kanaco
2025-08-23 00:09:28
10116文字
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【四信/A信】信仔と信信の四仔アタック大作戦

《四信/A信》四仔に恋している信仔(映画ンヤ)が、魔法の耳飾りの力で出会った信信(原作ンヤ)に励まされて四仔に告白しようとするおはなし。主役は映画ンヤ。AVは登場せず、原作ストーリーについて言及ゼロにつきネタバレはないかと思いますが、キャラクターには触れているのでご注意ください。


信仔が信一が耳にしていたカフスを外すと、鏡の面が最初と同じようにグニャリと歪んだ。鏡がまたくっきりと姿を映した時、そこにいたのはデニムジャケットにスラックスというラフな格好をした青年だった。信一は右手を上げてヒラヒラと手を振ってみる。鏡に映った青年は全く同じ動作をする。

「戻った

なんとも不思議なことが起きたものだ。世にも怪奇で奇妙な物語だ。しかしと手のひらに転がるカフスを見る。現実だった。信一はそのカフスをポケットに入れるとそのまま部屋を飛び出した。

その足は診療所へと真っすぐ向かう。緊張が高まって体がフワフワと浮いているようだった。通路をズンズンと突き進む途中、何人かに名前を呼ばれたような気もしたが、気のせいということにして歩いていく。一度止まったら信信に押してもらった勢いが失速してしまうように思ったからだ。

診療所が近くなるとポケットに入れていたカフスを再び取り出して右耳につける。そして勢いよく診療所のドアを開けた。部屋の中央に立っていた四仔が、そしてテレビの前に座り込んでいた十二と洛軍が一斉に信一を見た。少しだけ息を切らせながら、切羽詰まったような顔をしている信一に対し、全員が「何ごとか」と言うように目をパチクリと見開いている。

「四仔!」
信一が大きな声で名を呼ぶと、驚きながらも「何だ?」と冷静に四仔が返事をする。

目と目が合う。これは残念なことだったが、目があった瞬間にボンッ!と緊張が爆発してしまった信一は、信信が言っていた必殺技の流れを見事に頭から吹き飛ばした。だがこうも勢いよく名前を呼んでしまった手前、急には止まれない。すでにスタートはきられたのだ。

「俺」
「ん?」
「俺な」

途端に信一は恥ずかしそうに目線を下に向けた。躊躇いがちな口がそれでも何か言いたげにして、しかし切なげに閉じてしまう。体が発火したように熱かった。不安な気持ちによって体も落ち着かず無意識に髪を触る。下を向いたことでハラリと落ちてきた右側の髪を、信一はスッと耳へかけ直した。露わになった耳にブルーの宝石が煌めく。珍しく耳を晒した信一の姿は、いつもと少しの違いしかないのに新鮮さがあった。目を見張るような艶がそこから零れる。どうしてか四仔からの視線を感じるような気がしたが、それを意識するとやはり勇気が萎む気がして、信一は意識しないように努めた。

「だから、その」

意を決して顔を上げる。馴染みのマスクの顔。そうすると戸惑うような、心配するような、そして真面目に向かい合う四仔の瞳が信一の視界に飛び込んできた。優しい、と信一は思った。こんなうだつが上がらない半端な声かけに、辛抱強く待ってくれるこの男はやっぱり優しいのだ。

情緒不安定な気持ちが高ぶって、信一の目がジワリと潤む。理由は分からずとも、突然に涙目になった信一に気がついた四仔が「ぐっ」と息を詰めて、焦ったように両手を動かした。落ち着けと、そう安心させるために触れようとしてくれているのかも、と信一は思った。心配させるのは違う。流れを変えなければ。そういえば、信信は何て言っていたっけ?思い出せ。そう、笑顔だと言っていた。自分の笑っている顔が、四仔の気持ちを動かすのだと。

信一は四仔に向かってフンワリと笑いかけた。それを見た四仔の目が細まる。マスクで表情の全ては伺えないが優しさを帯びたような気がして、信一は安心した。なんだっけ、次にすることって。いやここまで来たら、そのっ。告白を!いやでもやっぱりムリかもっ!!心中で、目をグルグルと回す。その瞬間、信仔の脳裏に信信の言葉が凛と蘇った。


どの宇宙のAVだって、藍信一を愛すさ。


そうだよ、だから今ここで、これまでの人生で一番の勇気を。

その時「信一」という声がした。混乱していた信一が意識をそちらに向けると、動かぬ信一に業を煮やしたのだろうか。四仔の方から先に足を一歩、前に踏み出したところだった。

それと同時に信一は我に返った。自分のことばかり考えていて周りがちゃんと視界に入っていなかった。それが四仔が動いたことにより一気に現実に引き戻される。冷水を一気に浴びせられるかのような感覚。四仔に想いを告げることなどできない。自分がこれまで、どうしてそう自制していたのか理由を忘れたのか。

「やややや、やっぱ無理ぃ!!!!」

信一が大きな声で叫ぶ。四仔がビクリと体を跳ねさせて前進をピタリと止める。それと並行するように信一はパニックを起こした。

この次って信信は何て言ってたっけ?必殺技!そう。それって。確か。信信の声がハッキリと聞こえる。

そのまま股間を掴め。ガッシリとだ!

「ごめんっ!」

どうして謝りながらもそれを実行したのか、信一にももはや分からなかった。信信にはガッシリ掴めと言われどもそんな強気の姿勢はもちろんできず、それは優しく撫でるようなフェザータッチ。

ペロン。

そう軽い音がしそうなタッチの指から一気に全身を真っ赤に染め上げて、とんでもない空気になっている診療所から一目散に逃げだした。脱兎の如く診療所を飛び出した信一は最短ルートで向かった自室に今度は飛び込むと、そのまま鏡へと突っ込みそうなほどの勢いでミラーに手を合わせた。もうお決まりのように目の前が歪む。

「信信―――!!!」

「は?何だ、もうしてきたのか信仔?」
信信はものの数十分で再び異空を繋いだ鏡を覗き込み、半泣きの信仔を見て素っ頓狂な声を上げた。
「有言実行の男とは正しくお前のことだな。藍信一の信用度はゴールドカード限度額よりも上だという話は本当らしい」
「何その話!?」
また分けの分からないことを言い出した!と嘆く信仔が、次にしょんぼりと肩を落とす。
「やってはみたけど、でもあまりにも耐えられなくて逃げてきた
四仔の反応もよく分からなかったと悲し気な声を出す信仔に、信信は「おやおや。さすがにおいそれとはいかないか」と思案顔をしたが、次にはニッコリと笑う。

「愛しい信仔、案ずるな。今まで一歩も動けなかったのに、少しでも勇気がでたんだろう?良い傾向さ。そう絶望することはない」
パチリと完璧なウインクに、閃きを促すような指パッチンが心地よい音を響かせる。
「ここは挫けずに次の手を考えよう」

それから信信と信仔は、今後の作戦について念入りな会議を重ねるのであった。