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呪里
2025-06-25 19:25:14
9123文字
Public
Code_Abyss 小話
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〈貴方の前では 今でも〉
熱を出した呪里の小話
1
2
3
4
『うーん、一通り出来る検査はしてみたけど、ほんとに熱がでただけっぽいね』
氷枕を新しいものに取り替えながら、類はそう呟いた。
『溜まりに溜まった疲れが爆発しちゃったんだろうねぇ』
「それでこんなに高熱になるもんなの
…
?」
体から流れてくる汗をゆっくりと拭きながら呪里は尋ねる。
『なるよ〜?人によっては四十度近くに体温上がっちゃう可能性もあるんだから』
はい、どうぞと類は氷枕を呪里の頭の後ろにそっと添えた。
「納得いかないなぁ
……
」
『まぁ、なっちゃったものはしょうがないよ。二、三日は絶対安静にしててね?』
「えぇ
……
」
呪里は
眉間
みけん
にシワを寄せた。
外部での仕事は一通り済んだが、呪里にはまだやるべき作業が残っていた。
「始末書とか確認しなきゃ
……
。飛華んとこにも報告に行かなきゃだし
……
」
ゆっくりと体を起こして動こうとする呪里を、類は
慌
あわ
てて止める。
『ダメダメ動いちゃ!それくらいの雑務なら俺達がやっておくから!』
「でも
……
」
『書類は朧に見てもらうし、飛華さんの所には俺達が代わりに行くから!ね?』
それでも動こうとする呪里をなだめながら、類は他の幹部にむけてメッセージを送った。
すると
『了解。こっちは俺達に任せて、お前はボスのそばにいてやってくれ』
と朧から返信が返ってきた。
『ほらボス、見て?朧もこう言ってるんだから、お仕事行かなくてもいいんだよ』
類からスマホの画面を見せてもらうと、安心したのか呪里はぼふっとベッドに倒れ込んだ。
「
……
わかった」
もう仕事に行かないという意志を確認すると、類はそっと呪里に布団をかけ、お腹の
辺
あた
りをぽんぽんと軽く叩いた。
心地よい
間隔
かんかく
でゆっくりと叩かれていると、段々と自身の内側から眠気がくるのを感じる。
『そうだボス、お腹は
空
す
いてる?なんでも作ってあげるよ?』
「んー
……
?別にそんなにすいてはいな
…
」
グゥーー
言い終わる前に、呪里のお腹から音が鳴った。
『
…
すいて?』
「
……
る」
『ふふっ。お腹は素直だったねぇ?』
「空腹の自覚はそんな無いんだけどな
……
」
くすくすと笑う類を横目に、呪里は不思議そうな表情をした。
『とりあえず、なにか食べよう?なにがいい?』
「んー
………
」
暫
しば
しの間考えると
「じゃあ
…
ゼリー」
『ゼリー?』
『ん。りんごのゼリーが食べたい。果肉が入ってないやつ』
頭の中に浮かんだのは、スーパーなどで売っている三連パックのゼリー。
「今あれが無性に食べたい気がする」
『りょうか〜い♪すぐに用意するね。ちなみに冷蔵庫には入って
…
?』
「もちろん無い」
『ありゃりゃ、じゃあ買ってこないとだね』
類はよっこいしょと立ち上がると、出かける為に身支度を整え始めた。
『他になにか欲しいものはある?ついでに買ってくるよ』
類は呪里のおでこにそっと手を添えて問いかける。
「
………
わかんない。特に今は思いつかない」
『そう?じゃあ俺が外でた後に思いついたら電話かメールしてね?』
「ん。わかった」
『よぉしいい子♪それじゃあ途中で本部お薬取りに行くけど、パッと行ってパッと帰ってくるね?』
類が部屋を出ようとすると
「あ、待って類」
『ん?なぁに?』
呪里は床から黒い手のような触手を創り出し、リュックの中をゴソゴソと
漁
あさ
り出した。
「あった。これ」
リュックから何かを取り出すと、類に向けて差し出した。
『これは
……
鍵?』
「そ、家の鍵」
『いいの?借りちゃって』
「さすがに何度もベランダから
行
い
き
来
き
されるのはちょっとね
……
」
『あっ、そっか』
類は自分がベランダから入って来た事をすっかり忘れていたようだ。
「渡しておくからさ、今度はちゃんと玄関から出てね」
『うん』
身支度を終え、類は部屋のドアノブに手をかける。
『じゃあ、いってくるね』
「いってらっしゃい」
パタンとドアが閉まり、階段を降りる音が遠くなっていく。
「
……
ふぅ」
ゆっくり呼吸をしながら、呪里は瞳を閉じる。
(類が帰ってくるまで、少し寝よう)
先程まで類に触れられていたからか、
僅
わず
かに腹部に温もりを感じた。
これならすぐに眠りにつけそうだ。
闇に
覆
おお
われた視界の中で、少しずつ意識が遠のいていく
思考を放棄し
かつての自分のように
人形のようだったあの頃のように
自
みずか
らの糸を切って
そっと眠りについた
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