たかせ
2025-06-16 10:57:39
6427文字
Public ロウリン小話
 

海賊衣装小話まとめ


海賊衣装発表時にテンション上がって書いた小話3本

ページ1・・・面影(着替え中のロウとリンウェルの会話。漫画の元になった話)
ページ2・・・なってよねとは言ったけど(絵から派生。ネヴィーラ雪原に宝探しに来た話)
ページ3・・・熱源(外套着てるなら一度は、と思って書いた話)

ロウリンというかロウ+リンウェルというか両片思い一歩手前……?くらいの感じです

■面影




「ロウー、もう準備できた?入ってもいい?」


扉越しに聞こえてきたリンウェルの声に、ロウはおう、と軽く返事を返した。
「いいぜ。だいたい終わってるし」
「だいたい?」
ロウの曖昧な答えに一抹の不安を覚えたリンウェルは、思わずきゅっと眉根を寄せる。だが早く手の中の物をロウに見せたくて、本人がいいって言ったんだし、と結論づけて「じゃあ入るね」と一声かけて扉を開けた。

「ねえこれ見て!フクロウの王様が入ってたの!」
今日のために用意された衣装の中にあったその愛らしい小物を手に、リンウェルはロウが着替えをしている部屋の中に足を踏み入れる。



一番最初に目に留まったのは、椅子の背もたれに無造作にかけてある見慣れた藤色のマントだった。そのそばには同じ藤色をした帽子と、グローブも置かれたまま。なるほど、確かにすべての準備が終わったわけではなさそうだ。
次いで視線を上げれば、リンウェルに背を向けるようにしてロウが立っていた。どうも腰の布を巻いているらしい。リンウェルも綺麗に巻くのには結構時間がかかったから、苦労は分からないでもない。
「なあ、お前これどうやった?何かうまくいかねえんだけど」
だが、その声に応える前に、リンウェルの足はその場でぴたりと止まってしまった。


マントを身に着けていないロウの背中。
その後ろ姿に強烈な既視感を覚える。


――よくやったな、リンウェル。


次の瞬間、やさしくて落ち着いた声が脳裏によみがえった。
駆けていく背中、たくましい腕。あたたかい野菜スープ。頭を撫でてくれた大きな手。

同時に込み上げてきた感情は、リンウェルが自覚する前にぽろりと目から零れ落ちていた。



「お、おい、どうした!?」
振り返りざまぎょっとして駆け寄ってきたロウを、リンウェルは食い入るように見つめた。ぽろり、とまた一滴涙が零れる。
リンウェルは涙をぬぐうことも忘れて、まじまじとロウを見上げた。
……あんた、それ――
震える声でそれだけを口にしたリンウェルが言わんとしたことは伝わったらしい。ロウははっとして立ち止まった後、ああ、と小さく頷いた。
「親父のやつにそっくりだよな」
ぽつりと呟いて視線を落としたロウが身につけている衣装は、リンウェルの記憶の中のジルファが身につけていたシャツと同じ形のものだった。

少しくすんだ紺色の襟に、楔のような金具――ロウは視線でそれらをなぞった後、何とも言えない表情で続けた。
「誰かが気を利かせてくれたんじゃねえかな……俺が着るのも変な感じだけど」
……そう?」
「だって、いろいろ足りてないだろ」
背丈とか筋肉とかさ、と今度は少し悔しさを滲ませて呟くロウ。

でもきっと、それだけじゃないのだろうな、とリンウェルは思った。『いろいろ』に込められた本心はロウにしかわからない。
でも、一つだけ言えるとしたら。

「私はそんなことないと思うけど」
「え?」
目尻に残った涙をぬぐって、リンウェルは口元を緩めた。


「だって、ロウ以上に似合う人なんていないでしょ」