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望月 鏡翠
2025-09-10 01:38:33
5499文字
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リアタイ
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シズメ 06
シズメ/三角 麻弓/流転〜アフター
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気がつけばバスの中にいる。
少しうたた寝をして、壮大な夢を見ていただけのように。
うたた寝と違うのは、みんなが同じ記憶を共有していること。そして、夢から覚めたら、このバスに乗っているはずがない人が乗り合わせていることだった。
騒然とする車内を尻目に、麻弓は鞄を開く中身を膝に移動した。カメラもスマホもどちらも全滅だ。謎のアプリも消えている。思い出は一つも残っていない。
がっかりしながら、ノートを取り出した。
海水に濡れたあとも、固まって白くなった塩もない。
消えてしまった。
友達や先輩や先生や後輩だった幽霊達は、どこかに消えたのだろう。
「残ってるじゃん!」
麻弓は思わず声を上げた。
プリントした写真やデータは残らず消えているが、手書きのスケッチやメモは残っている。それに、動物の友達からもらった羽や毛も。
動物の毛に人間の名前と日付が書いてあるのは、チグハグな感じがして面白い。
時間が戻ったから、パンダダンゴムシはちゃんと餌を食べてのんびり生きていた。それを一緒に探した思い出は偽物だったけど、お互いの頭の中にはちゃんと残っている。ペットボトルロケットをみんなで飛ばした思い出の中に、幽霊部員はいなかったけど、作ったロケットも記録も、まだ部室に残っている。
不完全な記録ノートも部室に置いていくことにした。
もちろん、自分だけの思い出として持っていきたい気持ちもあった。
というか、麻弓にしか価値がないものなのだから、こんなもの置いていったって見つけた人は困るだろう。自分で持っていった方がいいに決まっている。麻弓にとって大切な思い出であるだけで、誰かにとっては支離滅裂でまとまりがないノートだ。悪ふざけだと思われて捨てられてしまう可能性の方が高い。
何もかもとっておいたら部室がパンクしてしまうから、定期的に整理している。そういうときに資源ごみとして紙束にまとめられてどこかに消えるのだろう。
だが、それでもいいと思っている。
人の記録というのは、そういう一面がある。数え切れないほど無駄な調査と研究を重ねた結果、少しだけ前進することもあるけど、大抵は紙屑のまま終わる。でも、わずかでもあるのなら残す意味はある。
それに期待をするのが、探求を志す者の営みだ。
もし、またあんな風に学校が海に沈んで幽霊が人に変身して、一緒に生活するような奇跡が起こるのだとしたら、それを経験するのは麻弓ではなくて、シズメ高校に通う誰かだ。
そのときに、もしかしたらこのノートのことを思い出す人がいるかもしれない。
不完全で支離滅裂な記録は本当にあったことなのだと、気づくのかもしれない。
そうなったら、嬉しいから。
私たちだけの思い出が、どこかの誰かにつながってくれる日があると、信じている。
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