呪里
2025-05-01 23:05:25
4341文字
Public Code_Abyss 本編
 

episode:2 第三幕 〈掟〉


 五分後、朧は柩と、怪我人が増えることを想定し、類を連れて訓練場に足を踏み入れた。

 「ボス!お待たせいたしまし……

 言い終わる前に、訓練場の中の惨状さんじょうに朧は思わず息を飲んだ。

 「…………遅かったね」

 部屋に入ってきた三人に気付いたゼロに声をかけられた。

 ゼロの足元には、ボロボロの状態のドーラとラディーが倒れている。

 「申し訳ありません。訓練場に残っている者の治療をせねばと考え、救護室にいた類を呼びに行っていた為遅れてしまいました」

 「そうだったんだ。気が利くね」

 『救護室に来た子達はあらかた治したから、こっちをお手伝いしに来たよ』

 類はここにいるよとアピールするかのように、片手をブンブンと振って言った。

 「助かるよ、類。それじゃあ早速だけど〈コレ〉、最低限の傷治してやって」

 ゼロは自身の下にいる二人を指さした。

 『えっ……と、全部治療しなくていいの?』

 「喋れるようにしてくれればなんでもいいよ。それより、壁際の子達を全員治療してくれた方がありがたいかな」

 そう言って、ゼロはすみに避難している構成員達を指さした。

 『う、うん。分かった。すぐに治すね』

 類は駆け足でゼロの傍に近づき、スっとドーラとラディーの目の前にしゃがみ込んだ。

 『大丈夫だよー。痛くない、痛くない。すぐに動けるようになるからね』

 倒れている二人の頭に片手をポンと乗せ、類は目を閉じ、両手に力を込める。

 すると、類の手が淡い黄緑色に光だし、ドーラとラディーを包んでいった。

 二人の傷はみるみるうちに消えていき

 「「うう……」」

 うめき声をあげながら、二人はゆっくりと目を開けた。

 『ボスごめんね。調整が難しくて結局全部治しちゃった』

 「いいよ全然。こっちも変なお願いしちゃったね」



















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 数分後、ドーラとラディーは訓練場の中心で正座をさせられていた。

 それぞれの両手には、ゼロが魔法で作り出した手錠がかけられていて、互いに攻撃が出来ないようになっていた。

 「で?どうしてこんなになっちゃう程の大喧嘩をしちゃったの?」

 二人の前で仁王立ちをした柩が腕を組みながら問いかけた。

 「…………

 「…………

 二人は声を押し殺して黙っている。

 「おい、黙ってるだけじゃ分からねぇだろ」

 少し離れた場所で朧が睨みつけた。

 「こんだけ大暴れしたんだ。それはそれは俺達全員が納得できる理由なんだろうなぁ?」

 「………朧。怒りたいのは私も同じ。けど、今あの子達を叱るのは柩の役目だよ」

 穴の空いた壁を修繕中のゼロにさとされると、朧はシュンとした顔になり黙ってしまった。

 「今はこっち手伝ってくれた方が嬉しいな。ねぇ、あそこ。上の穴直したいから肩車して」

 「………はい、ボス。喜んで」

 〈肩車して〉という言葉で怒りの感情は消えてしまったようで、朧は満面の笑みでゼロを抱える姿勢になった。

 「んもう羨ましいわね。じゃなくて、さっさと答えなさい?じゃないともう一回ボスからの鉄槌てっついくだるかもしれないわよ?」

 幼子に語りかけるような優しい口調で、柩は再びドーラとラディーに問いかけた。

 二人は互いに目配せをしているかのように見える。