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eclipsis
5456文字
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ローロビ
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染み込む薄荷
短編三つ。付き合ってたり付き合ってなかったりな二人
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【発掘する話】
――
乾いた土地、味気ない色合いだ。ここでは時間さえも埋もれてしまうだろう。視線の先に居る黒髪の女が、その埋もれたものをせっせと発掘している。おれは木陰に座り女を、ロビンを見つめていた。
太陽が真上から大地を照らしている。そのせいで荒涼とした風景がより一層無彩のコントラストを表していた。ロビンはつば広の帽子を被り、瞬きの少ない瞳は手元と地面しか見ていない。一種の風景画のようだ。単に木陰へ座るおれと日向のロビンで、こうも世界が違ってくるものだろうか。しかし、それによっておれは何ものにも囚われずに、ロビンをひたすら見つめることが出来ている。ほんの数十歩先の距離間でも、別世界の人には配慮など要らないだろうから。
ロビンはノミやハケの発掘道具を使い分けて作業をしている。両手は手袋に覆われていた。白地の布は差ほど汚れていない。ロビンの手さばきが慎重だからだ。けれど熱心に動いている。そよ風で消えるような砂でさえもゆっくりと取り払う。そうやって土の中で眠る見えない何かを型どっているようだ。あるいは、埋もれて出られない何かを優しく救い出しているのかもしれない。
どちらにしても、ロビンは熱心だ。おれからは土塊にしか見えないものへ懸命に手を差し伸べる。手袋をした手が動いている。傷つけないように、と着けただろうそれよりもロビンの素手の方が余程良い気がする。厚みのない掌と白く長い指。どんなものでも傷にはならず触れることが出来るはず
――
「
……
熱心ね。でも見てるだけじゃつまらないんじゃない? あなたもこの作業、してみたくない?」
無意識に連続していた考えがスッと途絶えた。ロビンの問いかける声が難なくおれへ届いたのだ。しかし当人は手元へ注ぐ視線を外していない。未だに別世界から帰らないくせに、おれがその"熱心"に見つめていることはお見通しなのか。
「いいや、お前を見つめてるのが良い」
こちらを見もしないロビンにお返しをしてやる。煙に巻くような含みのある言葉には、真正面から入り込むやり方が効果的だ。その証拠にロビンはまんまと引っかかった。驚いたような表情をしてこちらへ顔を向けた。あんまり意外だったのか、切れ長の目を丸くさせている。
「
……
そのままおしりに根っこが生えちゃうかも」
ロビンは驚いた顔をすぐに止めると眉を少し下げて喋った。おれがずっと木陰で寛いでいると、揶揄する口調は照れ隠しに聞こえる。随分と親しみを持った問いかけだ、別世界ではない。おれはロビンの言葉通り動かなくなる自分を薄ら想像した。
傍の木陰が枯れ去り、自分の体が自然に地面へと倒れる。そのまま土塊になったおれは深く深く、地底の中で眠る。
「そうなったら、私が掘り出してあげましょうか」
一瞬の夢想をするおれに、近くなったロビンの声がした。肩に重みをふと感じた。白い手が咲いていて、おれの耳を悪戯っぽく引っ張っている。夢想の名残がまだあるのか、この手を長い間待っていたと強く思えた。
「
……
おれだけ土の中か。埋まるならお前も一緒に埋まれ」
耳を触るロビンの手をおれの手で掴み取り、そのまま顔へ近づけて頬擦りをした。白い手にはおれよりも低めの体温があった。白い手は夢でも幻でもない。そんなものにさせる気なんてない。おれは自ら名残を消して、ただの願望をぶつけた。
また、ふとした感覚を覚える。目の前に花びらがチラつき手に取っていたロビンの手が消えた。音もなく消え去ったので、本体である発掘作業をしているロビンの方を見た。
ロビンはこちらを見ていない。少し前と全く同じ風景画になって、手元を熱心に掘り出している。けれど、そこには今までと違う色彩がひとつあった。ロビンの耳がほんのり赤くなっていた。赤という色味が加わるだけで『熱心』というのが『頑なに』という風に見えてくる。
ロビンが今、頑なに掘り出しているものは何だろう。
それはきっと、二人分の何かの筈だ。おれの願望ではなく、叶った現実のことだ。
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