呪里
2025-05-18 23:13:29
6879文字
Public Code_Abyss 小話
 

〈君と秘密の約束を〉

呪里と荊が休日に買い物に出かけた時の小話


 「ボース〜。迎えに来たで〜」

 自宅のインターホンが鳴った。

 「はぁーい。すぐ行くー」

 「お姉ちゃん。私でるね」

 「ありがとーれん

 呪里は少し寝坊をしてしまい、急いで着替えている最中だった。

 こういう時に限って髪のハネが普段以上にぴょんぴょんとなってしまう。

 「チッ」

 誰も聞いていないからいいやと舌打ちを零す。

 「いっそはねてるの全部切るか?」

 引き出しからハサミを取り出そうと動こうとした瞬間

 「こぉーら、それはアカンよ」

 いつの間に家に入ってきたのだろうか。

 呪里は荊に後ろから優しく抱きしめられた。

 「荊」

 「そんな簡単に大事な髪切ったらもったいないて。女性にとって髪は命?なんやろ?」

 「個人的には邪魔にならなきゃなんだっていいんだけどね」

 「そうかぁ?」

 荊はそっと腕を離し、右手で呪里の髪をサラリと触った。

 「俺は、ボスのこの綺麗な髪、好きなんやけどなぁ。こうやって触るのが気に入っとるのに」

 「じゃあやめる」

 呪里は荊の手に自分の手を乗せ、撫でろと言わんばかりに自身の頭の上に乗せ、左右に動かした。

 すると

 「お姉ちゃーん!いばらさーん!お外行かないのー?」

 下の階にいる憐の声が聞こえた。

 「ほな、そろそろ行こか。今日は車で来たんや。外に停めてあるから」

 「そうだねぇ。時間が勿体もったいないし行こうか」

 二人は一階に降りた。

 「行ってくるね、憐。お土産買ってくるから」

 「はぁーい!行ってらっしゃいお姉ちゃん!」

 呪里が玄関のドアを開け外に出る。

 続いて荊が出ようとすると

 「いばらさん」

 憐に呼び止められた。

 「ん?なんや、おひいさん」

 憐は荊に近づくと

 「安全運転でお願いしますね。それと、分かってるとは思いますが怪我一つさせないでくださいね?お姉ちゃんになにかあったら私、荊さんになにするか分からないので」

 ギリギリ聞き取れるくらいの声量でそう伝えた。

 荊は一瞬驚いたが、流石に後半あたりは冗談だろうと思い憐の顔を見る。

 表情はニコニコしているが、目は笑っていなかった。

 「大丈夫やでおひいさん。この命にかえても安全に送り迎えするからなぁ」

 荊がそう伝えると、憐は満足したのかリビングに戻って行った。

 (おぉ怖い怖い。流石ボスの妹さんや、おっかないのぉ)

 少しばかり背筋に寒気を感じながら、車に乗り込むために荊は外に出た。








――――――――――――――――――――

 数十分後、訪れたのは大型商業施設。

 駐車場に車を停めると、荊は隣の助手席で眠っている呪里の身体を揺すった。

 「ボース?着いたでー」

 「ん゛ん〜………?」

 小さく唸り声をあげながら、呪里はゆっくりと目を開けた。

 「……もう着いたの?はやいねぇ……

 「まぁボスの家からだとそんなにかからんしな」

 「そっかぁ。てか、また寝ちゃったんだ、私」

 「車動かして十分も経たんうちにぐっすりやったで」

 荊は呪里の頭を撫でながらクスクスと笑った。

 「んぁーだって揺られてると眠くなるんだもんなぁ。こればっかりは避けられない」

 「別にええんやない?俺としては、特等席でボスの寝顔見れるから大満足なんやけど」

 「あんま茶化ちゃかさないで」

 頬を膨らませながら、呪里は車を降りた。

 「あーごめんて。あんま怒らんといて」

 「別に怒ってはない。早く行かないと荊の買いたい物買う時間無くなっちゃうよ」

 「そうやな、行こか」

 
――――――――――――――――――――
 施設に入ると、二人はジャンルを問わず様々なお店に入った。

 荊は行く先行く先で生活必需品やトレーニング用品・消耗品等をこれでもかと買い漁っていた。

 「随分沢山買うんだね」
 
 「せっかくの休みやからな〜。いつ何があるかあるか分からんし、出来るだけ買いだめしておきたいねん」

 「そっか」

 そう言う荊の両手にはもう抱えきれない程の荷物がぶら下がっている。

 「でもなぁ、あと一つ買い足りないものがあんねん」

 「何買うの?」

 呪里が問いかけると、荊は薄ら微笑んで答えた。

 「今日買い物に付き合ぉてくれたボスに、なんでも一つ買ぉたるんや」

 「え?私?」

 呪里は目を丸くした。

 「いいよ別に、私はただついてきただけだし」

 「いやいや、そう言わんといてや。たまの二人きりなんやし、どうしてもなにか買ってあげたいんよ。な?」

 荊は少し首を傾げながら呪里を説得する。

 「ふーん。じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 呪里はフッと笑って答えた。

 すると荊の表情はぱぁっと明るくなり、右腕でグッとガッツポーズをとった。

 「よっしゃ。そうと決まればこの荷物さっさと車に持ってこか」

 「うん」