呪里
2025-06-04 19:17:40
3658文字
Public Code_Abyss 本編
 

episode:3 第一幕 〈久しぶりに一緒に〉


 「……ちゃん。お姉ちゃん」

 誰かに体をらされている。

 「お姉ちゃん、朝だよー。起きてー?」

 「ん゛んー………

 ゆっくりとまぶたを開けると、目の前には可愛らしい少女がまっすぐこちらを見ていた。

 クリーム色のふわふわした髪をツインテールにし、前髪には小さな猫のヘアピンが付いている。

 こちら……呪里が起きた事をが分かると、ぱぁっと花のような笑顔になった。

 「おはよう、お姉ちゃん!」

 「うんおはよう、れん

 呪里を起こしたのは双子の妹、憐。

 呪里とは対称的に、常に明るいムードメーカー的存在。

 文武両道ぶんぶりょうどうで学校内での人気が高く、うわさではファンクラブまであるとかないとか。

 「今日は一緒に朝ごはん食べようよー?」

 憐は掛け布団をペシペシと叩いて呪里に問いかける。

 「……いいよ。着替えるから先に下に降りてて」

 「!はーーーい!」

 呪里から了承を得ると、憐は軽い足取りで部屋から出ていった。

 (………可愛い)

 朝からとてもいいものが見れたなと思いながら、呪里はベッドから起き上がり着替えはじめた。





 一階に降りリビングに入ると、テーブルの上には既に料理が並べられていた。

 「お待たせ」

 「あ、お姉ちゃん!ちょうどお姉ちゃんのご飯よそったから、先に座ってて〜」

 制服の上からエプロンを着用、更には杓文字しゃもじ片手に持っている憐が答えた。

 (憐……外ではその格好極力しないでね。変な奴が近寄らないか、お姉ちゃん心配)

 一部の人には喜ばれそうなシュチュエーションだなと良くない考えが頭をよぎり、呪里はブンブンと首を横に振った。

 席に座ると、先程までほのかに香っていた朝食のいい匂いがただよってきた。

 メインのおかずは目玉焼き。
 そばには薄切りのハムが二枚とウインナーが一本。

 そして、おかずの皿の隣にはクリームスープがえられていた。

 「今日は随分ずいぶん豪華だね」

 「でしょー?今日は朝早く起きれたからいっぱい用意しちゃった!」

 はいどうぞとご飯をよそっていた憐が茶碗をテーブルに置いた。

 「ありがとう、憐」

 「えへへ。さっ、食べよ?お姉ちゃん」

 二人は各々両手を合わせる。

 「「いただきます」」


















――――――――――――――――――――
 「ねぇ、お姉ちゃん」

 「ん?なぁに?」

 硬めの黄身の目玉焼きを食べていると、前の席に座っていた憐が話しかけてきた。

 「今日ってさ、吠舞羅ほむらちゃんと飛華あすかちゃんが日本に戻って来る日だよね?」

 吠舞羅と飛華は、呪里達魔島姉妹とは十年以上の付き合いがある旧友である。

 普段は同じ県で別々の組織にぞくしているが、月に一度は必ず集まって近況報告や茶会を開いたりする程、特に呪里は二人と仲がいい。

 「うん。そうだよ」

 「そっかぁー、何時頃帰ってくるのかなぁ?」

 二人は海外に三ヶ月程出張していて、今日が日本に戻ってくる日なのだという。

 「うーーん二人共飛行機の時間は言ってなかったけど、夜に〈泡沫の夢〉で会う約束はしてるよ」

 「ええー!!いいなぁ〜。憐も行きたいー!!!」

 憐は右手ではしをぎゅっと握りながら、両手をジタバタと動かして主張をする。

 が、しかし

 「連れて行ってあげたいのは山々だけど、流石に学生をバーには行かせられないよ」

 「ぶぅー………

 憐はプクーっとほほを膨らませた。

 「お姉ちゃんズルい……

 「そんなにむくれないで。後で会った時に、次は憐とも会えるように日程調整してもらうから。ね?」

 「ほんと!?」

 「ほんとほんと。ちゃんと頼んでおくから、憐はさっさとご飯食べちゃいな?そろそろ狂ちゃんが迎えに来る時間なんじゃないの?」

 「へっ?」

 壁掛け時計に目をやると、時刻は七時25分を少し過ぎたあたりだった。

 「わっ。いっけない!カバンに課題とかまだ入れてない!」

 ご馳走様!と急いで食事を終えた憐は、駆け足で階段を上がっていった。