ、きみ大丈夫かい? こんな場所で倒れてて……

あなたは辺りを見回した。洞窟の中のような暗さの……神殿? 魔王城? あなたはそんな印象を受けた。

「起きたのね。身体の調子は大丈夫?」

ミルクティーのような髪色に水色の瞳の好青年と、黒髪で赤い瞳のクールな少女が、壁にもたれかかるあなたを覗き込んでいた。
あなたは立ち上がって2人をまじまじと見た。

……お前たちは?」

あなたは2人に問いかけた。

「ワタシはラルス・フスクスよ。よろしく」
「ぼくはアトリ・ピルフラ! ぼくらはどっちも“ジャヴェロット”の一員だよ。よろしく!」

ジャヴェロット? 投げ槍のことか?

……投げ槍選手?」

あなたがそう呟くと、アトリはぷっと噴き出して、あははは!、と笑った。ラルスは呆れたようにはぁ、と溜め息を吐いている。

「あはは! きみ、面白いね。ジャヴェロットを知らないのかい? ジャヴェロットは、簡単に言えば“万象造主デウス・エクス・マキナの正体を暴く”ことを目的とした組織だよ」
万象造主デウス・エクス・マキナ……。それはあたかも存在しているように語られてるけど、其を認識できた人物はいない。“枝葉”でさえね。そのタブーを突き破る……それがワタシたちジャヴェロットの目的」

あなたは首を傾げた。万象造主デウス・エクス・マキナ? 枝葉? 一体なんのことだ。

……???」

あなたの怪訝な表情を見て、アトリは心配そうにあなたを見た。

……万象造主デウス・エクス・マキナのことも、枝葉のことも分からないのかい? 本当に不思議な人だね……。もしかして、記憶喪失とか?」

記憶喪失。
あなたはこれまでの過去を振り返ってみた。あなたは、理由は分からないが、謎の本を手に取り、その表紙を開いた。前に進まなければならない、と言われて。
その前は至って普通の生活を送っていたが、何故その本を手に取らなければならなかったのかは、覚えていない。

ともかくあなたはその表紙を開くと、よくわからない文字が表示された。千世界に接続?とか、名前を入力したりしなきゃいけなくて。
その後、あなたは白く眩い光に包まれて、謎の囁き声を聞いた。

――ねぇ、やっと来てくれたね、転落者』
――私だけの救世主――
――私を見つけて、終わりなき輪廻から掬い上げて――
――幾重もの世界の向こうで、待ってる――

その声を思い出すと、あなたの頭がずきり、と一痛みした。この声、言葉は、忘れてはならない。そう言われているような気がした。

……そういえば、アナタの名前は?」

ラルスに聞かれて、あなたは名前を答えた。

……ユウ

アトリはニコリと笑って、あなたの名前を復唱した。

ユウって言うのか〜〜! 名前は覚えてるみたいでよかった。ねぇユウ、行く宛がないならぼくらジャヴェロットと一緒に旅しないかい?」

ラルスはむっと顔を顰めた。

「アトリ、ジャヴェロットは来る者拒まずだけど、そう簡単に言われても困るわ。トモエさんやオリオルスさんにも相談しないと。それにこの世界についての知識が少ないユウさんにそんな提案をするのも……
「わかった、わかったよ! ラルスは堅物だな……。どっちみち、ユウをここに置き去りにするわけにもいかないだろ?」

アトリはラルスの小言に耳を塞いだ。ラルスはきっと、自由気ままなアトリのストッパーとしてこれまでやってきたのだろう。あなたはそう察した。

「まぁ、アトリの言うことも一理あるわね。アナタをここに置き去りにするわけにはいかないわ。ワタシたちと一緒に来てちょうだい」

あなたは言われるがまま、アトリとラルスに着いて行った。
あなたはまだ知る由もない。この先に、あなたの想像を超える旅が待っていることを。

そして――
“私”を見つけて。