呪里
2025-05-18 23:13:29
6879文字
Public Code_Abyss 小話
 

〈君と秘密の約束を〉

呪里と荊が休日に買い物に出かけた時の小話

 「あ、ボス!お帰りですか?」

 「お疲れ様です、ボス!お気をつけて!」

 「うん、お疲れ様〜。みんなも遅くならないうちに帰るんだよー」

 「「はーーい!」」

 すれ違う構成員達と軽い会話を交わしながら、ゼロは一人帰り支度をしていた。

 (さぁてと、明日はどうしようかなぁ。本部来る程の用事もないし、家でただゴロゴロ過ごすだけってのもなぁ……

 本部に来る際に背負っていたリュックを手に取り、荷物の整理をしながら明日の事を考える。

 片付けも一通り済み、廊下へ出ようとドアを開けると

 「うおっとっと、ギリギリセーフ」

 ちょうど部屋のドアにノックをしようとしていた荊の胸に飛び込んでしまった。

 「うおっ。荊かぁ、危なかったぁ」

 「ごめんなぁボス。まさかこんなに近くにいるとは思わんかったわ」
 
 荊は右手をゼロの頭の上に乗せてよしよしと撫でた。

 「もう帰るんか?」

 「うん。もうやる事やったし」

 「そうかぁ。今日もお疲れさん」

 パッとゼロの頭から手を離す。

 「そうや、ボス。一つ聞きたいんやけど、明日ってボスは非番で合ってたよな?」

 「………?うん。そうだよ」

 「なんか予定とかって入っとるんか?」

 「いいや?なんにもすることが無くて暇してるって感じ」

 ゼロがそう答えると、荊はなにか言いたげに両耳をペタンと下げた。

 「なぁ。ボスさえ良かったらなんやけど、明日のお休み、俺に付き合うてくれへん?」

 「え?荊に?」

 ゼロは思わず首を傾げた。

 「明日俺も非番なんやけどな、たまには息抜きでぱーっと買い物に行こうと思てん。やけど一人で行くのも味気ないから、一緒に来てくれへんかなぁって

 「行く」

 荊が言い終わる前に、ゼロは食い気味に答えた。

 「えっホンマにええの?」

 「うん。さっきも言ったけど暇だし、最近荊といる時間が少ない気がしてたからちょうどいいよ」

 すると荊の表情はぱぁっと明るくなり、尻尾が上向きになり左右にブンブンと動いているのが見えた。

 (可愛い……)

 ゼロが自分の尻尾を見ているのを察したのか、荊は少し頬を赤らめて両手を後ろにまわし、必死に動きを止めようとした。

 「あ、あんま見んといて

 「えー。減るもんじゃないからいいじゃん」

 「俺のメンタルが減るねんて。と、とりあえず明日の集合場所とかは後で連絡するわ。俺はまだやる事があんねん」

 「そう?分かった。あんまり遅くならないようにね」

 「勿論や。明日のために本気で終わらせるわ。ボスも気ぃつけて帰るんやで」

 「あーい」

 荊と軽く別れの言葉を交わし、ゼロは帰路についた。

 帰り道、ゼロは明日の事を考えワクワクしていた。

 (珍しいな、荊からのお誘いなんて。何買うんだろ)

 Abyssの金銭面全般きんせんめんぜんぱんを任されており、普段から人一倍お金の事に厳しい男がパーッと買い物をするなんて、何を購入するのか気になってしょうがない。

 ゼロは期待を胸に膨らませ、軽い足取りで家に向かった。