呪里
2025-06-25 19:25:14
9123文字
Public Code_Abyss 小話
 

〈貴方の前では 今でも〉

熱を出した呪里の小話


 ぼんやりと
 
 視界に色が付いていく

 ここはどこだろうか

 さっきまで私は自分の部屋にいたのに








 あぁ

 これは夢だ

 私の限界が見せている夢

 そうじゃなきゃ納得がいかない










 色が付いてきたとはいえ

 辺りは薄暗かった

 そこらじゅうに蜘蛛の巣が張られ

 地面はでこぼこしていて歩きずらい









 耳をすましてみると

 離れた場所から声が聞こえた

 誰がいるんだろうか

 一歩づつ進んでみる








 声の主は一人ではないようで

 近づくにつれて声が増えてきた

 怒っているのだろうか

 荒々しい怒鳴り声だった








 黒以外が視界にはいると

 私はピタリと足を止めた

 呼吸があさくなり

 汗が頬を流れ落ちる








 目の前に見えたのは

 かつての私が生きた場所

 腐敗臭が漂う

 出口のない地下牢だった

 
 






 ぼやけていた檻の中が

 はっきりと 鮮明になっていく

 やめて

 私に〈それ〉を見せないで


















 痛みを 思いださせないで


















 小さなこどもが

 目の前で大人から暴力をうけている

 ある者は嘲笑あざわら

 ある者はさげすんだ目をして








 どれだけ泣こうがわめこうが

 大人達は止まらない

 〈あれ〉が血の繋がった者たちだなんて

 信じたくなかった









 かつて吐かれた言葉の数々が

 再び私にりかかる

 それは解けない呪いのように

 強く 重く 私の全てをめつける











 いたい


 いたい


 いたい


 いたい









 視界が歪み

 私はその場に倒れ込む

 我慢していた涙が

 あふれんばかりに流れていく









 
 目を塞いでも

 両手で耳をおおっても

 暴力が 暴言が

 はっきりと見聞きされてしまう







 
 だれか

 だれかたすけて

 この地獄から  この世界から

 救ってください





























 『呪里』



 『呪里』



 

 だれかが私を呼んでいる

 聞き覚えのある声だった

 もう一度聞きたくて

 私は耳をすます







 『呪里』

 『こっちへおいで』

 







 檻の反対側から

 声と共に光が見えた

 あの日私を 私達を救ってくれた

 愛おしい声









 涙をぬぐ

 私は走った

 今まで出したことのないスピードで

 光に向かって 一直線に







 
 聞きたい

 あの声を

 もっと近くで

 もっとそばで









 近づくにつれて

 光は宙に浮かぶ玉から発生していた

 玉の場所に着いてどうするのか

 考える余裕なんてなかった







 息を切らしながら

 目と鼻の先にまで近づいた玉を

 私は躊躇ためらうことなく

 両手で包み込んだ








 次の瞬間

 玉は今まで以上の光をはな

 あまりの眩しさに

 私は思わず目を強くつぶる

























 〈夢〉からめる時がきたようだ