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mishiadd
2025-08-05 00:34:47
2696文字
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汝の神は嫉妬深い神である:なまえをよんで
【FGO軸】ずっと「イオリ」って呼ばれてたのに突然手首掴まれて「伊織」って呼ばれて違和感に怯えた顔してほしさあるから「イオリ」と「伊織」の発音に違いがあることにしたい政党です 清き一票をよろしくお願いします【剣伊】
『汝の名は嫉妬深い神である』:
https://privatter.me/page/6795e33594a05
『汝の神は嫉妬深い神である:カナリヤ』:
https://privatter.me/page/67b0a31eac685
1
2
蝉が鳴いていた。
ミーンミンミンミン
……
とけたたましい声に混じって、ジーワジーワと低音で響く声がする。吹き抜けた夏の爽やかな風にさわさわと木々が揺れ、緑葉の擦れる音がする。
古い神社の境内だった。拝殿をくるりと取り囲む、張り出した濡れ縁に腰かけている。石段の上に置かれた賽銭箱からまっすぐに伸びたような参道にも、その両脇に構える手水社や社務所にも、人の姿はない。ただ、神社の四方を覆い隠すように茂っている深緑の、日射しを透かして落ちる木漏れ日が地面に揺れている。
ぷらぷらと細い両脚が揺れている。ひどく機嫌がいいようだった。ジーワジーワという蝉の声と共に顎を伝った汗を手の甲で拭って、彼が伊織に言った。
「ここはいつ来ても気持ちのよい場所だな? イオリ。覚えているか? 鳥越神社だ。浅草から少し足を延ばした先にあったろう」
鳥越神社は覚えている。ただ、彼と行った記憶が伊織にはないだけだ。
伊織は答えずにいたが、伊織が何も答えないのはいつものことだった。彼は、伊織が答えようと答えまいと、伊織がそこにいる限り機嫌がいい。
――
伊織がそこに
在る
限り、機嫌がいい。
「自画自賛だが、ここはなかなか趣味のよい神社だと思うのだ。
――
まあ、こうして穏やかな時を過ごすのならば、誰か
他の神
たにん
の屋敷に上がり込むよりは、自分の家の方が落ち着くというだけだがな!」
「ウフフ!」と幼く無邪気なような笑い声を上げ、彼がぷらぷらと一層大きく両脚をぶらつかせた。それから急に伊織の肩にどすんと体重を預けてくる。「エヘヘ」と照れたような声を上げ、嬉しそうに伊織の肩口に柔らかな頬を摺り寄せた。
ミーンミンミンミンミンと蝉が鳴いている。境内の中を、さああああと涼やかな音を立てて風が吹いていく。
伊織が微動だにせぬ中で、彼はただ伊織に頭を預けている。しばしそうして蝉の声を聞いていた後、彼が急に顔を上げてひどくはしゃいだような声で言った。
「そうだ、イオリ! 『だるまさんがころんだ』をしよう。儀の最中にはそんな暇などなかったが、今は我らたったふたり、誰も見ておらぬし、たまには童心に帰ってみるのも楽しかろう。よし、イオリがオニだ!」
満面の笑みを浮かべた彼に、伊織は腰かけていた濡れ縁から追い立てられる。彼の
気分
に振り回されるのはいつものことだった。きっとこれもただの思い付きで、ただの気まぐれで、そしてきっとなんの意味もない。
神とはそういうものだった
。
「わかった」と従順に頷いた伊織に、ぱっとタケルの表情が明るくなる。「そっちの木の幹に手を当てて、私に背を向けて立つのだぞ!」と弾んだ声で指示を出しながら、彼が対角線上にある木のあたりまで下がる。
伊織が振り返ると、「いいぞー!」と彼が両手を大きく振っていた。
――
くすり、と伊織が思わず笑みを零す。昔、幼い義妹とこんな遊びをしたことが
――
あったような気がする。ぼんやりとしてわからない。
義妹はいた。きっといた。
――
それに加えて、もし伊織に弟がいたら、きっとこんな感じだったのかもしれない。
遠くの木の下にいる彼に今一度柔らかく目配せをする。「今数えるよ、」と言って、前を向いた直後に、
「
伊織
」
――
ひたひたと這い寄るようにして伊織の
背後にぴったりと立っている
、
彼の気配を感じる
。
伊織の呼吸が僅かに荒くなる。目前の木の幹に視線を向けたまま、微動だにできないでいる。
振り向けないでいる
。
振り向けば、そこにぽっかりと新月のように空いたふたつの虚空を見るような気がする。ふ、ふ、と小さな呼吸を繰り返している伊織の、木の幹に触れている手首に、何かがぬらりと絡みつくのを感じる。じり、と僅かに目を動かしてそちらを見る。細い指の、子供のような手が、伊織の手首を掴んでいる。
「
伊織
」
答えてはいけないと思った。その呼びかけに答えれば、きっと
どこか
に連れていかれてしまうのだと直感した。あるいは、
奪われる
のだと直感した。
ぐ、と下唇を噛む。その下唇にひたひたと何かが触れるのを感じる。目線を落とす。細い指先が、伊織の唇を抉じ開けようとしていた。
「
伊織
。
――
返事して」
「
……
ぁ」
あるいはきっと、その返事とも言い難いかすかな呻きのようなもので、
彼にとっては充分だったか
。
腹に回された細腕が、その細さに不釣り合いな力で伊織の体をひっくり返す。そのまま、どん、と鈍い音のする程に、木の幹に強く背中を押し付けられる。そのまま両腕で体が浮くほどに押さえつけられ、嵐のような激しさのうちに呼吸を唇ごと奪われる。
――
いつものことだった。
――
彼の家
で、
彼の贄
が、彼の前に供される。ごく当たり前のことだった。
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