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kanaco
2025-08-23 00:09:28
10116文字
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【四信/A信】信仔と信信の四仔アタック大作戦
《四信/A信》四仔に恋している信仔(映画ンヤ)が、魔法の耳飾りの力で出会った信信(原作ンヤ)に励まされて四仔に告白しようとするおはなし。主役は映画ンヤ。AVは登場せず、原作ストーリーについて言及ゼロにつきネタバレはないかと思いますが、キャラクターには触れているのでご注意ください。
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2
3
4
鏡の中と外。ドッカリ座って向かい合う。
洋服は違うが顔、体格、声は瓜二つ。まるで一卵性双生児のようだが、それとは全く違うというのが2人の結論だった。つまりお互いは「違う世界の自分である」ということだ。
2人がお互いの情報を出していくと、同じことと違うことが入り乱れていることが分かった。
彼らの外見は黒子の位置まで全く同じだった。九龍城砦に住んでいて、養い親である龍捲風に育てられた。2人は龍捲風を誰よりも敬愛している。九龍城砦の会計を担っているし、黒社会に身を置いているのも同様。そしてナイフを扱うのが得意だ。
しかし見目は一緒でも、体についている傷の場所は違っていた。つまり共通項はあれど2人の“人生経験”は相違しているらしかった。だから考え方や価値観も少しだけ相違しているように信一は感じた。話が進むと信一の仲間たち
…
つまり陳洛軍や四仔、十二少の様子も違うことも判明した。それでも鏡の向こうの世界にも彼らは確かに存在する。信一は嬉しくなって、ホッとしたような気持ちになった。
「お前は俺にソックリだが、少し藍男にも似ている気がする」
「藍男?」
「従姉妹だ。一緒に龍兄貴に育てられた妹みたいなものだ。パンクロックが好きでな」
「従姉妹がいるのか」
「何だ、お前のところにはいないのか」
ピアスの信一は複雑な表情を見せた。イヤーカフの信一が「九龍城砦にはいないけど、もしかしたらどこかにいるのかもしれないよ。それともその娘に俺が似ているなら俺はその娘でもあるのかも?」と伝えると「ふむ」と微笑みが返ってくる。「お前はイイヤツだな、信一」と述べてから、微妙な表情をして「名前が一緒だから、呼ぶのに違和感があるな」と言った。
2人はどちらも藍信一であるため、お互いの呼び名を変えることにした。
ピアスの信一は藍男が呼んでいるという「信信」。
イヤーカフの信一は龍兄貴に呼ばれていた「信仔」。
「なぁ、信信」
イヤーカフの信仔が改めて名を呼べば、
「なんだ?信仔」
そうピアスの信信が返事を返す。
「どうしてこんなことが起きていると思う?」
「さぁな、知る由もない。手掛かりはこのピアスかもしれないがそれ以上は分からない。だが実に面白い現象だな。俺はお前に会えて良かったと思う」
「ああ。でも
…
てっきり幽霊とか
…
怖いものかと思ったよ」
どうして信信はそんな余裕なんだよ?順応性が高すぎるでしょ、と信仔が聞けば信信は肩を竦めた。
「もし幽霊だったとしても、こんなに不安そうな顔をしている幽霊であれば、何の脅威でもないな」
「だって吃驚するだろ。怪しさMAXだしさ」
「信仔、俺はな。最も信用を重んじる人間だ」
「おお」
「その“俺”である“お前”が信用足る人間でないはずがない。少なくとも会話くらいできるだろう」
「
……
そんな理屈、通用する?」
「するさ。実際お前は気持ちのいい男だった」
それに本当に危ないのであれば鏡をぶっ壊せばいいだけだろう?あるいはお前の喉元をナイフで搔っ捌くだけさ。
唐突に黒社会らしい顔でニンマリと笑った信信は、トントンと鏡に映る信仔の首元を指で優しく叩いた。
「ふぅん?でもナイフは鏡を通らなそうだなぁ」
他の手立てを考えなくちゃ、そう信仔が同じように黒社会らしい顔でニンマリと笑い返すと「お前は本当にカワイイなぁ」と信信が言う。
「カワイイって微妙なんだけど
…
」
「それはそうだろうが、率直な感想なのだから仕方がない。お前は俺よりも幾分かおっとりしていそうだからな」
「信信の方が勝気かもしれない」
「お前は俺で、俺はお前だが同一ではないということだな」
信一が煙草を取り出して一服し始める。信一も同じように煙草を取り出した。銘柄は一緒だ。趣向は似ていそうだった。
「なぁ信信。お前、恋人とかいるの?」
「恋人?いるぞ」
「マジ!?」
信仔が身を乗り出した。
「俺の世界にもいるヤツかな?」
「AVだ」
「え
…
?」
信信の口からサラリと出た人物の名前に、信仔が呆けたような顔で呟いた。
「四仔が恋人
…
なの?」
「そうだが、お前は恋人がいないのか?」
「いない
…
」
急に歯切れが悪くなった信仔を見て、信信が本日2回目の怪訝な顔をした。煙草の煙をフーと吹き出して「どうした」と促す。口元を手で覆って目を伏せた彼の片割れが、少しだけ恥ずかしそうに口を割った。
「いないけど
…
。俺、四仔のことが好きなんだよ」
「おお!やはりお前は俺、俺はお前だな。一緒じゃないか」
先ほどと正反対のことを言いながら、信信は気分が良さそうに朗々と声を上げた。
「恋人も同じとは!どこの宇宙でもAVは俺に惹かれるというわけだ。実に素晴らしい発見だな」
「いや、ちょっと待て。だから俺と四仔は付き合ってないし、俺が四仔を好きなだけで、四仔が俺を好きなわけじゃない
…
」
どんどんと声が小さくなる様子に信信は顔を“きょとん”とさせた。
「それは四仔からもらった答えなのか?」
「いや、そうじゃないけど」
「なら、さっさと告白してつきあえ。お前が心揺さぶられたのは俺の恋人がAVであることが嬉しかったからなのだろう?」
「それはそうだけど
…
」
信仔は困ったように眉を下げた。そんな簡単なことであればとっくに四仔に想いを告げているだろう。信仔と四仔は友人同士であるがそれ以上の脈を感じたことはない。昔に比べたら仲は良いという自覚はある。だが四仔はよく信仔に対して怒ったり呆れるような顔をするし、黒社会を嫌悪しているし、何より大切に思っている女性がいる。一途で真面目なあの男にアプローチをかけるような勇気を、信仔は持ち合わせていなかった。
「四仔が俺を好きになるとは思えない」
「なぜ決めつける。伝えてもいないのだろう?」
「一緒にいても脈を感じねぇもん。想像つかないし、取り返しのつかない事態になったらそれこそ目も当てられない」
「ほぅ。じゃぁ、命じてみれば?彼がそれに対してどう行動するか観察できるだろう」
「命じる?そんなの四仔に取り合ってもらえないし、絶対怒らせる」
「そうか?AVは俺がデートしろと言えばするし、セックスしろと言えばする。俺たちは先に体の関係から始まったが、まるくおさまるものだぞ」
「それって
…
つきあってるの?」
「もちろん。AVは俺を愛しているから俺の命に応える。金のためだけに言うことを聞くようなヤツではないさ。なんせ地下拳闘場のファイターだ。強く、暴力に飢え、優勝し続けている。嫌であれば態度で示す」
「はぁ?」
「なんだ、そこも違うのか」
「うちの四仔は医者だけど
…
。一般人だし。暴力は奮わない
…
まぁ基本的には」
「医者だと!?それは興味深いな。ビジネスが変わってくる」
「それに黒社会は嫌いだ」
「AVだって嫌いさ。そして拳闘場であれば合理的に黒社会を叩きのめすことができる」
「俺たちだって黒社会じゃん
…
」
「そうだな。だがAVは主従関係において俺に従い、俺のビジネスを成立させ、兄弟であり、そしてただ一人の人間として俺を愛する」
「そんなの
…
」
俺と四仔とは違いすぎるじゃないか、と信仔は思った。関係性も関係値も違うし、性格も違う。信信とAVが上手くいっているからと言って、自分たちも同じような道を辿れるとは到底思えなかった。しかし信信の方はずっと不思議そうな顔をして煙草を吹かせていた。「そんなにAVと四仔が違うだろうか」というのが彼の意見であるらしい。
「信仔、ものは試しだ。行動をしてみろよ」
信信が信仔を真っすぐに見て諭すように言った。あまりにも真っすぐに瞳に射抜かれたのと、その表情が柔らかくて優しかったので、信仔が「うっ」と詰まりながらも真剣に見返す。自分と全く同じ顔であるのにその纏う雰囲気が安定して美しい。先ほどから感じる、何事にも積極的で自信に満ちるマインドが影響しているのかもしれない、と信仔は思った。自分を見つめるその瞳は、どこか自分の養父に似ているような気持ちすらする。
「必殺技を教えてやるよ信仔」
「必殺技?」
「まず澄ました表情のまま伏目がちにしながら片方の耳に髪をかけろ。無防備にも首筋をさらせ。できる限り色っぽくだ。ヤツの視線をそこへ集中させろ。そのカフスをして宝石に一度注目を集めてから、視線を誘導してやってもいい」
「うん」
「それから少しだけ四仔を見上げるようにして、目を多分に潤ませる。涙の水分調整も表情管理も得意だろう?なんせ俺なんだからな。ここで表現するのは無垢さだ」
「お前、それ自分で言ってて恥ずかしくならない?」
「ならん。ちなみに“か弱さ”じゃないぞ。俺たちは決してか弱くなんてない。だが幼気ってのはヤツによく効く。そしてこれが一番重要だが、笑え。とびっきりの笑顔を見せろ」
「笑顔
…
」
「結局、笑っている顔がアイツの気持ちを動かす」
「四仔の気持ちを動かす...」
「それから」
「それから?」
「そのまま股間を掴め」
ガッシリとだ!と信信は自信に満ち溢れた顔で言った。
「こかっ!?俺、殺されるな!?」
「殺されん。飛びついてくるし、がっついてくるし、そのまま激しい夜を明かせるぞ。待てと言おうが何と言おうが止まらん」
「それ、AVを制御できてねーじゃん」
「何を言う、俺がアイツを暴走させてるんだから俺が主導権握ってるだろ」
「そう?そうなの?そうはならなくない??」
だってAV止まらないんだろ?と言いながらもドキドキしている信仔を眺め、信信がまた笑う。
「可愛い信仔」
改まったように呼ばれて、信仔はまた口をつぐんで鏡を見つめる。やっぱり信信は美しい顔で笑っていた。顔の造形が、という話ではない。その表情に色気が華やかに溢れているのはやっぱりAVに愛されている自信があるからかもしれない、と信一は思う。
「俺とお前は顔も体型もそっくりだが、違う人間だ。でも似ているところも全く同じところもある。宇宙が違っても1人の人間であるならば、きっと根っこは一緒なのかもしれない」
それから信信は一息の間を置いて続けた。
「いいか、俺はAVに愛されている」
つまりだ。
「どの宇宙のAVだって、藍信一を愛すさ」
俺は最も信用を重んじる人間だ。
だから俺は嘘をつかない。
信仔はとても小さな声で「四仔は藍信一を愛す」と復唱した。自分に刻み付けようと唱えるようにゆっくりと言う。
「次にお前に会うのが楽しみだな」
煙草をもみ消しながら信信がそう言うので、信仔は緊張したような表情を見せながらも「うん」と頷いた。
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