呪里
2025-05-01 23:05:25
4341文字
Public Code_Abyss 本編
 

episode:2 第三幕 〈掟〉



 〈掟〉

 構成員の自由と個性を尊重するAbyssには、三つの掟が存在する。

 一 命を奪うことなかれ

 二 他種族を見下すことなかれ

 三 ボスの名の下、不平等なかれ

 この掟は、Abyssを立ち上げた際にゼロと幹部合わせた五人で決めたものである。

 構成員達は仮所属し、柩の下で研修を受ける際、一番最初に掟を教わる。

 ドーラとラディーは、この内の二番目を破ってしまったのだ。

 「ボボス……申し訳っ」

 ラディーが謝罪をしようと口を開いた次の瞬間、ゼロが二人を勢いよく抱きしめた。

 「うえっと……ボス?」

 「苦しいですボス」

 二人の声は聞こえていないかのように、ゼロは抱きしめる腕に力を込めた。

 「ねぇドーラ、ラディー。聞いてくれる?」

 ゼロは二人の間に顔をうずめたまま問いかけた。

 「私ね、少しでも差別とかが減ってほしいって思ってるんだ。全部は流石に不可能だろうから、せめて、私を信じてそばにいてくれる子達は、差別や悪い格差なく平等でいてほしいの」

 訓練場にいた者達は皆、黙ってゼロの話を聞いている。

 「難しいお願いをしてるってことは、私も十分理解してる。個人の相性だったり、私達の知らない昔からの因縁だったり、色々あると思う。でもね」

 ゼロは顔を上げて、二人をじっと見た。

 「ここではそんな事に縛られなくていい。ただ一つ分かってほしいのことは、ドーラ、もラディーも、他の子達も、皆、私にとってとても大切な子達だってこと。構成員は誰一人としては置いていかない。大好きだよ」

 抱きしめていた腕を話し、手錠を解くと、ポンと二人の頭に手を乗せた。

 「無理に仲良くしろとは言わないよ。けど、あまりこうやって周りを巻き込むような喧嘩は極力控えてほしいな。お願い」

 ゼロが二人の頭を撫でると、ポロポロと涙がこぼれていた。

 「グスごめんなさい、ボス」

 「もうこんなことしません

 「うん。そうしてくれると嬉しいよ」

 ゼロが再び抱きしめると、二人は糸が切れたかのようにわんわんと泣き出した。




 「一件落着、でいいのか?これは」

 「いいんじゃない?あの子達も反省してるみたいだし、ねぇ類?」

 『………!』

 少し離れた場所から、朧達は一部始終を静かに見守っていた。

 「一時はどうなるかと思ったが、流石はボス。丸く収めてくれたな」

 朧が一人うんうんと頷いていると、

 「ねぇ、三人とも来て」

 ゼロから呼ばれた三人は、急いで駆け寄った。

 「はい、なんでしょうか」

 ゼロは幹部三人と、先程まで撫でていた二人を交互に見て言った。

 「この子達、今度から朧の下で正式に働かせることにする」

 ドーラとラディーは目を丸くした。

 「……え?」

 「えっとそれって……

 「ふふっ、良かったわね二人とも。今この時をもって正式採用よ」

 柩に告げられてようやく状況を理解したのか、二人は互いに抱きしめ合って喜んだ。

 「俺の所で良かったんですか?元々二人は別々の所に配属予定でしたのに」

 「まぁ、そうなんだけどね。今日のやりとり見てて気が変わった。それに、ああいうしごきがいのある子達、嫌いじゃないでしょ?」

 「……そうですね。鍛えがいがありそうで、今から楽しみです」

 二人が不敵な笑みを浮かべていることに気付くことなく、ドーラとラディーは先程まで争っていたことが嘘の様に喜びを分かちあっていた。
































 その後、仮所属だった者達に採用通知が入った。

 今回採用されたのは計五名。

 ゼロはデスクの上に置かれた五名の履歴書を眺めながら、笑みを零した。

 「………この子達がどんな景色を見せてくれるのか、楽しみだな」

 episode:2 Fin
 NEXT episode▷▶▷to be continued………