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すだ
2025-08-30 12:18:07
7240文字
Public
龍の国その他
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カグヤと黒竜
舞手スバルと嫁カグヤ。
主スバカグ前提の、相棒との思い出を無くしたカグヤと、夢現でカグヤを見守り続けた黒い竜のお話。
舞手スバルが黒竜とバチバチやり合っているので、婿スバルと黒竜の関係が好きな方はご注意を。
カグヤが黒竜の乗り手だった頃の描写は暗いです。カグヤが天寿を全うする描写があります。
スバルはゲーム内最後の選択肢を断っています。
全く言及されなかった黒竜とカグヤの関係を自分なりに考察したもの。
カグヤが黒竜の話を全くしないのは記憶をいじられたのでは……という完全な投稿者の妄想です。
ルンファク4のセルザとフレイが大好きなものですからこじれました。
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ああ、終わったか。
微睡の中で、かつての相棒が儚くなったことが分かった。これで黒竜は完全に眠りにつける。次に新たな契約者と会うときは、全く異なる存在として生まれ変わるのだ。
ずっと、あの子の生きている姿を夢現で見守っていた。黒竜は神竜である。意識だけを飛ばしアズマの国中を見て回ることができた。
春の里で独りぼっちだったカグヤは、少しずつ里の者たちと打ち解けていった。沈みがちだった表情も、日々を過ごすうちに明るく輝き始めた。
これが本来の彼女なのだろう、何と心地の良い光なのだろうか。闇の眷属は、彼女の放つ優しい光に魅入られた。毎日、毎日カグヤの様子を見るために空を翔る。
いくら肉体がないとはいえ、神竜の力は強大だ。意識だけ飛ばしていても残滓は残ってしまう。そのせいで膨らんでしまった己の残滓が彼女を攫ってしまったことがあった。その際は不本意ながら大地の舞手にはお世話になった。
それ以来、迷惑そうな顔をしながら舞手が残滓を浄化してくれるようになった。カグヤを見守り続けることができ、感謝している。感謝だけはしている。
春の里で受け入れられたカグヤは、同じく他の里でも多くの人間と絆を結んだ。
幸せそうに過ごす彼女の隣には、大地の舞手の姿があった。ふたりは恋人になり、夫婦になった。子が生まれ、里は一層賑わい、アズマの地にルーンが満ちていく。
舞手を始めとする人間たちの尽力により、今のアズマは龍星崩落以前のルーン溢れる豊かな大地を取り戻していた。
そのアズマを、カグヤと舞手は仲睦まじく寄り添うように生きた。
長いような短いような時間だったが、悪くはなかった。カグヤは生き生きとアズマの地を駆け抜けた。これでようやく安心して眠ることができる。
黒竜が意識を手放そうとした、まさにそのとき。
「黒竜!」
誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。夢にまで見た懐かしい響き。
まさか。そんな筈はない。だがこの声は、まごうことなきあの子の
――
「カグヤ」
「やっと見つけた」
乗り手だった頃の若い姿で彼女は現れた。
「黒竜、私怒ってるんですよ! どうして私の記憶をいじったんですか?」
「そ、それは
……
」
「確かにあなたとの旅は辛いことが多かった。
……
それでも、あなたと過ごした時間は私にとって大切で、忘れたくなかったのに」
「ああ
……
。すまぬ、すまぬカグヤ」
あれほど酷い目に遭わせてしまったというのに、まさか大切な時間だったと言ってくれるとは。覚えていたかった、などと。
彼女が苦しむだろうから、とカグヤを生き返らせるときに記憶を消した。彼女に断りなく行ったことだったが、これから人として生きていくためには必要なことだと思った。
もう少し図太い人間であれば、記憶を消すまではしなかったかもしれない。だがカグヤは繊細で優しい子だったから、良かれと思い黒竜との思い出を持っていくことにした。黒竜のせいで、と恨んでくれて構わない。それであの子が生きられるならば。
何も分かっていなかった黒竜は、謝るしかなかった。
「ある日突然あなたのことを思い出したんです。良かった、思い出せて。だからこうしてあなたに文句を言いに来ました」
「我の力が弱まったときに、お主の記憶も戻ったのであろう」
「黒竜の馬鹿! 馬鹿馬鹿!」
カグヤへと寄せた黒竜の鼻先を彼女はぽかぽか叩く。全然痛くないのは本気で叩いていないせいか、お互い感覚がなくなっているからか。
カグヤと黒竜は、しばらくの間、馬鹿馬鹿、すまぬとやり取りを繰り返した。
「何だかお主、逞しくなったのう」
「子どもをふたり育て上げましたからね、そりゃあ逞しくもなりますよ」
「そうか。
……
幸福な生だったか?」
思わず問いかける。黒竜の目から見て彼女は幸せそうだったが、直接確認したかった。
花もかくやと彼女が笑う。
「はい、大好きな人と添い遂げることが出来ました。幸せな人生でしたよ」
「そうか、良かった」
初めて耳にした黒竜の感情に、カグヤは目を見開いた。
「黒竜
……
喜んでくれるの?」
「我はカグヤと共に消える存在よ。ならば、使命と関係の無い思いを抱いても良いであろう?」
「
……
ありがとう、黒竜。あなたに会えて良かった」
そう言うとカグヤは黒竜の鼻先に額を預けた。
ふたりがアズマにもたらしたものは、決して彼の地に生きている者たちにとって許される行いではなかった。
それでも、ふたりで空を翔けたことはカグヤにとって忘れられない時間だったのだ。
思い出せて、本当に良かった。
ふたりの契約は失われたまま。契約を結んでいた頃ですら互いの心情は読み取れなかった。
だが今、カグヤの心が黒竜に流れ込んでくる。黒き竜の蒼い瞳から光るものが零れ落ちた。
「消えるの、もう少し待ちませんか? 私の愛する人もいずれこちらにくると思いますから、挨拶とか」
「嫌だ
……
。アマカケルモコシロノミコトも一緒であろう。アイツには会いたくない」
「あらあら、最後まで仲が悪いんですね」
「我はお主に会えただけで充分だ」
「黒竜、泣いてるの?」
「誰が泣くか! これは汗だ! ここは暑いからな!」
じゃれ合うふたりの姿が少しずつ薄く遠くなっていく。
これは白竜の乗り手と異なる形でアズマ救済をなし得ようとした黒き竜と、その乗り手のお話。
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