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orikoriko1125
2025-06-18 10:23:54
7672文字
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カキゼイ
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〇〇の日まとめたの
キスの日 プロポーズの日 恋人の日のカキゼイ
1話目以外は未来設定の捏造しかないよ!!
書き下ろした3話目だけいきなり事後スタートなのでR15くらいです
本当にすみません
※コアルヒーの背中に水=like water off a duck's back(アヒルの背中に水をかけるようなもの、何の効果もない)
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3
4
エンドロールに連なりたい
初めてのデートで観るのには、きっとふさわしい映画ではあるのだ。若い男女が想い想われ、喧嘩したりすったもんだが起きる。一人で観るなら隣のスクリーンで上映されているシリーズもの、グラードンとカイオーガの最後の戦い
――
三回目のではあるが
――
一択だったなと思い、掴んだポップコーンを口に入れる。
興味のない物語を観るより、隣のゼイユの横顔を眺めている方がきっと楽しいはず。スクリーンの光が当たった鼻筋はいつ見ても完璧な角度で、本当にこの女がカキツバタの恋人になったのか、この期に及んでも疑わしい。内容に合わせて変わる表情は見飽きなかった。
居眠りをしている間に、物語はラストシーンへと向かっており、慌てて居住まいを正す。変わらずスクリーンに夢中な様子のゼイユの目尻に、涙。そのとき確かにゼイユが発した「いいな」がカキツバタにとって忘れたらいけないこと、になったのだ。
「だってブライア先生急に来るんだもの」
「いや今日は空けとけってずっと言ってたろ?」
あの日から数年経って、やっと彼女の願いを叶えることができる。なのに肝心のゼイユは、遠いイッシュから、急遽パルデアに来る恩師と勝手に約束をしていた。
「わかってるわよ、ちゃんと夕方には帰るし。先生ったら近いうち行くからなんて言って、今朝着いたよって連絡寄越すの」
このワガママお騒がせ娘のゼイユを振り回す程のブライアは、カキツバタですら逆らうのは面倒だと思うほどの人物だ。行ってこいという他無い。
「へーへー、先生によろしくな」
共に留守番を任された彼女のモルペコに、早速おやつをおねだりされる。予定まで居ないのは却って好都合かもしれない。ソファに沈み込むと、内容は全く覚えていない映画のラストシーンだけが脳に再生される。
世界中の金銀、宝石を夜の海に放り投げたような夜景の見えるレストラン。どうやって持ち帰って飾るのか、想像もできない百本の真っ赤なバラの花束。指輪もテラスタルするのか、と言わんばかりのダイヤの指輪。全てが旧時代のポケウッド映画のような演出だった。けれども、涙を浮かべて「いいな」とゼイユが言ったのだ。ファーストキスは普通がいい、と言った口で。
レストランもバラも、準備をするのは容易かった。パルデアには百万ボルトの夜景が見えるハッコウシティがある。事前に注文さえすればバラも手に入る、花瓶に入らなければバスタブにでも入れておけばいいだろう。
一番骨が折れたのは指輪だ。なんせゼイユは自分の気に入ったものしか身につけない。赤い箱、青い箱、黄緑、黒
……
。いくつ店を駆けずり回ったか。一番長く一緒にいたはずの実弟に意見を求めれば、カキツバタでもわかるくらいゼイユの好みから外れたものを選ぶのが本当に面白かった。
ここまでやっておいて断られたら、とは毛頭思わないがどうか指輪が正解でありますようにとだけ祈る。高い上に交換不可能だ、という消極的理由で。
『着信ロト!』
登録はしていないけども、見覚えのある番号だった。件の花屋。
『本当に申し訳ありません! なぜかガラルの方へ配送されてしまって
……
』
哀れ、百本のバラは行き先を間違えてしまったようだった。気に病まないよう伝え、バスタブがバラに占領されなくなったことに感謝する。だって、どう考えても多すぎるのだ。数十本ならすぐに調達出来るし、花瓶にも入る。花屋を調べようとスマホをロトムを呼ぶと、再び着信。
『お客様同士のトラブルで店が破壊されて
……
』
なんでも会食中に言い合いになり、店内でポケモン勝負に発展、止める間もなく店ごと巻き込まれたと。
キョジオーンとカマスジョーのバトル、最後しおづけにされたカマスジョーが先に瀕死になった、という結果まで聞いてないのに聞かされた。
「
……
これ指輪無くなってねえか!?」
予定の三分の二は反故になっている。不安に駆られ、クローゼットの奥底に隠した小箱を確認した。ちゃんと大人しく出番を待っていたが、残念ながら延期だ。
ゼイユに、行くはずだった店が壊れたから予定が無くなったとメッセージを送る。野良バトルの結果を知りたがったので伝えると「なんかおいしそう」と返ってきた。
何もかもにケチがついた気がする。ソファに寝転び、満腹のモルペコの寝息とすっかり同調していた。
「おはよ、あんたいつから寝てたの?」
記憶ではまだ太陽は真上だったはず。天窓からはビーズみたいな星が覗いている。
「
……
覚えてねえ。いつ帰ってきたんでぃ」
ぼうとした頭で考えるより、漂う香りに昼食を摂ってないことに気付かされた。
「さっき? ブライア先生ずっと大穴から出たがらなくて、参っちゃう」
やっと這い出てきたその足で宝食堂に向かったようだ。並んだおにぎりを見てしおづけにされたカマスジョーよりこっちだなと、密かに思う。
「この花、綺麗だな」
バラのために用意した花瓶には、いつの間にか大ぶりの白い花が一本だけ刺さっていた。
「オールドローズ、宝食堂の女将さんの家の庭に咲いたんだって。ねぇ、うちに花瓶なんてあったっけ? ちょうどよかったけど」
百本のバラもこうして誰かの家で咲いてるなら、浮かばれる。そして規模が小さくなってもこうして帰ってきたのが愉快だ。
「たまたまジム戦中で、ムクホークがからげんき打ちまくってたの。容赦なかったわよ」
画面の中では非凡サラリーマンの相棒が輝きを放つ、このサイズにはどうしても勝てない。
計画は全て白紙、指輪も先に見つかる可能性の方が大きい。どうしたものかとリモコンを持ち上げる。
「
……
げ」
今朝まで反芻していた、唯一覚えてるラストシーンが映し出された。花束がデカすぎて俳優の顔が見えなくなる。なぜこのタイミング、と恐る恐るゼイユを見た。
「この映画
……
つまんなかったわよね」
「は?」
「つまんなすぎて寝ちゃったけど、カキツバタも寝てたでしょ」
花束を受け取った女優が「嬉しい!」と叫ぶがやはり顔が見えない、これも覚えている。けど、記憶と全くゼイユの反応が違う。
「
……
おまえさん、これ見て泣いて「いいな」って言ってたろぃ」
ゼイユの眉がひそみ、画面を見ながら逡巡した。
「あくびしたから、じゃない? 「いいな」は、これ! 今見ても美味しそう〜」
テーブルの上に置かれたドルチェ。舞台となっているオーセンティックなレストランに似つかわしくないほど、アイスやケーキが盛られている。そういえば映画の後、ケーキが食べたいとカフェに赴いていた。
「マジかよ
……
」
そうだ、こういう女なのだ。人の気も知らないで「やっぱグラードンとカイオーガの戦いのほうが面白かったかもね」なんて笑う。誤配送した配達員と、レストランでバトルをした客に助けられたのかもしれない。
「あ、でもこの指輪は素敵だったの覚えてる」
四角い多面のダイヤが女優の指に嵌められる。
プリンセスカット、と言うんです。店員の説明を聞いて、どこかの誰かさんにぴったりだと思って決めた。やはり出番は延期にならない。今日の主役のお出ましだ。
あの日と同じ、エンドロールを見たらすぐに立ち上がろうと決めた。
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