orikoriko1125
2025-06-18 10:23:54
7672文字
Public カキゼイ
 

〇〇の日まとめたの

キスの日 プロポーズの日 恋人の日のカキゼイ
1話目以外は未来設定の捏造しかないよ!!
書き下ろした3話目だけいきなり事後スタートなのでR15くらいです 
本当にすみません

※コアルヒーの背中に水=like water off a duck's back(アヒルの背中に水をかけるようなもの、何の効果もない)


銀幕の波間で待ってる


「この間、タロが面白いって言ってた映画見たわよ」
「嬉しいです〜! ストーリー素敵でしたよね、ゼイユ先輩はどこが良かったですか?」
 待ちに待った放課後、やっと学園で過ごす大義名分ができる。部活と言っても、特に点呼を取ったり始まりの挨拶なんてリーグ部には存在しない。一度部室に訪れて、出席を取れば自由に活動をするだけ。その前に顔を合わせた部員同士で、ちょっとした会話をするなんて特に珍しいことではない。立ち上がる前、カキツバタの耳に二人の会話が入ってきたのも、よくあることだった。
 タロが数週間前から夢中になっている映画は、最近ポケウッドで公開された、多分どの地域の子供も一度は聞いたことのあるおとぎ話を現代風にリメイクした作品。
 夢の中で出会った男女、その後も何度も邂逅する。女性が現実世界で顔と名前しか知らない男性を探すも、男性は事故で意識不明の重体であった。夢と現実を行き来し、愛の力で彼を目覚めさせられるのか、というラブストーリーらしい。
 カキツバタには全く興味の持てないジャンルで、熱弁するタロに呆られたのもつい最近のことだ。男は黒いリザードンや、黒いレックウザが暴れまわったり、巨大化したサザンドラとオノノクスが死闘を繰り広げる、みたいなものに心躍る生き物だから仕方がない。
 ただ、今はこの話題が非常に気になっている。絶賛片思い中の女子、ゼイユがどんなロマンチックなシチュエーションがお好みなのかの一点で。ちなみに残念ながらゼイユとの仲は後輩以上友達未満なので、聞けても一生活用することのない可能性しか無いのが悲しい。
「やっぱり女優のアクションがカッコよかった! 生身でウルガモスとやり合うのとかね。夢の中でブルンゲルに引きずり込まれるシーン、ハラハラしたわね」
「あそこは見てるだけで息苦しくなりますよね〜」
 パニック映画の要素もあるのか、内容にほんの少しだけ興味が湧いてきた。
「もう駄目だ、ってところに彼が助けに来るのが、後のシーン含めて素敵で……
「わかる、でも人工呼吸がファーストキスなんてちょっと寂しくない?」
 やっと聞きたい内容に話が向いてきたかもしれない。引き続き、スマホの画面を見るフリを続ける。
「そうですかあ? ファーストキスが二回なんて、ちょっとロマンチックなのに」
「そう?」
「じゃあゼイユ先輩はどんなシチュエーションなら、ロマンチックなファーストキスになると思います?」
 タロのバトンタッチ、無意識とはいえさすがすぎる。続きの言葉が発っせられるのがいやに長く感じた。
「はぁ? うーん……普通がいい」
 普通。ブルベリの面白い女の双璧から、おおよそ出てくるとは思えない単語に内心動揺する。
……普通でいい? 意外、壁ドンとかじゃないんですか!?」
「壁ドン!? だってあたし背が高いし、相手によってはそんな簡単にキスとかされないから! 普通がいいの」
 そんな偉そうにいう言葉ではないが、ある重大な事実はわかった。相手として、ゼイユより背の低い男も想定されている、ということに。
……あんた人のことばっか聞いてるけど、自分はどうなの?」
 そろりと片目で様子を伺うと、男子部員たちが二人の会話に傾聴している。学園のアイドルの答えを聞き漏らすまいと、緊張感すら感じる。
「じゃあ、わたしも普通で」
「でたでた、性悪〜!」
 アイドルとして百点満点の答えを出したタロを、ゼイユがちゃかすと部室の空気がいつものように戻った。
「わたしそろそろ行きますね。面白そうなのがあったら、今度は一緒に観ましょう!」
「はーい、またね」
 有益なことを聞けた気がするけれど、そもそも関係が変わらないと意味もない。変える勇気もない自分に呆れるが、嘆く前に目の前の楽しい部活をしなければ。
 愛しい椅子から立ち上がると、ちょうど出ていくゼイユと目が合う。後輩以上友達未満でも普通に目くらいは合う、そして長いまつ毛に囲まれたゴールドの眼はよりつり上がって、あっという間に逸らされるのが常。
 のはずなのに、今日だけいつもと違っていた。カキツバタをじぃと見つめたまま、ふわりと笑うと数秒かけて逸らして、ドアの向こうへと消えていく。
 普通ってなんだろうと、思う前に足が追っていた。