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koto
20021文字
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れめしし😈🦁
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オーバーライト・メモリーズ
とある事情で叶に迷惑をかけてしまった獅子神が、お詫びがてら叶のリクエストに応じることに
叶の希望で自分にとってあまり楽しくない子ども時代の思い出の場所を一緒に訪れる獅子神と叶のおでかけ話
※付き合っていないれめしし
※獅子神の過去を捏造しています
2025年7月5・6日に開催されたれめししWebオンリー「Let Me See You」内での「お兄ちゃんれめ企画」に参加した話を加筆修正したものになります
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ジリジリと肌を灼くような陽射しの下、目の前の校舎は白く眩しく、どこかよそよそしく獅子神の目に映っている。懐かしいというよりは正直「こんなだったか?」という戸惑いのほうが強い。ぼんやりとした記憶の中にある塀はもっと高く、門扉も重々しかった気がした。実際は少し力を入れれば簡単に動くような軽さで、塀なんかは獅子神の自宅のほうがよほど立派だ。イメージとのギャップに獅子神は肩透かしを食らう。記憶なんてものは相当いい加減で、当時の感情に引き摺られるものなんだと身をもって思い知る。
本来なら子どもたちの声が響いてもおかしくない時間帯だが、長期休暇のせいか校内はひっそりと静まり返って見える。グラウンドではスポーツ少年団らしき子どもたちが練習を切り上げ、片付けをし始めていた。その他に目立った人影はない。
――
アイツ、自分が言い出したくせにまだ来てねぇのか?
ホテルを出たあとで、ちょっと済ませとく用事があるからと一時解散を言い出したのは叶だった。予定外の宿泊となったため、一旦帰宅できるなら獅子神もそれに越したことはない。なんなら、一時どころかそのまま解散でも構わなかった。
集合時間を決めた叶が「待ち合わせ場所は学校ね」と指定した。なぜ自分が通っていた小学校を知っているのか。そんなことは今更問い質す気も起きない。昨日あの場に居合わせた叶なら、いくらでも知りようがあっただろう。
脳天を突き刺すような光に照り付けられ、じわじわと体力と忍耐が削られていく。約束の時間まで、あと一分。一秒でも遅れたら、それを理由にこの話はなかったことにしてやろう。そんな思いでスマホの時計を睨んでいたところに着信音が鳴り響いた。画面に表示された名前に、どうせ遅刻の言い訳だろうと獅子神は眉をひそめ応答する。
「オメー、自分が決めた時間に間に合わねぇなら
――
」
「敬一君、前、前」
「あぁっ?」
顔を上げるが、目に入るのは校門に掲げられた校名くらいだ。
「そっちじゃなくて。もうちょい奥。建物のほう」
獅子神は誘導に従い視線を移動させると玄関近く、庇が作る影の中に叶の姿を見つけた。いつものパーカー姿のおかげで遠目からでも、それが叶だと難なくわかる。用事とは着替えのことだったのか。夏用の素材なのかもしれないが、酷暑の中で見ると少々異様に映る。あれならホテルで着ていた服のほうがよっぽど涼しいだろうなと、獅子神自身、汗が肌を伝うのを感じながら思った。
「あ、今、時間になったな」
電話越しにしれっと言い放つ叶に、獅子神は勇んでいた言葉をぐうっと呑み込む。そうして代わりとばかりに盛大に溜息を吐いたあとで、校門を横切り、大股で叶のもとへ向かった。獅子神が自分のほうへ来るのを確認すると、叶はくるりと踵を返しゆっくり校舎の中へ入っていった。
「オマエ、さすがに不法侵入はマズいだろ」
のんびりと歩く叶に追いつき、獅子神は声を潜めて諌める。だだっ広い空間には背の低い下駄箱がずらりと並んでいる。今のところ二人以外に人影は見当たらない。
「確かに不法侵入は良くないな」
「じゃあ
……
」
聞き分けが良さそうな返事をしておきながらも、足を止める気配がない様子を訝しむ。叶はようやく立ち止まったかと思えば、今度は来校者用の下駄箱前で靴を脱ぎ始める。人の話を聞き入れない態度にムッとする獅子神に、叶は青い紐のついたカードケースを差し出す。
「だから、さっき許可取りしておいた」
笑いながらさらりと言い放つその口元には、どこか得意げな色が見える。カードケースの中には「来校者」と書かれた紙が入っていてナンバリングがされていた。
どうやら叶は待ち合わせ時間より早く現地入りし、許可取りなど諸々の調整を既に済ませていたらしい。こんな怪しい風貌の部外者にそう簡単に許可なんて下りるのか。半信半疑の獅子神を見て、叶は心外だと言わんばかりに大げさに肩をすくめる。叶の手がポケットを探り始めると、そこから小さなカードを出して獅子神に手渡した。
「なんだこれ」
受け取り確認したそれは名刺だった。そこに印刷された文字を目でなぞり、獅子神は思わずぎょっとする。肩書は校長。名前は昨日、獅子神が挨拶をした恩師のものだった。彼が今この学校で校長をやっていることは昨日の集まりで知っていた。理解できないのは、なぜ、叶がこの名刺を持っているかだ。なにか良からぬことでもしでかしてないかと焦りを覚える。
「別にそんなとんでもないことはしてないって。ちゃんと丁寧にお願いしただけ。敬一君からしたら意外かもだけど、オレって下準備や根回し結構できるタイプなんだぞ?」
獅子神からひらりと名刺を回収し、少しおどけてそんなことを言う。どんな手を使ったのか獅子神には皆目見当もつかないが、ひとまず許可が取れたというのは本当のようだった。
普段の奔放さからは想像もつかない行いが、獅子神をなんだか妙に落ち着かない心地にさせる。その非常識さや突飛さが年齢の印象を凌駕するのでつい忘れがちだが、叶も三十手前の成人男性だ。常識的な行いは、やれないわけじゃなく、やらないだけなのだと再認識する。それはそれでどうかと思うが。
「そういや対応した教師がオレの観測者らしくてさ。オレと遭遇するなんて、夏休み真っ只中にせっせと出勤してた甲斐あったってもんだよなー」
叶が脱いだ靴を揃えながら付け加えた情報に、獅子神は初めて撮影に付き合わされた時のことを思い出す。叶の「観測者」とやらは獅子神が思ってる以上にそこら中に居るものなのかもしれない。もしかしたら、今着ているパーカーも、ホテルを出る時にはしてなかったコンタクトや化粧も、いつ遭遇してもいいように、あわよくば好意を利用できるように。常に見て見られることを望む男だ。そこまで徹底していてもおかしくはないと思わされる。もちろん獅子神が買い被っているだけの可能性もあるが。
廊下をまっすぐ進む叶の背中を眺めながら、獅子神は「似合わねぇな」と声には出さず呟く。校舎なんて否が応でもノスタルジックな気分に襲われそうなシチュエーションにも関わらず、そこに叶が存在するだけで脱出系のホラーなんかを連想してしまう。良くも悪くも叶の存在感の強さを改めて実感させられる。
「敬一君、六年何組?」
不意に投げかけられた質問で、獅子神はハッと我に返る。
「あぁ? もう覚えてねぇよ、そんなの」
「そっかー。それじゃあ、まあ、テキトーに」
そう言って叶は階段を見つけると迷いなく上っていく。一段が叶には低すぎて、数段をまとめて一歩で跨ぎながらグングンと進む。目指すは高学年の教室がある最上階だった。
階段を上りきると、叶は手前すぐの教室へ入っていく。後ろ姿を追って同じく足を踏み入れた瞬間、獅子神は既視感に襲われた。知っているような、よく似た別の場所なような。この教室が昔の自分のクラスだったかは正直分からない。それでも、あの頃の記憶を引き摺り出させるには十分だった。
窓側一番後ろの席。不意に映画のワンシーンのように当時の記憶が獅子神の脳裏にカットインしてくる。席替えでその場所になれたのは獅子神にとって小さな幸運だった。朝登校してから授業が始まるまでの時間や給食からの休憩時間。窓の外に意識を向けさえすれば、教室のざわめきとは無縁でいられた。窓を開けていると、ぶわりとはためくカーテンが少し煩わしかったが、それ以上に獅子神の席を覆う布一枚の存在が教室から自分の居場所を切り離してくれるようで少し息がしやすくなった。
ぐるりと教室を見回した叶が、窓側後ろから二番目の席の椅子を引く。座ってみるが小学生の机なんて合うはずもない。膝を折り曲げ、しゃがんでいるのと大差ない格好で、叶はおいでおいでと手招きをする。教室に入った瞬間、獅子神の視線がどの机を捉えていたのかなんてお見通しだったのだろう。
「なあ、敬一君」
同じく小さな椅子に腰を掛けると、叶はやけに神妙な顔で話しかけてくる。内緒話みたいに声が潜められ、聞き逃さないようにと集中して耳を傾けた。なんでこんなところに来ようと思ったのか、種明かしでもされるのかと小さく息を飲む。
「敬一君ってさ、好きな子いた?」
そんな獅子神の期待とは裏腹に、叶の口から出てきたのは全くの想定外な質問だった。
「は?」
「小学生のとき。甘酸っぱい初恋、みたいなやつ」
「ねーよ」
なにを考えているのか。いや、別になにも考えていなく、ただ思い付きで話をしているだけなのか。ここから更に叶の真意を探るのも馬鹿馬鹿しくなってきて、獅子神はもう深くは考えず質問に答える。
「ないの? 昨日“初恋の君”と再会、みたいなの」
「あるかよ。そういうオマエは?」
叶に“好きな子”なんてカテゴリーがあること自体が想像しづらい。そもそも存在しているはずの小学生時代が獅子神には全くイメージできない。
「あ、聞きたい? オレのバレンタインの逸話」
「自分から語るやつは、大抵盛ってんだろ」
「じゃあ、嘘かどうか見抜いてみせろよ?」
くだらない話だった。どうでもいい、戯れのような意味のない雑談。それでも、それが妙に心地よく感じられた。あの頃、カーテンの向こう側でクラスメイトたちがしていたのも、たぶんこんな他愛ないやりとりだったのかもしれない。
叶の与太話が落ち着く頃には、教室の空気はすっかりなじんでいた。話のしょうもなさに小さく笑いあった後で数秒沈黙が流れる。不思議と居心地の悪さはなかった。伏せられた叶の視線がふいっと窓の外に向く。なにか面白そうなものでもあったのか。黙ったままの横顔をしばらく鑑賞していると、特に気を惹くようなものはなかったのか叶の視線が獅子神へと戻ってくる。獅子神の瞳を捉えると、叶はスッと目を細める。
「で、どう? 感想は?」
唐突な問いかけだった。獅子神は一瞬面食らったものの、すぐに意味を理解する。足りない言葉に、なんのだよ、とはぐらかしてもよかったが、獅子神が分かると踏んでの言葉数なのだろう。ここでしらばっくれるのは、期待に応えられないと言っているようで不本意だった。
叶はおそらく母校に足を踏み入れた感想を尋ねている。卒業後から寄り付かず、足を運ぶことも思い出すことも避けていたようなそんな場所に、今、こうして連れてこられた感想を。獅子神がどう感じたのかなんて叶には察しがついているのかもしれない。それをわざわざ聞いてくるあたりが、叶らしいとも思えてしまう。
「なんつーか、思ってたのとは違った、って感じだな」
なんにも感じなかったかと言えば嘘になる。どこか見覚えのある光景に小さな記憶の切れ端が、あの頃の感情を引き連れて蘇りはした。それでも、もうその痛みや苦みに鮮やかさはなかった。
終わらないごみ捨ての当番や、給食の時間に向かい合わせた机の隙間。混ざれない昼休みのドッジボールや班決めをするときに息を殺す疎外感。授業中に飛んでくる小さくちぎった消しゴムの礫。卒業アルバム最後のページにあるスカスカの寄せ書き欄。それこそ掘り返せばそんなものいくらでも出てくる。
これら全てに蓋をして見ないままにしていたのに、こうしていざ直面してみれば古びたフィルムみたいに色褪せた光景でしかなくなっていた。意識的に触れるのを避けていたが、実際に触れてしまえばなんとも呆気ない。ぼやけた記憶が、薄く浮かび上がるだけだ。
「子どものときの思い出の場所ってさ、目線変わるから大人になるとギャップあるよな。昔すっごく怖かったものがそうでもなかったり、すっごく魅力的だったはずのものもそうでもなかったり。デカく見えてたものも小さくなっちゃってる」
そんな単純な話ではないようで、案外そんな話なのかもしれない。ここはもう獅子神にとって忌避すべき思い出の巣窟なんかじゃなく、ただ昔に通っていた公立の小学校でしかなかった。
「せっかくだし、行っておきたい場所ある? やってみたかったこととか」
「
……
いや、ねーな」
「じゃあ、次行こっか」
勢いづけて立ち上がると叶は大きく伸びをする。
「あーっ、腰痛いっ」
「こんな小せぇ椅子にずっと座ってたんだから当たり前だろうが」
身体を捻ったり腰を反らしたりする叶を眺めながら、獅子神は呆れたように言う。ここで解散かと思いきや、まだ終わりではないらしい。なにが楽しいのかは分からないままだったが、ここまで来たら叶の気が済むまで付き合うほうが楽だろう。
◆◆◆
二人並んで校門を通り過ぎ、当時の通学路を辿るようにして進む。少しだけ日は傾いたものの、暑さはまだまだ居座っている。滲む汗を拭いながらできるだけ日陰を選んで歩いていく。道沿いにはなんとなく見覚えのある建物と、真新しい店が入り混じっていた。時折、当時と変わらぬ姿のまま残っているマンションや塀がところどころにあって、過去と現在が継ぎ目なく混ざっている。
ところで隣を歩く男の目的地はどこなのか。叶の口振りから考えれば、おそらくは昔の自分に縁がある場所なんだろうと獅子神は当たりをつける。もう少し先にある公園にでも寄るのかと思いきや、叶は不意にその手前で曲がり細い路地の先へと向かった。どこに行くつもりか聞こうとしたとき、視界の先に古めかしい看板が飛び込んできた。
「あ
……
」
そこにあったのは、昔とあまり変わらぬ佇まいの駄菓子屋だった。菓子だけではなく文具や日用品も置いていたので、どちらかと言えば雑貨屋というほうが正しいかもしれない。勝手なイメージでとっくに店じまいをしていたと思っていたが、まだ健在だったことに獅子神は驚く。小学校からもほど近いこの店は近所の子どもたちに馴染みの場所だった。もっとも獅子神が利用する機会は数えるほどで消しゴムや鉛筆など必要最低限のものを買うときくらいだったが。
低い出入口に軽く頭を下げて入ると、店内には今どきあまり見かけない駄菓子や、手のひらに乗るほどの小さなおもちゃが並んでいた。どこか甘い匂いと少しほこりっぽい空気が妙に落ち着く。ここだけ時間が止まっているかのようにも思えたが、レジを見ると電子決済の案内があり、時の流れを感じさせた。
「予算五百円までで好きなもの選んでみようよ。今日はオレがおごるからさ」
ゼロの数が全然違う世界で生きているくせに、どこか含みを持たせてこんなことを言う。いちいち律儀につっこんでたまるかと獅子神は視線を叶から駄菓子売り場へ移す。しゃがみ込んで目線を低くすると、途端に当時の焦がれるような気持ちが蘇る。すぐ隣に気配を感じて見れば、同じくしゃがみこんだ叶が真剣な顔で駄菓子を吟味している姿があった。その様子を可笑しく思う気持ちと、そうしていいんだなという安心感が綯い交ぜになりながら獅子神も同じく価格とにらめっこをしながら選び始める。
予算の五百円ギリギリで厳選し、小さなカゴへと入れていく。差額が一円単位になったところで叶の手が伸びてきて、そのままカゴをレジまで持っていってしまった。時計を確認すると思ったよりも時間が経っていたことに驚く。没頭するほど真剣になっていたことが気恥ずかしい。それでも楽しかったのも事実だ。
店先のベンチに並んで腰を下ろし、買ったばかりの菓子やおもちゃをそれぞれ広げる。夕方と呼べる時間帯。風も吹いてようやく暑さもマシになってきた。普段なら子どもたちが陣取っている場所に、こうして大の大人が駄菓子を広げて食べている姿は傍から見てどう映るのかが少し気になる。
「敬一君、敬一君、見て見て?」
かたやそんなことは全く意に介していなさそうな叶がトントンと獅子神の肩を叩く。獅子神が自分のほうを向いたことを確認すると、叶はべぇっと舌を出して見せる。肉厚で長めの舌は鮮やかな青色に染まっていた。さっき一緒に食べたソーダ味のガムのせいだろう。
「うっわ
……
」
「敬一君も同じの食べただろ? べーってしてみろよ」
出されていた舌がスルっと口の中へしまわれると、叶は獅子神にも舌を出せと要求する。
「しねーよ、そんないちいち」
「こんなとこでカッコつけても、なんにもなんないぞ? むしろダサい」
「カッコつけてなんかねぇーよっ」
そう応じながらも引く気の無さそうな叶に、言うとおりにしたほうが早いなと、獅子神は半ば投げやりに勢いよく舌を出してやってみせた。「これで満足かよ?」と言おうとした矢先、パシャっと軽いシャッター音が聞こえた。
「いいね。楽しそうにはしゃいでる感じ」
スマホの画面を確認する叶は満足げだ。
「捏造じゃねぇか」
「まあまあ。楽しんでるのは事実だろ? 敬一君、駄菓子デビューおめでとー」
獅子神の不平を受け流し、叶は獅子神を祝いながら顔の周囲で指先をすぼめて開くのを繰り返す。パッパッとくっついた指同士が離れるたびに、ふわふわと白い煙のようなものが舞った。
「なんだこれ
……
」
「なんか火使わないでも煙が出るってやつ。正確には煙じゃないけど。そういえば、なんなんだろうなコレ」
そんなことを言いながら叶は自分の指先をまじまじと見ている。どうでもいいような話をして、身体に悪そうな菓子を口にする。獅子神が普段なら避ける類の食品を今日はすんなりと受け入れている事実を叶が囃したてることはなかった。
買ったものをひととおり楽しんだあとは、食べ終えたゴミを片手に店内へ戻る。店の隅に常設のゴミ箱を見つけて、ぽいぽいとそこに投げ入れていたときだった。
「あ」
背後で小さく上がった声に、獅子神は手を止める。
「ぁん? どーした?」
「いいもの見つけちゃった」
叶が言ういいものとやらが、なにかろくでもないものではないかと恐る恐る確認する。振り向いた先には叶が満面の笑みを浮かべながら花火の袋を掲げていた。
「夏も終わるし、オレと思い出作ろうよ」
CMのキャッチコピーみたいなことを言い出す叶に獅子神はしらけた表情を浮かべてみせる。
「なにが悲しくて野郎二人きりで花火なんて
……
」
「そんなこと言って、隠せてないぞ?」
狭い店内で横を通りすぎざま、叶はポンポンと獅子神の肩を軽く叩いてレジへと向かう。表情に出してはいないはずだったが、思わずソワソワとしてしまったことは叶にはしっかりバレていたらしい。
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マシュマロ
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