もち粉
2025-07-01 10:36:17
5460文字
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歌えカナリヤ、告げよヒバリ 下


再び、パッタドルの話
そんなつもりはなかったんだけど、ミスシスっぽいかもしれないです
エルフの成人の儀文化を捏造してます

 

 五一二年六月二一日、パッタドルは海上で八〇歳の誕生日を迎えた。
 八〇歳、エルフの成人となる。一足先に誕生日を迎えた同期たちがそうしてもらったように、隊長の執務室に呼ばれて成人に贈る詩をミスルンに咏み掛けてもらっている。
 
 ――学び終えて己を磨き、人々に尽くす道を歩まんことを
 ――これより先、国家の誉れを守り、世の道を正しく歩むべし
 
 これはエルフの貴族社会では定番の詩で、地域や家によって多少は異なるが、その共同体の長や年長者よって咏みかけてもらい成人を寿がれるのは変わらない。
 
 ――貴族たるもの、義を持ち、勇をもって世を導け
 ――信義を持って己の道を正し、世に名を刻め
 ――知識を灯し、未来を照らす光とならん
 
 よく知っている詩ではあるが、今、自分が成人としてこの言葉を贈られていると思うと、身が引き締まる思いだ。
 
 ミスルンは一拍置いて、眩しいものを見るような目で、続けた。
 
 ――情熱をもって、人生を生きよ。
 
 最後の一節は、パッタドルの初めて聞くものだった。
 どこかに原典があるのか、それともミスルンが即興で付け加えたのかは、パッタドルは今も知らない。
 
 けれどその言葉は、あの時のミスルンのやさしい眼差しと共に、今もパッタドルの胸にある。
 
 
 
 その日の午後、パッタドルは正式にミスルンの副官に任命された。
 
 
 
 
 
 ――情熱をもって、人生を生きよ。