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望月 鏡翠
2025-09-10 01:38:33
5499文字
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リアタイ
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シズメ 06
シズメ/三角 麻弓/流転〜アフター
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一年だけ在学期間が被っていただけで、卒業したら二度と会わない人なんていくらでもいるし、一度もしゃべることなく卒業していく先生や生徒もいる。
高校生になってから中学に戻ってみたことなんてないし、結局卒業した後は友達以外と連絡なんて取っていない。
それなのに二度と会えないと思うだけで、どうして悲しいと思うのだろう。
違う時代の違う場所に生きていた人間だったり動物だったりする人たち。
二ヶ月という時間は学校に閉じ込められるには長かったけれど、一生に一度の出会いだと思うとあまりにも短かった。花火も七夕も、あと三十回くらいはあって良かった。そしたら三十年分くらいの思い出を持って帰ることができただろう。
花火が空を彩った。
声が遠くなる。麻弓は花火が始まってからずっと、ノートを手に取っては空に目をやるのを繰り返していた。少しも進んでいないけれど、置くこともできないままでいる。
花火に集中したほうがいい。だけど、ノートを置くこともできない。
どちらつかずの時間が一番無為だ。
だけど、どちらが優先かなんてすぐに決められるわけがなかった。
明日になったら全部元通り。何もかも。時間が巻き戻るらしい。
じゃあ、記録なんてとったところで、意味なんてないんじゃない?
でももしかしたら何か残るかも知れない。不思議なアプリとか、ノートとか、手紙とか。
残ってくれることに賭けて、今を書き留める。
実感と事実と変化とがあとに残ったら、それらをつなぎ合わせてこの世の不思議が一つ解明されて、いつか幽霊はもっと身近に感じられるようになるのかも知れない。
今は誰にとっても身近ではない幽霊たち。
そんなに解き明かしたいなら、折角会って話せる機会に、死後の世界ってどんな感じなのって聞いておけば良かったのに、それはやらずじまいだった。
デリケートな話題かもしれないし、理系ってやっぱデリカシーないんだなって思われちゃうかもしれないし。折角会えたのに嫌われたら嫌だし
……
。
それに麻弓は地球に住んでいて、丸いことは知っているけれど丸くなっているところを見たわけでもなければ、自分で証明したわけでもない。自分がいる場所のことなんて、実は何も知らない。幽霊の世界に物理学者とか霊界学者とかがいて、ここはどこなんだろうと調べない限りきっとわからないままだ。
幽霊の人に死後の世界ってどんな感じ? と聞いたところで、知りたいことはわからないような気がした。
昔から幽霊が見えた。見えるけれど、どうしてそれらがいるのか、理由はわからないままだった。科学は、それらの存在を証明も説明もできないけれど、いつか解き明かしてみんながそれを身近に感じられるようになるといいなと思っていた。
今、この学校は誰も知らない世界に飛び出していく最初の船になっている。
生者に死者の存在を見せてくれる場所。互いに言葉を交わし、触れることすらできる。
二つの世界は混ざり合い、それが感じ取れる人間の頭の中にしか存在しなかった正しさを、みんなが自分の目で確かめることができる。
いつかこれを、怪しい霊媒師の手や偶然に巻き込まれた夢なんかじゃなく、人間が自分たちの手で成し遂げることができますように。
この花火と海の中の二ヶ月と、幽霊だったみんなとの出会いは夢になるけれど、いつかこの些細な記録が将来の大発見の一番最初の一歩かも知れないから。
ノートには、観察と夏の思い出と、まだ科学にもならないたくさんの空想が残っている。
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