ろころころ
2025-06-17 00:12:12
6054文字
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リグテレオンの事件簿 その1





「で?なんでインテリ野郎と焼き鳥二本足がここにいるのだ?」
「いや、それはこっちの台詞なんですけど

電気が壊れているのか、室内は相変わらず薄暗いままだ。窓から入り込む日差しが唯一の光源だった。
リグ達の前に"ボス"として姿を表したのは、一匹のピカチュウ。もっと言うなら、エオス島にて数々の試合で尻拭いではなく共に戦い抜いてきたピカチュウ、通称「ピカ様」だった。

「はぁ全く何してくれるんですかまだ身体がビリビリしますよ!私はアリルさんの電撃以外は受け付けない体質なんです!ここはエオスじゃありませんからタイプ相性だってあるんですよ?もっと考えてください」
「さすがだぞ!タイプの相性をバッチリ理解しているんだな!」
「黙らっしゃい」

ピカ様の横に気まずそうに座るのは、先程の男達二人。

「いやぁその、ボス。これにはエリアゼロよりも深い理由があるんですよ
「はぁ?なんなのだ?」
「とぼけないでいただけます?貴方達が誘拐したイーブイを返していただきますよ。私はタイプ相性不利とはいえ、こっちには勝率4週連続で一位の彼がいますので」
「こんにちは!シャモくんだぞ!」
「はぁ?お前ら、いきなりなんなのだ!?」

ピカ様は立ち上がると、パチンと電気をつける。どうやら壊れていたわけじゃないらしい。

「ピカ様はアニメを撮ろうとしてただけなのだ!誘拐なんて知らないのだ!濡れ衣なのだ!」
「はぁ?アニメ?」
「そうなのだ!ピカ様が主人公で、そこの二人はピカ様の相棒とその仲間なのだ!」

ピカ様は床に正座する男二人を指さした。

「えっと俺、マサラタウンのサトルです
「俺は頭だけ固い岩の男、タケルだ」
「ん?」
「はぁそうですか

ピカ様はバンバンと机を叩く。オンボロな建物はそれだけで軋む音がした。

「とにかく!ピカ様は誘拐の話なんぞ知らないのだ!そいつらに命令してたのは、エキストラを雇って来いってことだけなのだ!」
「エキストラ?えっと、そのアニメとか言うやつのですか?」
「アニメとか言うやつじゃなくてアニメなのだ!ピカ様はアニメを放送して有名になって、あいつに迎えに来てもらうのだ!その為のエキストラを雇って来いってそいつらにお金も渡してたのだ!」

男二人サトルとタカシは目を逸らす。

「ああ、なるほど。理解できました。つまりですね」

誘拐に関してはピカ様の命令ではなく男達の独断であると。ピカ様が渡していた現金をエーフィに貸し、返却させて自身のものにするつもりだった……

「という訳です」
「なっ!?つまりエキストラ達はみんな同意の上で来たわけじゃないってことなのだ?」
「大方そうでしょうね。どうりで証拠が丸見えだと思いましたよ手馴れてる人は本物のナンバーを見せびらかしたまま、だなんてアホなことしませんから」
「俺の事見て逃げたりもしないもんな!」
「それは誰でも逃げると思いますね」
「ふ、ふざけるななのだ!お前達がやってるのは犯罪なのだ!!!」

ピカ様は案の定怒り出す。理不尽イエローと呼ばれる彼でも、流石に犯罪を自ら進んでやるようなポケ格の持ち主では無かったらしい。仮に犯罪者だったら合法的にねらいうちを撃ち込めたのにとリグは残念に思った。

「だ、だってボスのやり方じゃあエキストラなんて誰も雇えないっスよ!?誰がこんなアニメのエキストラなんてやりたがるんスか!?」
「そうだ!撮影が終わったら連れてきたポケモンは返すつもりだったし何より俺達なりに考えたやり方なんだ!俺達みたいな悪党を拾ってくれた、ボスの力になりたかったんだよ!」
「お、お前達………!」

彼らは完全に二人と一匹の世界に入ってしまったようで、こちらの存在など見向きもしなかった。


「うーわ、なんですかねあの茶番。試合後にキオンさんに褒められるザシアンさんよりも面白くないです」
「お腹すいたぞー」


結局、エキストラとして攫われてきたイーブイの少女は親元に返し、サトルとタカシが謝罪をしたことでことは丸く収まったのだった。